第27話 澪桜の誕生日

 付き合ってから初めてのトラブルに多少ギクシャクしたものの、無事仲直りをした悠と澪桜はその後もいつも通り甘々な日常を送っていた。

 なんならトラブルの前よりも仲が良くなったかもしれない。


 そして、今日は待ちに待った澪桜の誕生日。

 今日は土曜日でもちろん一日休みなので、澪桜と過ごすつもりだ。

 澪桜も今日は家族との集まりを別日にして悠と過ごすとのこと。

 しかし外はあいにくの雨だった。


「せっかく澪桜の誕生日なのに雨か…」

「私はどんな天気でも悠くんと一緒に過ごせれば嬉しいですよ?まったりお家デートも良いと思います♪」


 今日は大人しく家で澪桜と過ごすことにする。


「夕ご飯はレストランの予約があるから、それまではゆっくりしようか」


 悠はプレゼントとは別に少しお高いレストランを予約していたのであった。


「えっ!レストランですか?嬉しいですっ。楽しみにしていますね?」


 澪桜は嬉しそうに笑う。

 こんなに喜んでくれるなら計画した甲斐があるものだ。


「昼間は悠くんにくっ付いていることにします。いつまでくっ付いていられるかゲームです♪」


 そんなことを言う澪桜はいつしか猫耳を買った時に一緒に買った、おもちゃにしてはしっかりした手錠をクローゼットから取り出す。


「こ、これは…?」


 悠は澪桜が突然取り出した手錠を見て固まる。


「べ、べつに変な趣味に目覚めちゃったとかじゃないのでそんな目で見ないで下さいっ!」


 澪桜は焦りながらも悠の考えていることを否定する。


「何か面白いかな〜と思って買ってみただけです。はい、悠くん片手を出して下さい?」


 澪桜はすこぶる笑顔で悠に手を出すよう催促する。


「まぁおもちゃだしいいんだが…」


 そう言った悠は右手を差し出すと澪桜は悠の右手と自分の左手に手錠をかける。


「これならお互い利き手じゃない方の手なので大丈夫ですね♪」

「澪桜…なんだか嬉しそうだな?」

「はいっ!これでずっと悠くんにくっ付いていられるので♡」


 まぁ澪桜が楽しいならそれでいいんだけどな。


 それにしてもこんなに可愛い子と手錠で繋がれている状況は何だかイケナイことをしている気分になる。


「悠くん。今日はずっと私から離れてはいけませんからね?」

「分かったよ。でもトイレとかどうするんだ?」


 澪桜はその言葉を聞いてびくっと悠の方を見る。


「忘れてました…お手洗いの時も…私恥ずかしいです…」

「いや、そこは外せば良いんじゃないか?」

「それじゃあゲームにならないじゃないですかぁ」


 澪桜はいつもよりもテンションが高かった。

 きっと誕生日ということとずっと悠と一緒に居れることがよほど嬉しいのだろう。


「早速悠くん。お洗濯しましょう?」


 二人のゲームが始まった。


「悠くん洗濯機が止まったので洗濯物を干しますよ?今日は雨なのでお部屋の中に干しますから、カゴはリビングに持っていきましょう」


 二人は協力しながら片手を器用に使い、洗濯物を取り出すとカゴの中に入れていく。

 悠は左手でカゴを持ってリビングへと運ぶ。


「よし。それじゃあ干して行こうか」


 二人はカゴの中に入った洗濯物を干していく—が、片手しか使えないのは予想以上に難しかった。


「悠くん、私が洗濯物を待つので洗濯バサミを開けて下さい」


 こうして普段ならすぐに終わる洗濯干しに小一時間かけていく。


「澪桜…その、この下着はどうやって干せばいいかな…?」

