小喜利

エリー.ファー

小喜利

 このコンビニ、すぐ潰れるだろうな。何故、そう思った。


「臭い」

「すごく臭い」

「下水みたいな臭いがする」

「お父さんの脇みたいな臭いがする」

「とにかく臭う」

「臭い玉を陳列しているのではないかと思うほど臭い」

「ホットスナックに臭い玉が入っている」

「レジ打ちのアルバイト店員が臭い。店長はもっと臭い」

「店長は、店内が臭いことをこだわりにしている」

「お客さんが入店する際、臭いけど大丈夫ですか大丈夫ですね、というアナウンスが流れる」

「レジ横の死体のせいで、店内が臭い」

「雑誌売り場のあたりに臭いプロテインが撒かれている」

「店名が臭いイレブンだ」

「店名が臭いーソンだ」

「店名がファミリー臭いートだ」

「店名がミニ臭いストップ」

「店名がデイリー臭いザキだ」

「店名がサークル臭いサンクスだ」

「店名がナチュラル臭いだ」

「店名が臭いコーマートだ」

「入店時に聞こえる音が、臭い臭いー臭い臭い臭ーい、だ」

「店長の名前が臭い山田臭い太郎だ」

「会計時に、臭い、と言うと十割引きだ」

「近所で、臭いコンビニだと有名だ」

「世界規模で、臭いコンビニだと有名だ」

「宇宙規模で、臭いコンビニだと有名だ」

「臭い犬がよく入ってくる」

「臭い鹿がアルバイトをしている」

「おすすめ商品が、臭い麦茶だ」

「臭くないならコンビニじゃねぇだろ、と怒声が響いている」

「客が、コンビニの臭さ目当てで入っている。もちろん、嗅ぐことで満足してしまうので誰も買わない」

「どこよりも臭いコンビニというブランディングを行っている」

「レシートが臭い」

「おつりが臭い」

「ビニール袋が臭い」

「自動ドアが臭い」

「イートインスペースに臭すぎるイスがある」

「うち以上に臭いコンビニがあったら教えて下さいよ、がっはっはっ、が店長の口癖だ」

「店内で、臭い京平成大学の宣伝が流れている」

「臭いモツ煮が販売されているが、全く売れていない」


 臭い以外のこたえを出して頂いても構いませんよ。

 え、出したくない。

 臭いで統一したい。

 なるほど。

 だから、面白くないんじゃないですか。

 だから、あなたって芸人として売れないんじゃないんですかね。

 面白いことにこだわるんじゃなくて、ワードにこだわるから扱いににくいって言われるんですよ。

 そこのところ、分かってますか。

 分かってないでしょう。

 分かってないから、そういう言葉が出るわけですよ。

 まず、面白いことを言いましょう。

 その上でワードにこだわりましょう。

 実力がないのに、無意味に枷を足すのは無謀です。

 あなたも芸歴だけが積み重なった先輩を何人も見て来たはずです。

 その中の一人になってしまいますよ。

 いいんですか、そういう人生で。

 嫌でしょう。

 嫌だから、大喜利力を鍛えたいという話になったわけじゃないですか。

 あの会話が嘘だったということじゃないですよね。

 あぁ、良かった。

 あなたのことを嫌いになりそうでした。

 じゃあ、もう少し別の角度から考えてみましょうか。


「臭くないコンビニに魅力なんてないから」


 よく分かりました。

 喧嘩、売ってますよね。

 確かに臭いというワードから離れて欲しいと言いましたよ、でも、それは臭くないと言えばいいということではないんですよ。

 伝わって欲しいなぁ。

 じゃあ、最後にもう一回やりましょうか。

 このコンビニ、すぐ潰れるだろうな。何故、そう思った。

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小喜利 エリー.ファー @eri-far-

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