傘が欲しい

ずぶぬれの私は手を伸ばす

傘が欲しい

寒いと震える弟のために

傘が、欲しい

だけど私に傘は無い

青空を信じて遠い昔に捨てたから


だけどここは雨の惑星

どれだけ願っても降り止まない雨がある

雨の冷たさを知る私は

ずぶぬれになりたくない私は

招かれるままにあなたの傘で雨宿り

弟と肩を寄せ合い

雨よ止めと暗い空を見上げている


降りしきる雨は激しさを増し

時に黒く、時に白いその傘の下で

私は笑う、私は泣く、私は生きる

黒い傘をときに不気味に

白い傘をときに嫌悪し

それでも私はあなたの傘の下にいる


傘があればと思う日もある

そうすれば喧嘩をした雨の日も外に飛び出していけるのに

守られるだけの私じゃなくなるのに

だけど雨の後にうかぶ雲を見るたびに

空っぽの両手を握り締める


小さなこの手に傘は大きすぎる

小さなこの肩に傘はあまりに重すぎる

重い傘を抱きしめて硬い靴をはいて足を踏ん張るのはつらすぎる

空っぽの両手はあのこと手を繋ぐために

空っぽの両手はあの子を抱きしめるために

裸足の足は軽やかにあの子と踊るために

裸足の足はしなやかにあの子と大地を踏みしめるために


私には傘がない

私は傘を持っていない

私は傘を捨てたのだ

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