「あうぅ…なんだかまじまじ見られると恥ずかしいですね…でもおしゃれな下着で良かったです」


 澪桜は悠に見られても恥ずかしくないおしゃれな下着だったので安心していた。

 普段洗濯をすることがない悠は照れながらも澪桜のブラや下着を干すという任務を遂行させていく。

 澪桜にバレないようにちらちらと下着を見ていたことは内緒にしておきたい。


「もぉ…悠くん?私の下着をチラチラ見てますよね?これ、好みですか?」


 顔を赤くした澪桜は恥ずかしそうに悠を見る。


「い、いや…好みというか…。はい、好みです…」


 悠は正直に白状する。


「ふふっ。悠くん正直でえらいですね♡

次もこう言う物を買うようにしますね?」


 悠は辱めを受けていたのであった。

 しかしこの恥ずかしさに耐えれば今後澪桜は自分好みの下着を着てくれるのだ。

 耐える価値はあると自分に言い聞かせる。


「結構大変でしたが、無事洗濯は終わりましたね。お昼までソファーでまったりしましょう」


 二人はリビングのソファーに座ると澪桜は悠の肩にコテっと頭を乗せる。

 悠からは澪桜の小さな頭が見える。

 そしてとてもいい匂いがする。


「澪桜って俺と同じ…というか俺が澪桜と同じシャンプー使ってるのに俺と違って凄く良い匂いするよな」

「そ、そうですか?でも私は悠くんの匂いが凄く好きですっ。とても落ち着きます…」

「俺って匂いする?臭くないかな…」

「とんでもないです!とっても良い匂いがしますよ?石鹸のような…お日様のような…」


 自分では分からないが、澪桜にとっては好きな匂いらしい。


「まあ、澪桜が好きと言ってくれるなら良いんだけどな」

「はい。きっと相性がいいんだと思います。遺伝子的に相性が良いと、良い匂いに感じるみたいですよ?」


 俺たちは性格や身体だけでなく、遺伝子的にも相性が良いらしい。

 そう思うだけで無性に嬉しくなる。


「遺伝子的にかぁ…俺たちの子どもって絶対に可愛いよな」


 ふと悠は言葉を漏らす。


「えっ…こ、子どもですか?ま、まあ悠くんに似たらとても可愛い子が産まれて来ると思いますけど…」


 澪桜は照れながらも悠に言う。


「何言うんだよ。そんなの澪桜に似た方が可愛いに決まってるだろ?こんなに可愛いんだから澪桜に似た女の子が産まれたらそれはもう…」

「悠くん…恥ずかしいです…でも、それを言うなら悠くんに似た男の子なら絶対かっこいいと思います」


 二人は押し問答を繰り返していた。

 結論、将来は女の子と男の子一人ずつ子どもが欲しいということになった。


「悠くんとの赤ちゃん…私、考えただけで幸せです…。悠くん?いつか私に赤ちゃん授けて下さいね♡」


 澪桜は照れながら上目遣いで悠を見つめる。


「澪桜…そんな可愛く赤ちゃん授けてなんて反則だろ…」

「ご、ごめんなさいっ…私、ついそんなこと言っちゃって…でもいつか悠くんとの赤ちゃん欲しいですから♡」


 悠は今すぐにでも澪桜を押し倒したかったが耐えた。

 これは夜のお楽しみだ。

 大丈夫かな?俺耐えすぎて血の涙出てなかった?


「俺もいつか澪桜に可愛い赤ちゃん産んで欲しいよ。でも今は俺だけの澪桜でいて欲しい…かな」


「悠くん…。もお〜どうしてそんな可愛いこと言うんですか…好き。大好きです…悠くん♡」


 澪桜は悠の正面に来て、悠の膝の上に対面になるように座る。

 そして悠を抱きしめながら何度もキスをする。


「あん…手錠が無かったらもっと悠くんを堪能出来るのですが…」


 澪桜は自ら始めたゲームだというのにそんなことを言っていた——


 

