高慢と偏見と予知能力〜悪役令嬢として放っておいて欲しいのに、傲慢英雄公爵との結婚ルートから逃れることができません〜

ころぽっかー

第1話 予知能力者死すべし

「あなたのお父様は、三十二歳で亡くなります」




占い師がそういったとき、九歳のマーク・ペンドラゴンは、父親であるジョージ・ペンドラゴン公爵と共に大笑いした。




二人とも、自身が何者にも傷つけられないことを知っていたからだ。




彼らは強い〝恩寵〟を保持していた。古い血を引く貴族だけに発現し、念聴、透視、念動といった奇跡を現出させる力、米国風にいうなれば〝超能力〟だ。




親子は、ともに〝蒼い男〟と呼ばれる恩寵を持っていた。青白い発光体が全身を包みこみ、人知を超えた怪力と耐久力を発揮するのだ。




じっさい、父親のジョージは、ほんの数ヶ月前に第二次マーリニー戦争に赴き、幾千発もの銃弾を受けながらかすり傷一つ負わなかった。




彼は単身、敵陣地に乗り込んで、〝至高者〟カントラヤビ将軍を討ち、英雄となった。帰国後は、女王代理のヴィクトリア手ずからに勲章を授かり、あらゆる新聞の一面を飾った。




とはいえ、普段のジョージは武張った男でもなく、大貴族にしては珍しいほどの家庭人だった。一般的に、貴族は子供の教育を家庭教師に一任するものだが、彼は自ら馬の乗り方や剣の使い方、歴史、算術などを教えた。




ロンドンからは、戦争の英雄に対し、パーティの誘いがひっきりなしに届いたが、田舎の本邸での穏やかな日々を好んだ。




ペンドラゴン一家がロンドンのタウンハウスに赴くのは、古参貴族による〝円卓会議〟が開かれるときだけだった。ペンドラゴンは初代アーサー直系の有力貴族であり、〝蒼い男〟の恩寵者が家系に現れたときは、常に円卓に議席を与えられる。




もっとも、ジョージはロンドンも滞在中も家族サービスを忘れることはなく、この日も、イーストエンドに一家で〝冒険〟に赴いていた。




イーストエンドは、ロンドン旧城壁の東側に広がる庶民街だ。およそ千年前、対ノルマン人用に築かれた城壁は、市街の発展と共に大半が取り壊されたが、ロンドンっ子たちは、いまでも、地域一帯を〝東の端〟と呼んでいる。




ここで開かれる蚤の市には、世界的に知られており、帝国圏のみならず新大陸やルーシ帝国からも胡散臭い品々が集まってくる。聖剣エクスカリバーを名乗る錆だらけの剣や、まともに動作しない最新式蒸気機関、不死をもたらす〝救世主〟の血液など、何でもありだ。




市立つ日は、街はお祭り騒ぎになる。東ローマ帝国風の焼き肉屋台や、フランク王國風の菓子屋台が軒を連ねて芳しい匂いを撒き散らし、大道芸人が一輪車に乗ってお手玉を披露し、伝導牧師の集団が堕落の罪についてお説教をがなりたてる。




ペンドラゴン一家は、そんな混沌と熱気溢れる市に踏み込み、その途端に人波に押されて二手に分けられた。




一方は、父ジョージと長子マークの〝蒼い男〟コンビ。もう一方は、母と次男ウージー、それに従者にしてジョージの親友でもあるウォルター・レノックスの三人組だ。




ジョージは「夕方に家で!」と叫ぶと、マークと共に人の流れに乗った。




⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎




マークは浮かれていた。


大好きな父親を独り占めしているのだ。


いつもなら、弟のウージーと分け合わねばならないのに。




彼は父の大きな手を握りしめた。




周囲の人々は押し合いへし合いし、目当ての品目掛けて殺到し、売主と丁々発止のやりとりを繰り広げている。




二人は、如何にも出所の怪しげな東洋の武具を眺めたあと、古書を山積みにした店でブルフィンチ版の『アーサー王伝説』を手に入れ、屋台で揚げたてのスコッチエッグを買った。




