第10話

 しかし、着の身着のままで追放されたので、ドレスといういで立ちでヒールだしで、眠いしおなか減ったしで進まない。足は靴擦れで痛いし、道は整備されていないけもの道を歩いているからよけいに疲れが増した。


 地図を見るとまだまだ先だ。その地図をよく見てみると赤い点の他に黄色い点も表示されていた。黄色い点は木の実となっている。その黄色い点に触ると名前と効能、食べられるかの表示もあった。


「食べられる木の実!」


 急いでそこに向かうと洋ナシのようなものがいくつもっていた。もぎ取り一口頬張ると甘い果実が口の中に広がり、空腹だった体に染み渡った。

 少し休憩し洋ナシを3つ平らげた。洋ナシ似の果実の名前はロシという名前らしい。効能については魔力回復のポーションの材料になる、そのまま食べると体力回復となっていた。病は気から効果で少し体力が戻ったような気がした。


 数個持っていこうといだロシを麻袋に入れた。5個ほど入れた時に気が付いたが麻袋に変化がない。膨れもしないし、重くもならない。麻袋の中を確認すると空だ。黒のショールと魔石とコインしかない。

 なんでと思いつつ手を入れロシはどこだと麻袋を探るとロシが突如手に触れた。何度も試したが同じ現象が起こった。わかった、あれだ、収納魔法とかいうのだろうと結論を出した。そういえば王族のみが使用出来る時空カバンというものを所持していると城で聞いた事があったような気がする。


 なんで王族が持っているような物をあの兵士のおばあさんが持っているのだ。何者なんだよ~


 進みつつ新たな果実を見つけては持てるだけ持っていく。休憩しつつ果実を採取しつつ進んでいたら当たりは明るくなっていった。当初の計画よりはずいぶんと到着がズレてしまったが24時間以内にどうにかすればいいのだから問題ない。そして表示を見ると夜明け前には到着出来そうだった。


 当たりが明るくなり始めた頃、少し広めの広場に辿り着いた。あと少しの所で今にも寝てしまいそうではあったが安全を確保できるまでの我慢だ。気合いを入れ直しつつ最後の力をふり絞りながら歩みを進めた。

 一瞬なにかの膜に覆われた気がした。しかし当たりを見渡してもなんの変化もなかった。


 そして気が付くと大きな木が1本立っていた。



 あれ?さっきからこの木はあっただろうか?いきなり現れたような気がする。でもそんなわけがない。疲れていて気が付かなかっただけだろうとアリアナは思った。



『目的地に到着しました』とナビに表示された。


 やはり場所はここで間違いないらしい。しかし、そこにはアリアナが想像していたものはなかった。


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