オマセな間瀬拓真は言いました

平葉与雨

プロローグ

第1話 転校

「おはよー。とりあえずみんな席に着けー」


 担任の名は島田しまだきよし。ちょっとおじさんっぽい喋り方だが24歳の若手だ。見た目に特徴があまりなく、本人もそれを自覚してか、キャラ作りで喋り方を模索もさくしているとクラス内でうわさになっている。


「もう耳に入ってるかもしれんが、我ら5年3組に新たな仲間がくわわるぞー。じゃあ入ってきてー」


 ガラガラガラ……タッタッタ……


「どうm」

「彼は間瀬ませ拓真たくまくん。出身は埼玉なんだけど親父おやじさんの仕事の都合で色々なところに転校してやっと埼玉に戻れたんだと。じゃあ自己紹介を頼む」

「間瀬拓真です。よろしくお願いします」

「……あっ、終わり? 何か他にないのか?」

「数秒前に先生に言われました」

「おぉ、すまんすまん(笑) 初めての転校生で嬉しくてついな」

「はあ」

「まぁいいじゃないか。これからよろしくな! みんなも仲良くするように!」


 体型は平均的で周りと大差なく、顔は整ってはいるものの、まだ子どもらしさが残っている。しかし、彼の言動にはどこか大人びた雰囲気がただよっており、見た目とのギャップがなんともにくめない不思議な小学5年生。それが間瀬拓真である。


 少しドタバタした感じだったが、朝の会はいつも通り行われ、何事もなかったように終わった。1時間目の授業が始まるまで10分ほどあったので、隣の席の山崎が拓真に話しかけた。


「俺は山崎やまざき達也たつや。名前はやだけど崎の字の右上は立たないから、そこんとこよろしく!」


達也はクラス内でひょうきん者と言われているが、意外にイケメンとも言われている。勉強は中の中レベル。球技全般が得意でサッカーが一番好きである。


「一周回ったら面白いな。よろしく」

「え? 一周回りながら言ったほうが面白いってこと?」

「いや、違うけど……まぁそれはそれで面白いかも」

「今度やってみるわ。てかなんて呼べばいい?」

「なんでも」

「じゃあ拓真だからクマちゃんな!」

「小学生ってすぐあだ名つけるよな」

「お前も小学生だろ! まぁいいや。お前も俺のことタッツーって呼んでいいぞ」

遠慮えんりょしとく」

「おーい。まぁいいか。いきなりだけどなんか俺に聞きたいことない?」

「それは達也に関して? それともこの学校とかクラスに関して?」

「もちろん俺」

「ない」

「おい! なんかあるだろー。何歳? とか、趣味は? とかさー」

「合コンかって」

「例えばの話だろー」

「それに趣味はまだしも、何歳はないだろ。同じ学年なんだから」

「あっ、そっか。てかクマちゃんって本当に小5? さっきからすごい落ち着いた感じだし、うそついてない?」

「・・・・・・」

「えっ、何その。まさか本当に……」

「いや黙ったら面白そうだなと思って」

「びびったー。まぁアニメじゃあるまいしそんなわけないよなー」

「・・・・・・」

「おいやめろって」

冗談じょうだんだよ(笑)」

「本当かよ。マジであやしいなー」

「ミステリアスボーイと呼んでくれ」

「いや急に小学生かよwww」

「小5だからな」

「なんかクマちゃんって面白いな!」

「達也もな」


 転校初日で友達ができた拓真。雰囲気が大人びていて見た目からは判断できないが、少しは安心しているかもしれない。

 これから始まるのは、そんな小学5年生の間瀬拓真が思ったことをズバズバ(?)言っていく、そんなお話。

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