後日談2 王の葬送

 彼の者の葬送は、本人の望み通りに王都の西にある広場で行われた。

 王家の血を引きながらも、王家の者として生きる事を捨てた彼は、生涯を町で過ごした。

 王都シルディスの西地区外れにある木枠づくりの一軒家。そこが彼の王城であった。


「彼が王になってくれれば」

 そう望む声は少なくはなかった。

 かつての英雄である彼に、王たる資格は十分にあったが、彼自身が王冠を戴く事を望まなかった。


 その理由の一つに、最愛の妻の存在もあったのだろうか。彼をかたわらで支えたその女性は、獣の耳と尾を持っていた。


 王となる者に異種族の妻を迎える事はできない。


 その英雄としての功績に、冒険者としての働きに、そして獣人の国を始めとする他の国との繋ぎを作った事に、多くの称賛が集まった。


 民はその彼を慕い敬い、陰で密かに『民の王』と呼んだ。



 その葬送は、星の神の巫女でもあるその妻が取り仕切った。

 参列者の中には獣人の国の長と、聖獣の長の姿もあった。

 長い歴史の中で、この両者が人間の王族の葬儀に参加するのはこれが初めてだったという。


「彼は私が見送ります」

 聖獣の長はそう言い、両の手を掲げた。


 最後に獣人の妻は、彼の亡骸に口づけをした。

「ありがとう、ニール」

 聖獣の長に導きに従い、彼の者の最後の魔力は空に上がり美しく爆ぜた。

 キラキラと地上に降り注ぐその魔力は、地上に落ちるとそのまますぅと大地に染み込んでいった。

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