世界が2つに分かれた日
風邪
世界が2つに分かれた日
1月1日
とある世界機関は7月1日を『正式に世界が二つに分かれた日』と発表し、発表した年の7月1日をもって世界は2つに分かれることになった。
全世界の人々は混乱した。
2つとはどのように2つに分けるのか、その世界機関は何者なのか。テレビのニュース番組ではその話題で持ちきりになった。チャンネルを変えても、スマホを開いても同じ様に「世界はどのように2つに分けるのか」 「社会への影響はあるのかないのか」というような見出しで世界中にこの話題が知れ渡り、この話題を知らないものはいなかった。
ある者は、このことを発表した世界機関の人間を殺そうと探した。
ある者は、「この世の終わりだ」と大言をいいながら命を絶った。
そして、またある者はこんなものはデマだと前と変わらない平穏な暮らしをしていた。
そして詳細が明らかになったのは、それから1ヶ月後の事だった。
2月1日
詳細が発表された。
【先月発表したように7月1日をもって世界は正式に2つに分かれる。しかし、世界中の人々が想像し苦しんでいるようなものではない。】
世界中が黙り込む。
【我々はこのままではこの星を乱暴に扱ってしまう。だからこの星を守るため、世界を2つに分けるのだ。】
世界機関の代表はそう言って、図を表示した。
その図はそれぞれの国がキレイなところで半分緑、半分が灰色になっていた。
「どういう事だ?」
とある国の1人が言う。
【簡単なことだ。それぞれの国の土地をキレイに半分に分け、片方を自然豊かな森に、もう片方を人間の住む大都市にしてしまえばいい。】
「でも、私達のような開発途上国にはそのようなお金はありません。」
【この計画のために使うのなら、いくらでも金は出す。金が無いからと言って、この星を守らない理由にはならない。他の国も同じだ。どのような大国であれ貿易国であれこの計画に従わないのであれば、この星に存在する意味など無い。】
そう言って2回目の発表は終わった。
3月1日
詳細が明らかになって、はたまた1ヶ月がたった。それぞれの国でも、計画が進んでいた。
まず、国土を真っすぐに分けるところから始まった。人手の少ない国や開発途上国には、世界機関から派遣された支援員が手伝いながら行った。国土面積の広い国などはそれなりの時間を有した。
つぎに、森になる区域に木や花を植えていった。できるだけ豊富な種類の植物を植え、さまざまな動物が暮らせるようにした。
一方、大都市の開発も始まっていた。
4月1日
とある中学校の入学式。
「今年度我が校にご入学された皆さん、おめでとうございます。」
世界がどうなろうと校長先生の長い話は変わらない。まだまだ続く。
「えー、皆さんもご存じの通り、今年7月1日をもって世界が2つに分かれます。
えー、そしてこの学校は森になる区域に含まれています。
そのため、皆さんが今いる学校は6月末をもって閉校します。」
眠気に襲われていた生徒、そしてその親が唖然とする。
「えー、そのため--」
大都市になる区域に元々住んでいた人々は、騒音被害に悩まされていた。
5月1日
徐々に計画が近づいていた頃、世界機関から発表の情報があった。
【それぞれの国が懸命に計画を進めてくれている。我々は感謝の気持ちでいっぱいだ。】
「発表とは何のことだ!」
【今から説明する。】
世界中が黙り込む。
【世界が2つに分かれた日まで、あと2ヶ月あまりある。そして、ほぼ完成に近づいた。しかし、例え完成しても我々は素直に喜べない。】
「何故だ!ここまでしたんだぞ!」
【何故なら、我々の目的はこの星を守ることなのだからだ。そのため、各国に我々の支援員を派遣し各国のリーダーとして活躍してもらう。これからもそれぞれの国が自然と共に発展 することを祈る。】
ここで発表は終わった。
7月1日
【今日、7月1日をもって正式に世界が2つに分かれた日とする!】
全世界でベルがなる。人々はそれぞれ自国の国旗を振っている。
【ここまでは長い道のりだった・・・!】
世界中もしんみりする。
【我々は先祖が守り、暮らしてきた星『地球』を滅ぼしてしまった!
我々は自分たちが住みやすかった星を、自分たちの手で住めなくしてしまった。
これは自分の首を自分で絞めるようなもの!決して繰り返してはいけない!】
この星は地球よりも住みにくかった。すべてが地球と反対だった。空気の中の気体の割合も、空の色も。だから、自分の星を滅ぼした最先端技術で、できる限り地球に寄せた。空気の中の気体の割合も。空の色も。
【もう、同じことは繰り返さない。】
これからはもう、森を無くさない。海を汚さない。自然と共存するのだ。
世界機関の代表の目からは一筋の光。
けど、これで終わりじゃない。
この星を守るのが我々の役目なのだから。
永遠につづく。
世界が2つに分かれた日 風邪 @Kaze0223
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます