第25話:最悪だ

「あのアサシンと同じ、感知眼かんちがんを持ってるやつを連れてくれば良い。いくら結界魔法で隠す系と言っても、魔力はどう頑張っても隠せないからな。いくら魔眼持ちが少ないって言っても、世界中から探せば何とかなるだろうし。ただ、魔眼持ちは希少だし、戦力になるから、ちゃんとした発見は、戦争の後と少し遅くなった」


「へー、それでそれで?」


「で、この島を探し出しましたと。その後どうするかだけど、まぁ.....普通に魔法をぼかすか撃って、一部だけでも入れるようにする。その後は.....まぁ....普通に続々と入って、なんか色々するって感じ。んで、中に入ったやつが、あの村に人間っぽいけど、人間じゃない奴が居る事がわかったから、それを報告する」


(コイツ......こんな基礎の頭があって、察しが良いのに、なんで気が付かないんだ?)


「それで、村で色々してたら、あほ殺意がこもり過ぎてる奴に会っちまった。しかも、アイツは確実に人間を恨んでる。それで戦闘になって、大体はさようなら。だけど、生き残った奴が居たんだろうな。それで、ちゃんとした魔族がいることがバレた。」


 それで、ココからが重要だ。


「じゃあ、魔族が居ることを分かった王国はどうしたか。ココで使うのがサンダロスだ。アイツは、言っちゃあ悪いが、政治的にも使えず、性格もなんか頼りないし、ハッキリ言って、役立たずだ。おまけに後継者争いもある。使い捨てる三拍子がそろってる。コイツなら、使い捨てても何も問題がない。」


「倫理観っつぇ、ご存知でつか?」


「それで、コイツは、今までさっき言った三拍子のせいで、ろくな扱いを受けていなかったから、主人として辺境開拓できると聞いたら、受けるだろうな。当然。で、何で農民やらの、生産者が居ないかというと、“お察しの通り必要ないから”だな。侵略しに行くのに、一々生産職なんて必要ないし。あの使い捨て王族は、冒険者に、島内の洞窟やらなんやらへ、調査に行かせた。魔物がいそうな所を、あらかじめ調べておいたんだろうな。」


 実際、一応俺たちが担当したとこも、トップクラスの胸糞魔物のゴブリン系だったし。

 ただ、それ以上に恐ろしい裏?がある気がする。


「んで、魔物が居たか、どれくらいでどんな奴が居たかを冒険者から報告させる。その後は、んー.....そろそろ増援か何かが来るんじゃね?捨て王族がそれを島に来たそういう係に報告する。その後は、情報を知った奴が、国に戻って、改めて攻め込む人員について、会議する。こんな所じゃないか?少なくとも、共通の貨幣を使ってる訳だし、そう考えるのが自然だと思うし。」


「お〜、正解正解。そういえば、今の話だと、駆け落ちした奴がもう居ないみたいな口振りだけど、そこはどうなんだ?」


「あ〜まぁ普通にクスリだろ。薬物薬物。薬物にも種類あるし、身体壊すやつもあるだろ。医者も居ないだろうし。」


「なんか急にテキトウになったな?」


「久しぶりに戦闘以外で頭使ったからな。もうクタクタだ。」

(それに、流石にハーフとはいえ、7歳の頃からクスリ売ってるやつが居る事に、何か思う事があるかもしれないし、下手に言うのも微妙だな)


「......まぁ良いか。じゃあ最後に一つ。“何故王国は、王子の為に、豪邸を建てたんだ?”」


「哀れみだろ。シンプルに。」


「ん?」


「え?分からないか?だって、子供を作れないのが、始めから分かってた訳じゃない。生まれた時には、兄は子供の頃は弟に興味津々だし。それに年齢知らんけど、少なくとも20年位は一緒に生活してたんだ。罪悪感も少なからずあるだろ。多分。」


「あ〜、成程。」


(この無関心さ.....コイツもしや......まぁ良いか。どうでも。)

「そういえば、何で俺にこんな考えさせたんだ?」


「あっ、そういえば。理由は簡単に、そろそろ、攻め込んでくるかもしれないんだ。で、今のうちに同情誘って、コッチの仲間にしようと考えてな。」


「はぁ。まぁ、相手の戦力次第としか。」


「お、意外と乗り気?」


「そりゃあまぁ......色々と責任は感じざるを得ないからな.....」


 昔の事を後からほじくり返されるのは、最悪の気分だな。


「へー。因みにだが、お前が一番戦いたくない奴も来そうだぞ。」


「え?????.....一応誰か聞いておこう....」


 アイツは嫌だアイツは嫌だアイツは嫌だ.....


「欠ける月・例え消えて無くなれど・一月経てば・満月となる。このポエム、勿論知ってるよな?」


「......はぁ......」


「新月から満月の移り変わりの様に、例え一度落ちぶれても、一ヶ月経てば返り咲くっていう貴族の家訓だな。勇者アインの兄貴こと最強“レイド”。アイツが来るぞ。」



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