3ページ 催眠術
未歩は無表情のまま答える。
「催眠術の本」
催眠術。
催眠とは、他人によって与えられた暗示により、精神的変化、肉体的変化が引き起こされた状態のこと。
最古の記録では、紀元前4世紀の古代エジプトで、
催眠によって病気を治していた。
と、残されている。
18世紀に入ると、フランツ・アントン・メスメルというウィーンの医師が、多くの人に催眠をかけ、いつの間にか病気が治っている、という施術をしていた。
メスメルが行ったことは、人の「五感」に働きかけて、トランス状態に導くものだった。
その後、19世紀に入ると、ヨーロッパでは、催眠術に対する科学的な研究が盛んになり、世界中に認知され、現代に至る。
日本においては明治二十年(1887年)前後に「催眠術」という用語が初めて一般社会に広まった。
催眠術は、特殊なコミュニケーション技術を使って自分や他人をコントロールすることができる。
食べ物の味を変えたり、人を眠らせたり。
催眠術をはじめて知った人にとっては摩訶不思議に見えるかもしれないが、実際は心理学を応用したシンプルな技術となっている。
妹から、催眠術という答えを聞いた瞬間、悠人の顔つきが変わった。
それは、妹のことを溺愛している彼だからこその反応だった。
悠人はこう思った。
(これは妹と遊ぶチャンスかもしれない)
そうして、彼は妹に対してこんな提案をした。
「俺に催眠術をかけないか?」
すると、今までずっと黙っていた未歩が、悠人に視線を初めて向けた。
「いいよ」
と。
こうして兄妹による催眠ごっこが始まった。
かけられるのは、悠人だ。
「じゃあお兄ちゃん。あたしの手を見て」
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