 ゲームを初めてしばらく経った。

 二人は夜のレストランの為にお昼は簡単に済ませてその後は再びソファーに座り、テレビで映画を見たりしながら過ごしていた。


 すると隣で澪桜がそわそわし出した。

 太ももを擦り合わせてもじもじとしている。


「澪桜?…もしかしてトイレ行きたい?」


 悠は最初に話していた懸念事項が現実になったことを悟った。


「じ、じつは…はい。」


 澪桜は恥ずかしそうに顔を赤くしながら頷く。


「じゃあ一回手錠外しなよ?手遅れになるぞ…?」

「そ、そうですね…さすがに悠くんの前でお漏らしはもう私生きていけません…」


 そう言うと澪桜は手錠が入っていた袋の中を見ていたところ、無言で視線を上げて悠の顔を見る。


「ん?どうした?早く鍵を——」

「ないですっ!か、鍵がないんです…」

「マジで…?」


 澪桜はどんどん顔が青くなっていく。

 そして焦り始める。


「ゆ、悠くん…私、そろそろ限界かもしれません…」

「ま、待て澪桜!まだ諦めるな!もう仕方ないからトイレに行こう」

「うぅ…悠くんの前でそ、その…おしっこするなんて…恥ずかしくて死んじゃいますよぉ」


 澪桜は涙目で悠の顔を見る。

 悠は背に腹は変えられないと澪桜をお姫様抱っこしてトイレまで運ぶ。


「あうぅ…こんな形で初めてのお姫様抱っこをされるなんて…」

「え…そこなのか…?」


 手錠の形状的に扉越しにトイレに入ることも出来ない。

 悠は澪桜と一緒にトイレに入る。


「澪桜。目瞑っているから…もう諦めろ…」

「うう…恥ずかしいです…で、でも私…もう限界…」


 悠は目を閉じていたが、澪桜がスカートと下着を下ろす時の布が擦れた音にドキッとしてしまう。


「悠くん。絶対に目を閉じてて下さいね!?見ないでくださいね?出来れば耳も…」

「片手でどうやって耳を押さえるんだ…」


 澪桜は羞恥心で何が何だか分からなくなっているのだろう。


「も、もうだめぇ…悠くん…聞かないでぇ〜」


 澪桜は火を吹くのではないかと思うくらい顔を赤くして絶叫する。

 その後、水を打つ音が聞こえる。

 何秒経っただろうか…水を打つ音はしばらく聞こえた。


「うう…もう私お嫁にいけません…悠くんにおしっこしているところ見られちゃいました…」

 

