第6幕 お待たせしました、マジカル☆ドリーマーズ全員集合!
「うわあああっ!」
「はあっ、はあっ、もうだめだ!」
「な……なんということでしょう」真弥が目を見開いた。劇的ビフォーアフターのテーマ曲は流れない。
牢獄の中では、ムキムキになった蝶介と秀雄がただひたすらにスクワットを行なっていたのだった。
「ふーっ、ふーっ!」苦しそうな表情をしながら、蝶介が何度も膝を曲げてお尻を後方へ突き出す。太腿の筋肉がパンパンになり悲鳴を上げるが、蝶介は構わずスクワットを続ける。
「あと、あと一回!」自ら追い込みをかけて自分の筋肉を
「ああ、死ぬーっ!」と嬉しそうな表情で、彼は冷たい石畳の上に大の字になった。
秀雄も同様に「ふしゅーっ、ふしゅーっ!」と大きく息を吐きながら自分の限界を超えていく。あの勉強しかしてこなかったインテリメガネの秀雄ちゃんがここまで追い込むことができるようになるなんて、誰が想像できただろう。この域に達するまでに、きっと眠れない夜もあったことだろう。
「き……筋トレ?」マジカル・エターナルが口をあんぐりとあけて、その場にぺたんと座り込んだ。
「っていうか、あんたたち……ガリガリーズにやられたんじゃなかったの?」李紗が眉を
「そ、そうです! いくらトレーニングをしてもマザープロテインがない今、どうやってムキムキになったというのです?」
ぷっちょ君が不思議そうに尋ねた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
過酷なトレーニングの後で一言も喋ることができない蝶介が、地面に大の字になったまま、牢屋の脇に置かれていたバッグに手を伸ばす。そしてガサゴソと中を
やがて二人はゆっくりと体を起こし、プロテインドリンクの側面についているストローを袋から取り出し、上部の穴に差し込む。そして、
――うわぁ、気持ち悪ぅ。と李紗は思ったが、決して口には出さなかった。マジカル・エターナルも真弥も若干冷めた目で二人を見つめていたので、私が間違っているわけではないよね、そうだよね、と李紗は少し安心していた。
ただ一人、ぷっちょ君だけが感動の眼差しでダブルマッチョを見つめていたのだ。
「す、すごい! そのドリンクはもしや……マザープロテインなのかい?」
「ぁん? いや、ただのコンビニで売っているプロテインだぜ」
蝶介がさも当たり前のように答える。
「最初にあったときにも飲ませてもらったけど……君たちの持っているプロテインドリンクはマザープロテインと同じ……いや、それ以上の効果がありそうだよ!」
ぷっちょ君は二人の筋肉に感動しきりだった。これならガリガリになってしまったマッキンの人々も元に戻すことができる! と喜んでいた。しかしそこに冷静な秀雄が一言、物申す。
「とはいえ、人数分のプロテインドリンクを用意するとなると結構な費用がかかりますし、一度に揃えることはできません。やはりマザープロテインを取り戻すのがいちばんの解決法と思われますよ」
ん? どうして秀雄がマザープロテインの話を知っているのかしら? 李紗のそんな疑問に対して、蝶介と秀雄はガリガリーズのボス、ヒーヨワーがここへ来て昔話をしたことを説明した。
「なるほど、お二人はすでにヒーヨワーに会っているというわけですね」真弥がそういうと、「そういうことだ」と蝶介がうなづいた。
「じゃ、みんなでヒーヨワーを倒し、マザープロテインを取り返すのよ!」
「おー!」
李紗が中心となって牢獄の中ではあったが円陣を組んだ。テンション爆上がり、あとは勢いのまま突き進んでヒーヨワーを倒せばおしまい、と思ったらマジカル・エターナルが蝶介と秀雄に対して言った。
「番所君も海原君も変身しておいた方がいいわよ。魔法を使ってガリガリビームも跳ね返すことができるから!」
せっかく元に戻ったムキムキの肉体とのお別れは寂しかったが、またガリガリビームを喰らってしまったらたまったもんじゃない、と二人は慌てて魔法少女に変身した。
「マジカル・ドリームチェンジ!」
今ここマッスルキングダム(現ガリガリキングダム)に、三人の魔法少女(と二人の魔法使いとちびマッチョ)が勢揃いしたのである。
役者は揃った。後はヒーヨワーを倒してマザープロテインを取り戻すだけ! のはずである。
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