ポエニ戦役

アンチテーゼ

第1話

BC200年頃の第二次ポエニ戦役の話。


ハンニバル「ローマは俺らカルタゴから奪ったシチリアを手下扱い、おそらく我がカルタゴも手下にしてしまうつもりだろう…」


ローマにて…

兵士「大変です!ローマ兵がカルタゴにやられました!」


ファビウス「なぜローマがカルタゴなんかに?カルタゴの方が兵数が多かったのか?」


兵士「いいえ、同数でした!」


マルケルス「ならば練度で劣っていたというのか…」


兵士「すみません、そうとも思えませんでした…」


マルケルス「じゃあなんで負けたんだよ!」


兵士「最初はローマの方が優勢でした。しかしカルタゴの軍が突然二手に別れて包囲されてしまったんです」


マルケルス「とにかく街がひとつカルタゴに包囲されたということか…」


兵士「まぁこの損害は大したことでは無いのですが用心に超したことはないでしょう」


カルタゴにて…


部下「ハンニバル様の力を使ったらローマなんてイチコロでしたね!」


ハンニバル「いいやまだ気を抜くな、これからが本番だ」


部下「本番?まだ終わってなかったんですか」


ハンニバル「そんなことより買い物をしろ、食料や水などを死ぬ気で集めろ」


部下「まさかアルプスを超えるのですか?」


ハンニバル「超える…」


部下「無理です!しかも今は冬ですよ?凍え死にますよ」


ハンニバル「なぜ無理だとわかる?お前は予言者にでもやったつもりか?」


部下「そ、そういう訳じゃ…」


ハンニバル「俺らは不可能だと思っていたローマ軍討伐を成し遂げた。不可能なんて結果を出してからの話だ」


部下「そうだ…俺らの将軍は不可能を可能にするハンニバル様だ!」


ローマにて


ファビウス「アルプスを超えてきただと?!」


兵士「大変です!ハンニバルがスキピオに勝ちました」


ファビウス「しかしティベリウスもいるだろ?」


兵士「それがティベリウスにも勝ちました」


子スキピオ「私はスキピオの息子のスキピオです」


ファビウス「ややこしいな…」


子スキピオ「そういう文化なんだから仕方ないですよ」


ファビウス「す、すまない本題に入ってくれ」


子スキピオ「ティキヌスの戦いでハンニバルは勝ちました。ハンニバルは勝利したら捕虜を解放すると約束していたらしく士気が高かったのです」


ファビウス「なるほどな、そんなことを…」


子スキピオ「トレビアの戦いでは逃げるカルタゴ軍を追ったら伏兵が林に隠れていて負けました」


ファビウス「伏兵が居たなら後方に逃げられなくても横に避けられたんじゃないのか?」


子スキピオ「それが、どこに行っても騎兵がいて逃げ場がなかったんです」


ファビウス「そんなに強い騎兵なのか?」


子スキピオ「正直強さで言えば雑魚だったと思います。しかし何か小手先のものだけじゃなくもっと別の恐ろしいものを感じました。」


ファビウス「まぁ子供のお前には分からないか、すまない」


兵士「失礼します。お2人が話してるうちにまたローマが負けました」


ファビウス「くそ!これで4連敗だと?」


兵士「逆にここまで来たら連敗記録更新したいですよね」


ファビウス「何を言ってる!今すぐカルタゴを食い止めなければ国家存亡の危機だ!」


兵士「すみません冗談ですよ、そんなことよりこちら市民からのメッセージです」


『ファビウス様、どうかハンニバルを止めてください!ファビウス様を独裁官に任命します』


ファビウス「俺が独裁官だと?俺はただの政治家だしハンニバルに勝てるとは思わない。しかし勝てなくてもハンニバルを食い止めさえ出来たらいいんだな…分かった」


子スキピオ「ファビウス様、どうやってハンニバルを倒すんですか?」


ファビウス「倒さないよ」


子スキピオ「た、倒さない?」


ファビウス「戦争の勝利とは戦闘の勝利にイコールではない。相手を諦めさせたらいいんだよ」


子スキピオ「はぁ」


ファビウス「アルプスを超えたのだからおそらく物資も乏しいだろう。なのでそれを狙うんだ」


子スキピオ「兵糧攻めということですね」


ファビウス「常に牽制し相手が構えたら退く。これを繰り返すんだ」


子スキピオ「何回もピンポンダッシュするみたいな作戦ですね」


ファビウス「うるさいなぁ、まぁたしかにそんな所だろう」


子スキピオ「この作戦は成功するかもしれない。でもハンニバルに勝つ方法が別にあるかもしれないのに…」


カルタゴにて


部下「飯が減ってきました」


ハンニバル「そうか、ローマの属州から奪え」


ローマにて


兵士「カルタゴの兵士がこちらに向かっています」


ファビウス「先回りして街を焼き払え」


兵士「えっ、冗談ですよね?」


ファビウス「ばーか、ハンニバルと真っ向勝負して勝てねぇのはわかってるんだからこうするしかねぇだろ」


カルタゴにて


ハンニバル「カルタゴの命運は我々にかかっている!木の皮を食ってでも生き延びろ!」


部下「オー!」


ローマにて


ファビウス「ハンニバルとは戦うな!戦ったら負ける!」


兵士「オー…」


ファビウス「これが得策かな」


兵士「知ってます?ファビウス様のやり方が汚すぎてグズ男って呼ばれてるんですよ」


ファビウス「別に理解が得られないならいい。ハンニバルに勝てない以上こうするしかないだろ」


兵士「ていうか元老院がクビって言ってます」


ファビウス「はー!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る