隣国のトワイライト
糸依 なれよ
プロローグ
神の信託を得た勇者が魔王を倒しに行った奇跡の伝説。
それは今や、この世界の誰もが知っている物語であり実際にあった歴史の一つです。
国で一番美しいお姫様も、誉を尊ぶ騎士も、恐れ知らずの勇敢な戦士も、千年生き続ける魔法使いも、平穏を望む村人も、
世界のために戦った「勇者」に強い憧れと恋心持ち、世界を一度は混沌に導いた「魔王」を恐れる者、敗北したことに嘲笑う者もいました。
人々は「魔王」が敗れ、「勇者」が守った世界で幸せに暮らしていました。
‥‥‥魔王の幹部の一人が”ある呪い”をかけるまでは、
そして世界に混沌が戻りました。
その”呪い”は誰にも解くことができませんでした。
呪いの存在は世界中の人々の耳に入りました。
国で一番美しいお姫様は、輝きを失い、老けてゆく。
誉を尊ぶ騎士は、狂気に支配され、酒に取り憑かれた。
恐れ知らずの勇敢な戦士も、呪いに恐怖し家に閉じこもってしまい。
千年生き続ける魔法使いは、自ら首を吊り。
平穏を望む村人は、「もう自分達しかいない」と奮い立ちました。
気づけば魔法も奇跡も無くなっていました。
みなさん、こう思うでしょう。
「勇者は?どうして助けてくれないの?」「また世界を救ってよ!」
「勇者」「勇者様」「勇者!」「英雄様」「助けて」「貴方様しかいません」
勇者は答えませんでした。
なぜなら、勇者は魔王と共に死んでしまっていたからです。
それは「相打ち」と呼べる選択でした。「自己犠牲」とも言える行動でした。
勇者と共に戦った者達がそう言いました。
人々は希望を失っていたことに気づくと、瞬く間に衰退して行きました。
そして、役立たずの魔法使い、占い師、聖女が村人達に殺される時代に差し掛かった頃‥‥
ある貧しい一家が産まれたばかりの子供を置いて壊れた聖堂に向かい、最高神に祈りました。
「神様。私たちの命を与えます。だからどうか、”呪い”を管理する力を今を生き続ける人々に与えてください」
すると、その一家はパタリと倒れました。皆んな死んでしまっていました。
それを見ていた修道女は家に残された赤ん坊の元へ急ぎました。
修道女は驚きます。なぜなら子供は生きていて、勇者と同じ神の加護が施された「トワイライトの紋章」があらわれていたからです。
その後修道女に育てられた子供は未来、「トワイライト」として”呪い”との共存を果たし、人々に平和とちょっとの不安を残して”呪い”から人々を守りながら努めて生きました。
その子供の一族は、現在「トワイライトの一族」として名を残しています。
そういえば、誰もが気になったでしょう。昔すべて恐怖の根元だった魔王の幹部の一人が残した”呪い”について、
ある幹部の”呪い”。それは善なる勇者にかけられたものでもなければ平凡な村人にかけられたものでもありません。
当時の魔王の腹心たちであり幹部九名。「災害九悪獣」にかけられたものだったのです。
ーある書庫の画本から抜粋ー
これを読んでいた子供は「つまんない」とこぼしながら手に持っていた書物を放り投げた。
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