マークは口と手を油でベタベタにしながら幸せにひたった。




ジョージが、口元をハンカチでふきながらいう。


「さあ、どうする? ほかに覗いてみたい店はあるか?」




マークは当たりを見回し、路地の奥の薄汚れたテントを指した。ぶら下がった看板には〝うらない〟とあった。




「あれは、なに?」




ジョージが複雑な顔をした。


「〝占い〟、未来を教える商売だ」




「未来を!? でも、そんなにスゴイ場所なのに、どうして行列ができないの?」




ジョージが小さくため息をついた。


「そろそろ知っておくべきだろうな。あの中にいるのは占い師だ。占い師は、未来を見とおす恩寵〝予知〟を持っている。だが、予知は人々からよく思われていない」




「どうして?」




「〝救世主〟様を殺したからだ。いや、厳密には、およそ千八百年前に救世主様を殺した男は、予知の恩寵者だったと信じられている」




マークはぶるりと震えた。


あの神話の悪魔が予知の恩寵者?


「予知の恩寵者って、怖いんだね」




「いいや。救世主様を殺した男に予知の恩寵が宿っていたかなど、誰にも確認しようのないことだ。だろう? だが、人々は長い年月にわたって迫害してきた。そのために、彼らはああして各地を放浪して生きていくよりほかなくなったんだ。近年、迫害禁止令が出され、牧師たちも予知についての説教は控えてはいるが、偏見は根強く残っている」




マークはテントをもう一度指差した。


「じゃあ、あのなかには悪魔がいるわけじゃないの?」




ジョージが笑った。


「いるのは、もちろん人間だ。そうだな。では、ひとつ未来を占ってもらうとしようか」




「ええ?」




「そう怯えるな。未来を正確に見通せる予知者は滅多にいない。せいぜいが明日の天気を当てられる程度だ。こういう場末の占い師は、適当な当てずっぽうをいうものさ」




マークはジョージに押されるようして、テントの垂れ幕をくぐった。




⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎




なかは薄暗く、甘ったるい匂いが立ち込めていた。


頭上の布地からは、色とりどりの紐がぶら下がり、先端に結えられた金属棒が互いにぶつかり合い、奇妙な唸りを立てる。




テントの中心には、小さな丸テーブルが置かれ、その向こうでは、まるまると太った女が、バケツに入った山盛りのプディングを咀嚼していた。外見に反して、スプーンを口に運ぶ動きは優雅で、育ちの良さを窺わせた。




女はプディングをテーブルの下に隠すと、ハンカチを取り出して口元を拭いた。


「いらっしゃいませ、ペンドラゴン卿」




マークは思わず父親の手を握りしめた。




ジョージが頷く。


「わたしたちが今日この日訪れるのが見えていたと?」




女が笑った。


「いいえペンドラゴン卿。あなたの似顔絵を新聞で見たことがあるだけですわ。なんといっても英雄様ですもの」




「正直だな」




「何事も正直に伝えるのがわたしの信条ですの。どんな未来も見たままに伝えますわ」




「それは素晴らしい。では、早速、わたしたちの未来を占ったもらえるかな?」




マークは父とともに、ベンチに並んで腰を下ろした。




二人が女の指示に従って片手を差し出すと、女はものすごい力で掴んできた。




女の顔が歪む。


「まあ、なんてこと。お気の毒に」




「なにが気の毒なのさ?」と、マーク。




女は囁くようにいった。


「あなたのお父様は、三十二歳で亡くなります」




マークは息を呑んだ。




ジョージが興味深げに片方の眉をあげた。


「死因は何かな?」


彼は現在三十一歳。占い師のいう通りなら、あと一年もたたずに死ぬことになる。




「銃で撃たれるのです」




マークは父と顔を見合わせて、大笑いした。


所詮、占い師なんていうものは、適当に客の不安を煽るだけのものだったのだ。


よりにもよって、銃だなんて!




ジョージがいう。


「なあ、君も知ってるだろうが、わたしには〝蒼い男〟がある。物理的な死はありえない」




「ええ、存じてますよ。ペンドラゴン卿。それでも、あなたはこめかみを撃ち抜かれるのです。思い残すことがないよう、残された日々を過ごすことをお勧めしますわ。かくいうわたくしにも、死の運命が近づいておりますの。ですから、自分の好きなものだけを食べ続けているのです」




そういうと、占い師はテーブルの下からプディングのバケツを取り出し、目の前の二人が見えなくなったかのように、一心不乱にスプーンを口に運び始めた。その表情は奇妙に強張っており、無機質な人形のようにも見えた。




ジョージが呼びかけても、占い師は答えない。


彼は何度か顔の前で手を振ったが、その手すら目に入らないようだった。




ジョージは首を横に振ると、懐から銀貨を取り出し、バケツの横にそっと置いた。




マークが父親に引きずられるようにしてテントを出る間際、後ろから囁き声が追いかけてきた。


「もしお父上を助けたいのでしたら、もう一度いらしてください。銀貨十枚で、お救いする方法を教えてさしあげますわ」




⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎




ストランド通りのタウンハウスに帰っても、マークの耳には占い師の言葉がこびりついていた。




こめかみを撃ち抜かれる。




もちろん、〝蒼い男〟の霊体は銃弾ごときに貫かれるものではないし、そのことは同じ恩寵の使い手であるマーク自身が誰よりも分かっている。




こめかみを撃ち抜かれる。




だが、弟のウージーとクリケットの練習をしているとき、風呂で汗を流しているとき、食堂でコック自慢のホワイトシチューに舌鼓を打っている時も、頭の隅で、あの占い師の少し甲高い声が繰り返しささやいていた。




こめかみを撃ち抜かれる。




食欲が失せて、フォークをテーブルに戻す。すると、あの甘ったるいプディングの香りを感じたような気がした。マークはあわててテーブルを見回したが、夕食の席にはプディングの皿などどこにもなかった。




翌朝になっても、さらに次の日の朝になっても、占い師の言葉は彼の心に張り付いていた。




だが、いくら伯爵の息子とはいえ、銅貨ならともかく、銀貨十枚など手元にない。父や母に頼んでもあの占い師に渡すなど許してくれないだろう。




予言を受けてから三日後、彼は悶々とした思いを抱えながら、父と弟と共に、四頭だての馬車でアスコット競馬場へ向かった。この日は彼の従兄弟であり、ロイグリア女王代理でもあるヴィクトリアが主催する、世界最大の競馬大会「ロイヤルアスコット」の開幕日だったからだ。




本国および各植民地を代表する名馬たちが一堂に会し、四日間に渡って熾烈な戦いを繰り広げる。




巨大なスタンドには、貴族たちはもちろん数万のロンドンっ子たちが詰めかけ、大声援を送る。もちろん、ほとんどの人間はブックメーカーを通じて金をかけているので、その熱量も半端ではない。




一家のために用意されていたのは、女王のすぐそばの貴賓席だった。到着してすぐに父のジョージは他の重臣たちに囲まれて政治談義に花を咲かせ始めた。弟のウージーが「探検に行こうぜ!」と誘いをかけてきたが、マークは気乗りせず、結局、弟は一人で飛び出して行った。




マークは天幕の影のなか、大勢の大人に囲まれて、一人ぽつんと不安に苛まれていた。




すると、斜め後ろから声がかかった。


「どうしたの、マーク? 気分でも悪いの?」




振り返ると、女王代理のヴィクトリアが心配げに顔を寄せてきた。日頃は、大人たちに囲まれて政務に取り込んでいる彼女だが、こうして彼に話しかけてくるときは、年相応の少女にしか見えない。