 澪桜は啜り泣く。


「澪桜。大丈夫だ。見てない。それに俺はどんな澪桜を見ても受け入れるし嫌いになんかならないぞ?だからそんな泣かないでくれ」

「今は悠くんの優しさが辛いですぅ…」


 その後、しばらく落ち込んでいた澪桜であったがソファーで悠に励まされたことにより何とか持ち直していた。


「それよりも早いとこ鍵をどうにかしないとな」

「確かに買った時は袋の中に鍵があったのですが…」


 二人はもう一度クローゼットの中を探していた所で何か金属の様な物が落ちているのを見つける。


「あ、ありましたっ!」

「下に落ちてたのか」


 二人はようやく鍵を発見し手錠を解錠する。


「袋を取り出すときに落ちたんだろう」

「もぉ〜迂闊でした。まさかこんなことになるなんて思いませんでしたよぉ…」

「まあ…結構楽しかったぞ?澪桜の可愛いところも見られて…さ」


 悠は先ほどのお小水事件を思い出して澪桜をからかう。


「もぉ〜。悠くん…言わないでくださいっ。そして忘れて下さい…」


 澪桜は悠の胸をぽかぽかと叩く。


 こんな日もいいもんだなと思う悠であった。



 時刻は午後6時を回った。

 二人はは午後7時に予約したレストランに向かうため準備していた。


「悠くん。今日はどんなレストランに行くのですか?」

「イタリアンレストランなんだけど…後は着いてからのお楽しみで」


 悠は澪桜を乗せて車を走らせる。

 車内での澪桜は終始ご機嫌だった。

 しばらくして悠は高層ビルの立体駐車場に車を停める。


「ここにレストランがあるんですか?」

「うん。このビルの15階が今回のレストランがある場所だよ」

「な、何だか緊張して来ました…」


 悠は澪桜をエスコートしてエレベーターに乗り、上の階へと登って行く。

 目的の15階へ上がると目の前がレストランの入り口となっている。

 二人してお店に入ると店内は豪華なシャンデリアが輝き、落ち着いたクラシックが流れていた。

 全席が窓ガラス寄りに配置され、どの席からも夜景が一望出来るようになっている。


「素敵…」


 澪桜はその光景に目を奪われていた。

 悠はウェイターに予約していた旨を伝えると、席へ案内される。


 ウェイターが椅子を引き、着席を促すと澪桜は驚きながらも軽くお辞儀をして椅子に座る。

 メニューの催促などは無かった。

 すでにコースを予約しているのだろう。


 二人にシャンパンが注がれると、ウェイターは丁寧にお辞儀をして席を離れる。


「ゆ、悠くん。こんなに素敵なお店は初めてです。何てお礼を言ったら良いか…」

「今日は俺たちが付き合って初めての澪桜の誕生日だし、俺にとって一年で一番大切な日なんだ。だからそんな畏まらないで楽しんでよ」


 澪桜は感動に震えながら窓から見える夜景を見回す。

 いつの間にか雨は止んでおり、煌めく街の夜景が澪桜の誕生日を祝っているかのようであった。


「本当に綺麗です…」


 澪桜の大きな瞳が夜景の光を写し出してゆらゆらと揺れている。


「喜んで貰えたのなら良かった。それじゃあ澪桜、誕生日おめでとう。乾杯」


 シャンパンが入ったグラスを澪桜に近づける。


「悠くん…本当にありがとうございます」


 カラン♪


 二人はグラスを鳴らし、ディナーが始まった。


 今夜はコース料理ということで、前菜から順にとても出来栄えのよい料理が運ばれてくる。

 味も申し分なく、悠は高級店に相応しいと思った。

 そんな料理に舌鼓を打っている澪桜は終始幸せそうである。


「はぅ〜。このお料理本当に美味しいです〜」


 俺的には澪桜の料理の方が美味しいと思うが、普段料理を作る側の澪桜がここまでの料理を振る舞われることはほとんどないのだし、やはり格別なのだろう。

 本当に喜んでくれているようだ。


「これはどんな風に味付けしているのでしょうか…でも、これはもう素材が高級品で…」


 澪桜はただ味合うだけでなく、これらの味を再現するにはどうしたら良いのかと考察していた。


 これ以上、料理スキルをレベルアップさせるつもりなのだろうか。

 本当に澪桜の作る料理しか食べられなくなるから…


 コース料理も終わりに差し掛かる。

 澪桜は料理が終わってしまうことをもったいないと思いながらも最後の料理を食べ終わる。


「私、こんなに素敵な誕生日を過ごしたのは生まれて初めてです…悠くん、本当にありがとうございました。私幸せです」

「こちらこそ。こんなに喜んでくれて嬉しいよ。こうやって彼女の誕生日を祝うのは初めてだから上手く行ったようで良かった」


 二人が顔を合わせて笑い合っていると、ウェイターが食器を下げにやってくる。

 悠は目配せをすると、ウェイターは小さく笑い戻っていった。


 少ししたところで、澪桜の元に誕生日ケーキが運ばれて来る。

 プレートに乗ったゲーキは芸術的な見栄えで「愛する澪桜へ。誕生日おめでとう」の文字がチョコレートであしらってあった。


 サプライズで運ばれて来たケーキに澪桜は驚き、目を丸くしていた。

 ウェイターはおめでとうございます。ごゆっくりどうぞ。と言い残して先を離れる。


「もお…悠くんはどれだけ私を喜ばせれば気が済むのですか…」


 澪桜の目には涙が浮かんでいる。


「澪桜…産まれて来てくれてありがとう。これからもずっと一緒にいて下さい」


 悠は柔らかい笑顔で澪桜を見つめる。


「はい…もちろんです。私はいつだってあなたと一緒にいますから…」


 澪桜は涙を流しながら悠に笑いかける。


 こうして、誕生日のディナーは大成功に終わったのであった。



 レストランでの食事が終わり、二人は自宅へと戻ってきた。

 悠は部屋まで着くと、車に忘れ物をしたといい一度駐車場まで歩く。

 そしてプレゼントをカバンに入れて再度部屋まで戻った。

 澪桜はリビングで今日食べた料理の写真を見返しながら思い出に耽っていた。


「澪桜。俺からのプレゼントだよ」


 悠はそう言うと、カバンから先日デパートで買ったプレゼントを取り出す。

 そして玄関に置いたラッピングされた調理器具も持って来て澪桜に渡す。


「え?プレゼントってあのディナーじゃなかったんですか…?」

「もちろんあれもプレゼントだよ?でもそれだけな訳ないだろ?ちゃんと買っておいたから受け取ってくれるかな」


 悠は三つのプレゼントを澪桜に渡した。


「こんなに沢山…開けてもいいですか?」

「もちろん。喜んでくれると嬉しいんだか…俺あまりセンスがないからさ」


 悠は自嘲気味に笑うとプレゼントを開けるように催促する。

 澪桜は大きめの箱から開けることにしたらしい。

 ラッピングを丁寧に開けると、まず出て来たのはティ◯ールの調理器具。


「わぁ!これ欲しかったんです!悠くんありがとうございます。取っ手が取れてこんなにコンパクトに片付けられるなんて…。これでお料理がもっと楽しくなりますっ」


 澪桜は子どもの様に目をキラキラさせていた。

 次に開けたのは紙袋に入った方。

 澪桜が中身を取り出すと、ペアのパジャマが入っていた。

 触り心地が最高で暖かいと人気な物だった。


「悠くんっ。私ペアが好きと言ったのを覚えていてくれたのですね!しかも可愛いです〜。これから寒くなる時期にぴったりですね。是非、明日から一緒に来ましょうね♪」


 悠の読みはドンピシャだったようだ。

 ペアのパジャマは澪桜の中では最高の贈り物だったのだろう。

 悠も一安心した。


 最後に開けたのは悠が選んだネックレス。

 小さな手提げの紙袋にはブランド名が書いてあるのでどんな物かは大体察しがつくだろう。


「…あの、悠くん。これはとても高かったのではないでしょうか…?」


 澪桜は遠慮気味に悠に尋ねる。


「んー。まあそんな言う程では無かったよ。それに俺はこの日の為にお金貯めてたのもあるし、毎回買ってあげられる訳じゃないから遠慮なしで受け取って欲しいな」


「はい…。でも、私の誕生日でとても沢山お金を使わせてしまいました…。さっきのディナーだってとても高かったと思いますし…」


 澪桜はやはりこんなにお金をかけて貰ったことが申し訳ないのだろう。


「付き合って初めての誕生日だからさ。今回くらいはかっこつけさせて欲しいというか。今年は特別と言うことで」


「もお…悠くんはいつもずるいです…そんなこと言われたら私何も言えないではないですか。では遠慮なく頂きますね」


 そして澪桜は最後のプレゼントを開ける。

 中にはハートをあしらったネックレスが輝いていた。


「わぁ…とても可愛いですっ!」

「これならどんな服装でも似合うだろうと思ってさ。それに澪桜はネックレス持ってなかったから」


 澪桜はしばらく手に乗せたネックレスを眺めていた。


「澪桜…改めて誕生日おめでとう。こんな素敵な彼女を祝うことが出来て俺は本当に幸せ者だよ。いつも俺を支えてくれて、尽くしてくれて澪桜と出会ってから俺の人生は大きく変わった。本当にありがとう…愛してる」


 悠は真剣な表情で日々の感謝を伝える。

 澪桜はそんな悠の言葉を聞きながらもう涙が止まらなくなっていた。

 そして澪桜は悠に抱きつく。


「悠くん…こんなに素敵な誕生日をありがとうございます。私も悠くんと出会って人生が変わりました。こんなに好きな人が出来るなんて思いもしませんでした。いつも優しくて頼りになってかっこよくて…」


 澪桜は涙を流しながら悠への想いを溢す。


「私…あなたに本気で恋しています。悠くん…愛してる。これからもずっと一緒にいてください…」


 悠は澪桜の言葉が終わると同時にキスをした。

 いつもよりももっと甘いキス。

 澪桜も悠を受け入れる。


「悠くんとのキス…蕩けちゃいます…どうしましょう。私悠くんがいないと駄目になっちゃいました」

「それでいいよ。だって俺はとっくに澪桜がいないと駄目な身体になってるから…」

「もぉ…好き♡」

「俺も好きだよ…」



 こうして二人は甘過ぎる夜を過ごしたのであった。

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