また迷惑かけちゃったかな
まぁ何より今日は青葉や陸奥の誤解が解けて本当によかった。
「あの、またあたし余計なことしちゃったかな」
怜が俺の後ろでうしろめたさを感じたのか俺にちっちゃい声で問いかける。
「いやもういいよ。気にするなよ。お前が見たいんだろ?」
「なんかまたあたしわがまま言っちゃって」
「言ってから反省するなよ……そういうむちゃくちゃは今に始まったことじゃないから気にしてねえよ。ま、振られたらまたあそこで飛び込めばいい」
「ちょ、そ、それはだめだよ!」
焦った様子で怜は肩に触れる。いつもより神妙なのは感覚というかなんというか、雰囲気で伝わってきた。
「冗談だよ。まぁフラれたら怜、お前に責任取ってもらうからな」
責任を取るって基本は男側の言葉な気がするが気にせずにすこし斜に構えて俺は怜に言う。
「う、うん」
なぜかずっとしおらしくしていた。
幽霊に塩はちょっと天敵だから正しくないか、なんといっていいかわからないが俺はしょんぼりする怜のことがすこし心配だ。
まぁあんな言い合いをしたのだから仕方ないかもしれないが
「お前、なにか変だぞ? いつもヘラヘラ俺で遊んでたのに随分しおらしい」
「ヘラヘラなんてしてないよ! ニッコニコでしょ? だってさ、あたしなんか光に迷惑かけてばっかりな気がして……」
「最初からずっと迷惑かけられてるだろ、今更気にしないさ」
「えっ、そ、そう、だったっけ?」
キョトンとした顔でこちらを見つめる。ほんと呆れる。
作り笑いをして見せたと思えば呆けた顔、本当に見ていて飽きないくらいの忙しなさに幽霊とはいえ生命力に溢れているなと俺はしみじみ思う。
「気付かなかったのかよ。まぁいいや。別に迷惑ならいくらでもかけろよ。まったく、なーに気にしてんだか」
「う、ごめん……」
「っなんか調子狂うなぁ……そうだ! 買い食い、するか?」
もので釣ろうなんてなかなか浅ましいとは思ったけど、こいつは意外とこういうベタなのが結構好きだ。
ここんとこの付き合いで俺も幽霊のことをだいぶ理解できたかもしれない。
「そこにコンビニでさ、適当にアイスでも買って一緒に食って帰るか」
「う、うん!」
そう言うと怜の顔をすこし晴れたような気がした。
別に怜を気遣ってるわけじゃないって言ったら嘘になるけど、いつもうるさい奴が静かだとこっちまでテンション狂うしな。
「じゃ、ちょっと寄ってくか!」
「うん! 行ってみたい!」
「そんなテンション上げなくてもコンビニくらいは行ったことあるだろ」
「いやー今のコンビニがどれくらい進化してるか気になるよ」
そう言いながら駆け出していく怜を見て、いつもの調子に戻った気がした。
いつもどおりの笑顔と謎の知的好奇心、怜はこうでなくちゃな。
コンビニでアイスを買って帰る。怜も存在感を出してアイスを買った。
ちなみに歩き食べるなら棒のアイスだろと俺は言ったのだが彼女はカップアイスを食べると譲らなかった。
「うーんコンビニも進化してるんだねーもうレストランじゃん!」
高いバニラのカップアイス食べながらそうしみじみと怜は語り出す。
怜はコンビニに入るやいなやいきなり走り出しテンションが上がったせいかチルド家電アメニティなどの売り場で一回一回驚きの声をあげていた。
ただそんな姿も最近になって少し可愛らしく見えてくる。
「そうだな。びっくりだ」
「楽しみだなぁ。光はそしてカプコンで主役、物語の主人公になるんだね」
「当たって砕けた悲劇の主人公にな。ただでさえ俺は一度もう砕けてんだ、粉末になった遺骨はお前が拾えよ」
「うわ、またネガティブな……まぁいいよ。フラれたらね」
そうやって一人の人間のように接して話してはいるが、足元を見ると怜には影がない。
そこを見るとやはりこの子は幽霊だとまた改めて自覚させられる。
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