隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。
しろねこ。
戦の終わりと政略結婚
第1話 お嫁さん選び
「和平のため、それぞれの国から妻を娶れと?」
長子エリックは額に手を当て表情を歪める。
理屈はわかるが政略結婚は気が重い。
「兄上だけでなく、俺達も?!」
次子のティタンは驚いた。
和平の為とはいえ何故? と理解出来ていない。
「お嫁さんですか。考えたこともなかったですね」
末子のリオンは小首を傾げて戸惑う。
自分にまで声がかかるとは考えていなかった。
「うむ。此度の戦は皆の協力のもと、我が国が治めることが出来たのだが、肝心なのはここからだ。再び戦争を起こさせないよう人質として、それぞれの国から王女を連れてきてほしい」
様々な国と隣接したここ、アドガルム国は戦を仕掛けられた。
考えや文化の違いはあったものの、それまでは特に衝突もなく、過ごせていたはずだった。
国同士も仲が良い、とまではいかないものの、交流も交易も行なっていたのに、突如として三国から攻め入られたのだ。
アドガルム国王のアルフレッドは本気で驚いた。
予兆も何もなかったはずだ。
けして警戒を怠ったわけではなく、情報は取り入れていたが、何故か襲われた。
そんな状態で撃退、平定まで出来たのは奇跡に近い。
兵を鍛えてはいたが、それだけで撃退出来るものか? と、自国ながら不思議に思う。
国王として戦況を聞いていたが、いずれも信じられない報告ばかりだった。
空からはエリック率いるグリフォンの部隊が攻め入り、あっという間に指揮官を捕らえてきた。
邪魔をするものは、風魔法にて空を飛ぶ従者二コラが次々と討ち取り、蹴散らし、躊躇いもなく首を刈っていく。
草魔法を使える護衛騎士のオスカーは、植物の蔓を操り鞭のようにしならせて敵を捕らえていた。
蔓を切ると毒液が撒かれるため、迂闊に手を出せないのだ。
地上は剣聖と言われるシグルド達がいる本隊と、遊撃隊であるティタン達の部隊が攻守を務めていた。
シグルドはほとんどの敵を一閃のうちに切り捨て、ティタンは身の丈くらいありそうな大剣を用いて、時には馬ごと叩き切っていった。
シグルドの孫であるキールと、騎士と聖女の国と謳われたシェスタ出身の双子騎士・ルドとライカも活躍し、敵を屠っていく。
投降する者は無闇に切り捨てることはせず、捕虜として丁重に扱った。
城付近の守り、及び後方支援としてサミュエル率いる魔法部隊と、成人したばかりのリオンが存分に魔力を奮い、力を発揮していた。
リオンは広範囲への魔法を得意とし、眠らせたり痺れさせたりなど、次々と相手の自由を奪う。
女性術師であるキュアが、幻影魔法にて迫りくる敵から国への侵入を妨げた。
サミュエルは防護壁、そして味方の回復に徹し、影渡りの魔法を使えるリオンの従者カミュが皆をアシストしていく。
三国の重鎮達を捕らえた事でようやく戦は収まった。
なので、今アドガルムの牢はパンパンだ。
アルフレッドとしても、この重鎮達の世話が大変だし、早く国に帰したい。
人質としてくる王女たちと交換となるので、息子たちにはとっとと決めてほしかった。
「エリックはパルス国、ティタンはセラフィム国、リオンはシェスタ国が望ましい」
アルフレッドは三つの封筒を息子たちに渡す。
「それぞれの国の姫君の姿絵が入っている。どの者にするかは皆でそれぞれ決めてくれ」
それだけ告げると、国王である父は去っていった。
既に息子達の目は厳しく、これ以上居ても非難しか言われないとわかってるからだ。
三兄弟は皆揃ってため息をついた。
「どの姫様がいいとか、どうやって決めたらいいのだ?」
ティタンはそれぞれの国についての詳しいことを、あまり知らない。
防衛した際も割り当てられた場所で戦うだけだし、他国の実情がわかってない。
「人質とはいいますが、気をつけて選ばないといけませんよ。裏切りの可能性やスパイの可能性もありますし、寝首をかかれては困りますので」
リオンからの忠告に、ティタンはますますわからんという顔をしている。
「裏切らなさそうな女性にしておけ。ティタンはそれでいい」
大抵の女性はティタンの寝首はかけないだろうから、とエリックは投げやりだ。
「エリック兄様の場合はなかなかの国ですね……パルスは宝石の国で国王はかなりの遣手と聞きます。知恵比べ、頑張ってください」
パルスの現国王はかなり癖者だ。
その娘となれば、何を仕込まれてるかわからない。
パルスはお金や美しいものが大好きな国で、気位も高い。
驕った貴族が多く、選民意識も非常に高いので、富裕層と貧困層の差も最近更に激しくなっていた。
また金や銀以外にも鉄などの産出もあるので、自国の宝石を守るためにと、武器なども多く作り、軍事にも力を入れている。
エリックもパルスの者と話したことはあるが、本音と建前が凄い。
「リオンが言われたシェスタは騎士と聖女の国として有名で、女性だって戦に身を投じる気概のある者が多い。舐められるなよ」
リオンは男性にしては細身だ。
騎士ではないリオンは、軽んじられる可能性が非常に高い。
しかし国王指名というのは、シェスタの国王が女好きな事があげられる。
九人もの王女がいる中で、アドガルムに不利にならない女性を選ぶのがリオンの役目だ。
「ティタンは国の大事な事さえ話さなければ、誰でもいい」
ティタンが言われた国、セラフィムは他の二国に比べるとまだ穏やかだ。
戦を進めた国には違いがないのだが、こちらの王女は三人、武力もどちらかといえば魔法重視の国であった。
攻め入ったにしては控えめな戦力で、投降を促せば安堵していた。
ティタンとリオンはエリックの言葉に頷く。
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