幕間
幕間
商店街の道端に落ちていた本から始まった一連の騒動を経て、俺は
門倉は万年タートルネックにコート着用という奇妙な男で、大学にも社会にも馴染めていないれっきとした社会不適合者である。その上ぞっとするような美形と長髪とが、ことさら奴の浮世離れに拍車をかけているらしかった。
よもやこの偏物に感化されたなんてことはないだろうが、門倉と知り合ってから、なぜだか俺はこんなことを考える。
何かとの
門倉朱雀と出会ったことで、俺の人生も変わるだろうか? あるいは、俺と出会った門倉は? 「お前と会えてよかった」なんてドラマチック過ぎる台詞だが、いつか心の底からそう思える日は来るのだろうか?
そんなの幕が下りてみないと分からない、というのは門倉朱雀の言いぐさだ。
「幕? 死んだら分かるってことか?」
「ランドセルの色がブラックじゃなくブルーで良かったかどうか、なんて卒業してみないと分からないだろう。少なくとも、小学一年生には答えられない問いだよ」
「あー」
分かるような、分からないような。
「そういうわけで
こういうところで天国を目指さない偏屈さが、いかにもという気がして俺は笑った。変人とはかくあるべし。俺を地獄へ道連れする気でいるのもまた然り。
だから、俺の返事はこうである。
「地獄で再会したそのときは、俺も『お前と会えてよかった』って言ってやるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます