第16話 澪桜の秘め事(※軽度の性描写あり)

 このお話は、澪桜が悠を仕事に送り出してから悠の家で一日を過ごすある木曜日の出来事。

 普段より性描写が多めなので、苦手な方は飛ばして頂ければと思います。

 飛ばしてもストーリーには影響がないように書いています。


*   *   *   *   *   *


 澪桜の平日の朝は早い。

 朝6時前には悠と一緒に起きてから朝食と悠のお昼のお弁当を作る。

 お弁当のおかずは、時間がかかるものは前の日の夕食を作る時に一緒に下拵えしておく。

 悠になるべく美味しく食べてもらえるよう努力は惜しまない。


 7時頃に行ってらっしゃいのキスをして悠を送り出す。

 その後は、家の中の掃除、洗濯をしてから少し休憩をする。

 テレビを見たり、スマホでコスメや服を見たりしてまったり過ごす。

 その洗濯をしようとしたとき、ある事件が起こったのだ。


 澪桜は洗濯物を洗濯機に入れようと洗濯カゴを手に取るとふと中に悠が昨日着ていたワイシャツが目に入った。

 澪桜は誰も居るはずのない部屋をキョロキョロと見回す。

 そして澪桜は、ごくりと喉を鳴らしながらある欲求に駆られた。


「これ…昨日悠くんが着てたワイシャツ…きっと悠くんの匂いが…」


 澪桜はそんなことを考えていると、無意識に悠のワイシャツを手に持っていた。


「一回、一回だけ…。ちょっとだけ…」


 一人でそんなことを言いながら澪桜は悠のワイシャツを抱きしめる。

 クシャクシャになるワイシャツを気に留めることもなく、澪桜はワイシャツに顔を埋める。


「すぅぅぅ〜。はぁ〜〜。ゆ、悠くんの匂い…すごい濃いよぉ…」


 澪桜は、一度だけと呟いたことも忘れて無我夢中で悠のワイシャツ越しに深呼吸する。


「はぅ〜。悠くんに抱きしめられてるみたいだよぉ…♡」


 澪桜の顔は蕩け切っていた。

 色白の顔は火照りで赤く上気し、目はとろんとしている。

 下腹部がムズムズしてきて、程良い肉付きの白い太ももを無意識に擦り合わせながらモジモジしていた。

 

「ま、まだこんな時間だし、少しくらい…大丈夫よね…?」


 そんな時、澪桜はもう一つ見つけてしまった。

 悠が履いていた黒い布切れを。


「さ、さすがにこれはダメよ私…。こんなの変態じゃない…」


 発する言葉とは裏腹に震える手は、悠のそれに向かっていた。

 そして、その布地の物を手に取る。

 先程まで悠のワイシャツですーはーしていた澪桜は考える。


「これに手を出したらもう…ワイシャツだけじゃ…」


 こんなことをしようとしている自分が恥ずかしくなり、その物を洗濯カゴに戻そうとするも手から離れない。


「悠くんにこんなことしてるのがバレたら…私もう恥ずかしくて顔見れないよぉ…」


 真っ赤な顔を左右に振りながら思い止まろうとする澪桜。

 しかし、ここまで登りつめた高ぶりを抑えることは出来なかった。


「はぁはぁ…。今度こそ…一回だけ…」


 そう自分に言い聞かせながら、澪桜は手に持った黒い布に顔を近づけていく。

 そして、悠の布切れとゼロ距離になる。


「すぅぅ〜。はぁ〜〜。はぅぅ…悠くんの匂い〜とっても濃くて…もうダメかもぉ…」


 澪桜は身体を振るわせながら深呼吸を繰り返す。

 我慢の限界を超えた澪桜はあらぬことか、寝巻きのもこもこパジャマを上も下も脱ぎ捨てた。

 そして、悠のワイシャツを着てから布切れを手に持ったまま寝室のベッドに向かう。


 ベッドに入った澪桜は、ワイシャツの襟と手に持ったそれを顔に近づける。


「ゆぅくん…ゆぅくん〜」


 澪桜は悠の匂いに頭がクラクラしてくる。

 悠に抱きしめられている錯覚に陥り、自らの身体を抱きしめながら、もう片方の手でそれを顔に手繰り寄せる。


「はぁ…はぁ…。すぅぅ〜〜。はぁ〜。ゆうきゅん…」


 身体をくねらせながら澪桜は手を下の方に動かす。

 そこはすでに大洪水。

 澪桜の履いた黒いそれは、洪水により大惨事に。

 その浸水したものを脱ぎ捨て、澪桜はもう止まらないと、無我夢中になる。


「あんっ…。ゆうくん…だめぇ」


 澪桜はもう何も考えられない。


「ゆうきゅん…もっとぉ…」


 澪桜は次第に頂上へ近づいていく。


「やっ…。んんんんっ〜〜〜」


 澪桜は全身の力が抜ける。


「はぁ…はぁ…はぁ。私…変態さんだよぉ…」


 頂上まで登り切った澪桜は涙目になりながらもその余韻と罪悪感に包まれていた。


「こんなこと…絶対悠くんには言えない…」


 冷静になった澪桜は、急に恥ずかしくなる。

 そして、ベッドに落ちる悠の布切れを手に取り、脱衣場に戻ろうとする。


「あ、後一回だけ…」


 その後、澪桜は二回目の登頂に挑み、あっさりと登り切った。

 時間にして数十分の出来事。

 澪桜は脱衣場に戻り、悠のワイシャツと布切れをカゴに入れた。


 思い切り発散した後、洗濯機を回しながら澪桜は思う。


「昨日の夜もあんなに悠くんとしたのに…私って…えっちな子なのかしら…」


 26歳になり初めて覚えてしまったこの快楽は簡単に逃れることは出来なかった。


「で、でもやっぱり、悠くんとしたいなぁ…」


 今夜はもう少し積極的にいってみようと思う澪桜であった。

 

 その日の夜、澪桜は大きなミスを犯していることが発覚するが、見つけたのは澪桜ではなく悠だった。

 風呂に入り、澪桜が出るまでベッドでスマホをいじろうと寝室に向かった悠は、布団の下にクシャクシャになった黒い布切れを見つける。


「何だこれ…?」


 悠が手に取った布切れを広げると、それは澪桜が履いていたはずの浸水被害に遭った黒い布であった。

 そしてあろうことか、それには大洪水の痕跡がしっかり残っていた。


「これ…もしかして…澪桜の…」


 ごくっと生唾を飲み込み、悠はその布切れを顔に近づける。

 そして確信する。


「こ、これは…」


 その後、澪桜が風呂から出るまでの間に悠はその布切れを使って、登頂した。

 そして、痕跡を残すまいと洗濯カゴの奥の方にその布切れを突っ込んだ。


*   *   *   *   *   *


 後日、澪桜は洗濯カゴの衣類を洗濯機に移していると、先日、自ら汚してしまった布切れが目に入る。


「え?これ…確かベッドで脱いで…っ!?」


 澪桜はベッドで脱いだこの布切れがなぜここに入っているのか頭をフル回転させた。

 自分で入れた?いや、あの時からここに持って来た記憶はない。

 ということは…これは…

 嫌な予感が頭をよぎった。


「ゆ、悠くんにバレちゃったかも…」


 澪桜は泣きそうな顔をしながら自分の犯した致命的なミスを後悔した。


「わ、私…悠くんに嫌われちゃったかな…」


 そんなことを言ってももう遅いと、澪桜は泣きべそをかきながらその下着を恨めしそうに手に取る。

 すると、自分が汚した跡とは違う別の痕跡があった。


「えっ…?これって…」


 澪桜は恐る恐るその痕跡を確認する。


「も、もぉ…。悠くんたらぁ〜」


 澪桜は何が起こったのか理解した。

 顔を赤くしながら身体をくねらせ、恥ずかしそうに呟く。


「悠くん…。おあいこです…。ふふっ今夜もいっぱいおねだりしちゃいますっ♡」


 澪桜は自分だけがこのような行為に及んでいた訳ではなく、悠もまた同じことをしていたと知り、安心していた。

 

 その日、悠が仕事から帰ると、澪桜はいつもよりもベタベタしてきた。

 夜もいつもよりおねだりが多かったし、何かあったのかと考える悠であったが、答えは出ないし、その理由は悠が知る由もない。


 澪桜はお互い似た物同士だったのだと納得し、たまにならまた…と密かに考えているのであった。


♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


初めての番外編でしたが、正直この手の話は加減が分かりません。

この線引きって難しいですね…。

もっと攻めていいのか、これでもやり過ぎなのか…

難しいところではありますが、まぁこれくらいの加減で今後も時折り本編に挟んで行けたらと思って見たり見なかったり。

次は本編に戻ります。飲み会編です。

今回も読んでくださった方。ありがとうございました。

                

                 蒼い湖

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る