第13話 感性
図画工作。
***
高学年の図工を担当するのは今年で32歳になる
授業が始まり、深山が説明を始めた。
「今日は
「みんなは何作る?」(達也)
「野球ボール」(
「サッカーボール」(
「それ丸めるだけじゃん!」
「ダンボール」(
「
「てか達也は何作るんだよ」(豪太)
「聞いて驚け……ドラゴンだ!」
「・・・・・・」
あまりにもぶっ飛んだ発想でみんなが
「それ時間内に完成するの?」
「させる!」
「頑張って」
「おい、なんだその顔! 絶対無理だって思ってるだろ?」
「うん」
「まぁ見とけって! てかクマちゃんは何作るの?」
「タンブルウィード」
「……何それ?」
「
「あーあれね。なんで名前知ってんの?」
「テレビでやってた」
「へぇ……てかお前も丸めるだけじゃねーか!」
「馬鹿言うな、あれにはロマンが……」
「もういいわ!(笑)」
*
ふざけるのをやめて作り始めてから20分が経った。
「よし、俺もうできた」(豪太)
「俺もー」(大輝)
「え? お前ら本当に丸めて終わりじゃん」(達也)
「「残り時間は細かい修正だな」」
「海誠は?」
「あと少しで完成する」
「ふーん、てかそれUFOだろ? もしかして前に見たって言ってたやつ?」
「そう。まぁほとんど想像だけどね」
「あれだけ恥ずかしそうにしてたのに」
「ドラゴンよりはマシだろ」
「
拓真は「ムズすぎる……」と
「……ガチじゃん」
「そういう達也はどうなんだよ?」(豪太)
「とりあえず体はどうにかなった。あとは顔と手足をどうするかって感じ」
「ふーん、まぁ頑張って」
「マジで見とけよ!」
*
残り時間は1分。ほぼみんな完成して作品を見せ合っていたが、拓真と達也はギリギリまで
「俺のサッカーボールすごくね?」
「いや、俺の野球ボールのほうが上だな」
「2人は丸めただけだろ。見ろよこのUFO。圧倒的存在感!」
「——頭を付けて……完成!!」
「——よし……」
「おっ、2人とも間に合ったな」(大輝)
「見ろこのドラゴン! やばくね!?」
「「「どれどれ……」」」
深山が終了の合図をしたのと同時に、拓真を除く3人は達也のドラゴンを見て
「す、すげー!!」
「完成度エグ」
「達也にこんな才能があったなんて……」
「俺だってやる時はやるんだよ! クマちゃんも見ろよ!」
拓真は
「……天才かよ」
「どうも天才でーす」
「うるさ(笑)」
「クマちゃんのはどう?」
「
「……いや、これゾウのうんこじゃん!www」
「やべー、マジだwww」
「あの時間何やってたんだよwww」
「腹痛いwww」
4人に笑われた拓真は、下を向いて「ふっ」と鼻で笑ってから呟いた。
「俺の感性は君たちに伝わらなかったようだな」
「なにカッコつけてんだよ!」(豪太)
「誰がどう見てもゾウのうんこ」(大輝)
「ロマンばっか追い続けてるからだよ! 現実見ようぜ、クマちゃん」
「ロマン追って何が悪いんだよ。ロマンがなきゃつまらないだろ?」
「……急にかっこいいな」
「だろ?」
*
数日後、深山が特に芸術性を感じた作品を図工室のガラスケースに
飾られた作品を見た拓真以外の4人はとても驚いたが、拓真だけは納得していた。
その作品は武装した猫。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます