海外に留学していた帰国子女の俺、一つ年下の幼馴染が高校デビューに成功したらしいのでからかってやろうと思う
あすとりあ
プロローグ
俺、
新庄家のすぐお隣の小日向家とは子供が同年代だったこともあって家族ぐるみで仲が良く、俺と葉音は幼い頃からの知り合い––––いわゆる幼馴染という関係だ。
幼稚園に入園したばかりの俺は、それはやんちゃで人騒がせな子どもだったらしい。今年で17になる俺には、今更そんな昔のことは全く思い出せないのだが。
話が逸れたが、俺の話はどうでもいい。本題は俺に一年遅れて入園した葉音の話だ。
葉音は俺とは正反対の人見知りがちで大人しい性格で、周りの子たちが当たり前にできることを同じようにできなかった。
そしてそんな葉音のことが心配で、俺は当時6歳ながら葉音のことを実の妹ように常に気にかけていた。葉音が困っていたらいつでも手を貸すし、自分の友達と遊ぶ時はいつも葉音も誘っていた。
その結果、葉音は何かあったらすぐに俺に頼るようになり、四六時中俺のそばを離れなくなった。
……今思えば、それがいけなかったのだと断言することができる。
葉音は小学生に上がっても自分からは人と関わろうとはせず、常に俺を介して知り合いの輪を広げるようになってしまった。
小学生の俺も馬鹿で、妹のように可愛がっていた葉音に頼られることが嬉しくてつい甘やかしてしまっていた。
そんな俺と葉音の関係に変化が訪れたのは、葉音が俺と同じ中学校に入学してからのことだった。
中学生になっても葉音の内向的な性格は相変わらずだった。そして、そんな葉音はすぐに俺の教室にやってくることになる。
小学校の頃とは周囲の顔ぶれも違う中、俺と葉音はいつも通りの距離感で接してしまった。
「ねぇ、あの二人、もしかして付き合ってるんじゃない?」
誰かはわからない。だが、確かにそんな言葉が、一瞬にして教室の空気を変えてしまった。
それからは大変だった。周囲からは、やれカップルだの、やれリア充だの散々囃し立てられ、俺たちの噂は瞬く間に学校中に広まってしまった。
中学生の色恋沙汰への興味は想像以上のもので、俺たちのような異分子は格好の話題というわけだ。
思春期真っ只中の俺が放ってしまった、「これからは無闇に俺に近づかないでくれ!」という言葉と、それを聞いて一瞬、葉音が見せたひどく悲しげな顔を俺は一生忘れることはできないだろう。
***
「もうすぐだ」
俺は故郷である日本へ向かう旅客機の中で、一人静かに呟いた。つい無意識に出てしまった一言を、隣に座る別の乗客に聞かれていないかと一瞬焦ってしまったのは内緒だ。
それもこれも、俺がアメリカへ一年間ホームステイに行く前のことを、昔話のように思い出してしまったことが原因だ。
日本に帰ったらまず最初にしなければならないことがある。あの日以来、ほとんど疎遠になってしまった葉音にもう一度会って直接あの時のことを謝りたい。
俺の留学は突然のことで、友達にも葉音にも何も伝えずに、黙って出発の日を迎えることになってしまったからそれも謝らないとな。
きっと葉音は俺の帰国を喜んでくれるし、あの時のことはすぐにでも許してくれるだろう。だけどそれだけでは俺の気が済まない。
だから絶対に––––今度こそ周りの目を気にせず、妹みたいな幼馴染を全力で甘やかしてみせる!
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新作です。ひとまずプロローグ。
息抜きでパパッと書いた作品ですが、続きが気になると思っていただけましたら、フォローだけでもしていってくださると大変嬉しいです!
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