76 日記(2)

 ナインテールを倒しにきたはずなのに、なんだかおかしな事になっている。

 目的のナインテールは魔族に倒されてしまったし、親を亡くした仔狐には妙に懐かれてしまった。

 それどころか高位魔獣たちが集まってきた。


 高位魔獣たちが仲間意識を持っている事は知らなかった。

 人の言葉を話すという噂は知っていたけれど、まるで獣人と見分けがつかないとは思わなかった。

 色んな事がありすぎて、びっくりを通り越してしまった。


 ナインテールの尻尾はアミュレットにする事にした。

 私たちに託してくれたものだから、あのハゲ領主には渡せない。

 ナインテールの毛を沢山拾う事ができたので、これで十分でしょう。


 しばらく仙狐せんこの家に泊まる事になった。なんだか不思議な感じ。



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 * * *


 よくわからないけれど、悪い事をしてしまったらしい。

 シアをものすごく怒らせてしまった。

 皆も泣いていた。どうしていいかわからなかった。


 今朝、アッシュがいつものように挨拶をしてくれて、安心した。

 皆もなんだか疲れているみたいだったけれど、この町には居たくないからと出立する事になった。


 昨日の事は、今度ルイに聞いてみよう。


 * * *


 メルが教会に帰りたくないと言い出した。

 理由を聞いても答えようとしない。

 今日はアッシュたちと、町に泊まるらしい。

 大司教様たちが残念がるだろうけれど、仕方ないわよね。


 * * *


 メルがあの事を嫌がっていたなんて、知らなかった。

 どうやら彼は人間に近いらしい。

 アッシュが教えてくれた。


 ルイの言う通り、アッシュも嫌だったらしい。

 本当に悪い事をしてしまった。


 * * *


 アッシュの話によると、王都に家を買ったらしい。

 次は私も行きたいと言ったら、いいと言ってくれた。


 * * *


 昨日は皆でアッシュの家に泊まって、今日はカフェに行って来た。

 とても楽しかった。

 王都に戻った時くらい、こんな楽しみがあってもいいわよね。


 アッシュの家の留守番用にと、ダンジョンで採取してきた霧を使ってゴーレムを作った。

 この家にいつ誰が来てもいいようにと、この全員のマスター登録をした。

 アッシュは冒険者ギルドに財産登録もしたらしい。いつ死んでも大丈夫なようにだって。


 この任務で誰か死ぬわけはないのに。アッシュは心配しすぎ。


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 * * *


 魔族領に入ったら教会の魔法が使えなくなるなんて、聞いてなかった。

 メルはその前から魔力が落ちている。もう彼には英雄をさせられない。


 * * *


 アッシュが死んだ。

 こんなの聞いてない。


 * * *


 呼びかけても、姉様は応えてくれない。

 まだ進まないといけないの?


 * * *


 なんで彼女がいたの?


 クリスも怪我をしてしまった。


 もう嫌だ。私にはできない。

 姉様、助けて。


 * * *


 終わった。

 王都に帰れる。


 シアがずっと泣いている。

 アッシュの入ったバッグを放そうとしない。


 皆も、何も話さない。


 姉様はもう大丈夫だと言ってくれた。

 王都に戻ったら、ルイを帰してあげないと。

 アッシュとの約束


 * * *


 ルイを帰してあげるって言ったのに。

 聞いてない。

 なんで? なんで?

 なんでこんな事をするの?


 約束したのに。

 ルイが


 * * *


 メルが死んだ。


 ごめんなさい。

 私にはどうする事もできなかった。


 気が付いた時には、メルは勇者の剣で刺されて、息絶えていた。

 姉様は私に、メルの死体を使ってゴーレムを作れと言った。

 そんな事が出来るわけがない。

 メルは大切な仲間なのよ。

 いくら姉様の願いでも、それはできない。


 ごめんなさい。本当にごめんなさい。


 アッシュも死んでしまった。

 ルイも守る事ができなかった。

 せめてクリスとアレクを助けたい。


 * * *


 姉様は予定通りだと言った。

 でももう、姉様を信用できない。

 どうしたらいいの。

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