昨年、大病を患ったソフィア女王が、彼女を代理に押した時は誰もが仰天した。




誰もが、たかだか九歳の子供に国を率いるなどできるはずがないと考えたが、ソフィアは「この子は、わたしと同じ〝繁栄〟の恩寵を持っているのですが」と告げた。




〝繁栄〟はロイグリアを史上最大最強の国家に育て上げた恩寵だ。初代王アーサーの姉モーガンに宿っていたとされ、以降、おおむね数世代に一人の割合で王族の血を引く者に出現してきた。王族に宿るという点では〝蒼い男〟と同じだが、その希少性は〝蒼い男〟以上だ。




〝繁栄〟の恩寵者が現れづらいのは、その力が目に見えないからでもある。一言でいえば〝大局的に正しい判断を下す力〟だからだ。〝繁栄〟の力を持つ者がいたとしても、その判断が恩寵によるものなのか、それとも単に人より多少賢いだけなのか、容易には見分けがつかない。




じっさい、現女王のソフィアが十代半ばに、「わたしは〝繁栄〟を持っています」と言い出したときは、その真贋の鑑定に七年もかかったとされている。




真贋の鑑定が必要ないとされるのは、ヴィクトリアのように先代の〝繁栄〟の恩寵者に後任として指定された場合だけだ。




もちろん、ソフィアの言とはいえ、九歳という年齢は少々若い。恩寵というものは、本来思春期に発現する者なのだ。大貴族の中には、疑るものもいたが、結局、ヴィクトリアはソフィア同様に神眼めいた驚くべき判断を連発し、そのすべてを的中させ、あっという間に実力を認めさせた。いまでは、彼女の力を危ぶむものは一人もいない。彼女はソフィアの築き上げた大帝国を、さらに拡大するだろうと誉めそやされている。




彼女なら、いま彼が抱えている問題にも、適切な道筋を示してくれるだろう。




彼はヴィクトリアの問いかけに小さく頷いた。


「どうすればいいか分からなくて、苦しいんだ」




彼女が優しく微笑んだ。


「話して、マーク」




ひととおり話を聞き終えた彼女は、深刻な表情で「由々しき問題ね」とつぶやいた。




「君も、予知が本当だと思う?」と、マーク。




「長らく続いた〝予知狩り〟で、本物の予知の恩寵者がほぼいなくなってるわ。いまはインチキばかり。あなたのお父様がいうように、その占い師がニセモノの可能性は高いと思う。でもね、マーク。ペンドラゴン卿は我が国の宝よ。“蒼い男”の英雄は必要不可欠なの。絶対に失うことは許されない。もちろん、ん一個人としてもジョージさんが死んじゃうなんて嫌よ。わずかな危険も排除しておくべきだわ」




「ヴィッキー」




「まあ、そうはいってもすべきことはとっても簡単なんだけど」




翌日の朝、ヴィクトリアは約束通り、従者を通じてこっそりと銀貨十枚を届けてくれた。




マークは四ブロックを二時間かけて歩き、イーストエンドまで赴いた。蚤の市は終わっていたが、路地にはあのボロボロのテントがまだ残っていた。彼はホっとしてテントに入った。が、人気がない。例の甘ったるい匂いは微かに残っているが、誰もおらず、空になったプディングのバケツだけがプディングのバケツだけが転がっていた。一匹の蝿が、器の上で脚を擦り合わせていた。




そして、テーブルの上には流暢な字が書かれた紙があった。


文言は次の通りだ。




金貨五枚であなたの父上を救って差し上げます。




マークは思わず“蒼い男”を発現させた。彼の身体を青白く発行する零体が包み込む。父のそれに比べればわずかなものだが、銃弾を弾く力くらいはある。もし、あの占い師が目の前にいたら半殺しにしていたろう。




金貨五枚だって? 平民の家庭が一か月は食べていける額だ。




彼はきびすを返した。


また二時間かけて自宅に戻り、昼食に遅れたことを母親に怒られた後、自室でヴィクトリア宛ての手紙を書いた。




翌日、ヴィクトリアは彼の無心に応じ、金貨五枚を寄越した。




だが、再び訪れた占い師の小屋はまたしても空で、テーブルに残された書付には「金貨二十枚」とあった。さらに翌日には、要求は「金貨百枚」になっていた。




ヴィクトリアはそれでも彼の要求に応えてくれた。




さすがに額が額ということで、ヴィクトリアの従者の一人が彼と共にイーストエンドまで同行してくれた。だが、路地からはテントは消え失せ、煉瓦造りの塀には真っ赤なペンキでこう書かれていた。




「貴族は死ね」




☆☆☆☆




マークは父を救う方法を求めて、ロンドン中の占い屋を渡り歩いた。


どの占い師からも、あのイーストエンドの占い師のような、ぞっとするような真実味は感じられなかったが、マークには彼らの言葉以外にすがるものはなかった。




ある占い師は「お父様を助けるには、このルクソールの古代神殿から発掘されたお守りが必要です」と、ヒエログリフが刻まれたラーの人形を差し出した。値段は金貨十枚。マークは支払った。




また、別の占い師は「特別な占い」を行わねば未来が見えないとして、一回金貨三枚の占いを五回も繰り返し、「助けたければ、毎朝、日の出を拝みながら次の言葉を唱えるのです」と奇妙な祝詞を彼に伝えた。彼はそれを信じ毎日五時に起きて部屋の窓から太陽を崇拝することを日課とした。




さまざまな占い師が、さまざまな「死を逃れる術」を教示し、そのたびに礼金を要求した。




マーク自身、胡散臭いと思わなかったわけではない。だが、父を救う方法はほかになさそうだったし、なにより占い師たちは彼が金を渡したあとも“逃げなかった”。もし、彼らがでたらめをいっているのであれば、同じ場所で商売を続けるはずがない。マークは身分を明かしたうえで相談しているのだから、すなわち、万が一にも彼らの術が通用せず、ペンドラゴン卿に何か起これば、それは“蒼い男”の恩寵を持つマークの恨みを買うことになる。




彼がイーストエンドの占い師の予言を聞いてから三か月後、父ジョージは大陸に出征した。エルバ島に追放されていたフランク帝国皇帝が舞い戻り、ワーテルローで大会戦が行われたのだ。




まもなく、訃報が届けられた。




無敵のはずの〝蒼い男〟も、発動していなければ意味がない。ジョージが自陣の天幕のなかで将官たちと昼食をとっていたとき、数マイル離れた戦場から飛んできた一発の流れ弾が、彼の頭部を撃ち抜いたのだ。




家族が悲嘆に暮れるなか、マークは街に飛び出した。そして、エジプトのお守りを彼に売りつけた占い師のもとを訪れた。やせっぽちの貧相な占い師は、彼を見ると満面の笑みを浮かべた。


「どうされました? ペンドラゴンのおぼっちゃん。また新しいお悩みですか? わたくしめにお任せください。わが予知の力でどんな悩みもたちどころに解消して差し上げましょう」




マークはいった。


「君は未来が見えるんだよね?」




「ええ。もちろんですとも!」




「なら、もうすぐ出る号外で何が報じられるかもわかるはずだね」




「え、ええ。しかし、未来というのは常に揺れ動いているものです。ひょっとしたら外してしまうかもしれません」




「なら、ぼくが当ててあげるよ。掲載されるのは、ぼくの父、ペンドラゴン卿の死だ」




占い師が「ひいっ」と悲鳴を上げて、店の奥に引っ込もうとした。


マークは全身に“蒼い男”をまとうと、占い師の襟首をひっつかみ、窓から店の外に放りだした。


占い師は石畳に叩きつけられ、「ぐえっ」といってのびてしまった。




それから、号外がばらまかれるまでの二時間の間に、彼は父を救えなかった六人の占い師すべてを半殺しにした。




それでも、彼の怒りは収まらなかった。


この日、“予知”の恩寵者すべてが彼にとっての敵となった。


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