76 日記(1)

 今日は皆との顔合わせだった。

 クリストファー王子の事は、以前から良く知っている。知らない人はいないだろう。


 騎士のアレクサンドラは、王子の婚約者なのだそうだ。本当に大丈夫なのかしら。


 冒険者の二人は、やっぱり不思議な組み合わせだ。

 英雄のアシュリーは美人だけれど、あまり口数の多いタイプではないみたい。

 逆にサポーターのシアンは、おしゃべりでなんだか騒がしい。


 今回の勇者も少女だそうだ。ルイと名乗った。

 気弱な雰囲気の子で、メルヴィンに見惚みとれていた。


 メルヴィンにその話をしてみたけれど、どうやら気が進まないみたい。

 まだ旅はこれからなのだし、先ずは皆と仲良くならないとね。


 王子の提案で、互いに愛称で呼び合う事になった。

 こんな事初めてで、ちょっと不思議な感じ。


 * * *


 ラントの町についた。

 時間が早かったので、町中を皆で見てまわった。

 あまり王都の外には出た事がなかったので、色々と物珍しかったし、楽しかった。


 ルイに話し掛けてみたら仲良くなれた。

 どうやら私の事を幼い少女だと思ったみたい。それでもいいけど。

 彼女と趣味が合った様で、話をするのがとても楽しかった。


 夕食は皆でシアが選んだ店に行った。料理もお酒もとても美味しかった。

 ヤマモモのお酒なんて初めてで、欲しいとねだったら、アッシュが買ってきてくれた。意外に面倒見の良い人なのかもしれない。


 * * *


 洗濯なんて、店に出してやらせればいいのにと思ったけれど、そうもいかないらしい。

 驚く事にルイもアレクも洗濯をした事がないという。

 シアが大分手慣れていて、色々と教えてくれた。騒がしいだけの人だと思っていたけれど、そうでもないみたい。

 ルイは勇者だからやらなくていいのに、やたらと張り切っていた。勇者の剣を持っているだけの役割に引け目があるみたい。


 * * *


 知らない町が珍しいのか、夜になるとメルは出掛けているようだ。

 アッシュの事を話したら嫌そうな顔をされた。

 もっと皆と仲良くならないとダメなのに、不愛想な彼には向かないんじゃないのかしら。


 * * *


 いつの間に、剣士たちは皆で朝の練習をしているらしい。

 私たちは部屋で魔力精錬をしているので、今まで気が付かなかった。

 クリスとアッシュは大分打ち解けてきたみたい。


 ルイがハルピュイアを倒せなかった。

 昨日のワイルドボアもやっとの様子だったし、彼女が戦うのは難しそう。


 * * *


 ルイもだいぶここの生活に慣れてきたみたい。

 シアと仲良く話す様子を見て、クリスがホッとしていた。

 真面目な彼に、あの役目は合わなかったのだろう。


 メルは最近はアッシュとよく出掛けているらしい。

 教えてくれればいいのに。メルに聞いても話してくれないし。


 もうすぐ王都に帰る日が来る。

 姉様に会えるのが楽しみ。いい報告もできそうだ。


 * * *


 アッシュとシアが貴族と会うそうなので、彼女たちの服を選んだ。

 シアはともかく、アッシュのセンスは壊滅的だった。今着ている服は全部シアが選んでるらしい。

 アレクに聞いたら、彼女もドレスの事はあまりわからないと言うし。女性騎士とか冒険者って、みんなこんな感じなのかしら。


 せっかく綺麗にしてあげたのに、二人とも中座して帰って来たらしい。

 失礼な事を言われたと、シアがすごく怒っていたんだけれど、何がいけないのだろう。

 他の皆も怒っているようだし、多分人間にしかわからない何かがあったのだろう。


 * * *


 ルイはかわいい。

 あの子にも家族がいないそうだ。

 アッシュも家族がいないと言っていた。


 家族ってなんだろう?

 いないとダメなのかしら?


 でもルイが喜んでくれるのなら、皆で家族みたいになれればいいと思う。



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 今日はルイと部屋が同じになったから、ルイの国のお話を色々と聞かせてもらった。

 この国にはないような話が沢山あって面白かった。


 * * *


 アッシュに手帳を見られた。

 でも誰にも言わないと、言ってくれた。


 クリスの事も知っているのかもしれない。驚く様子はなかった。

 私とメルの事にも気が付いていたらしい。


 シアはアッシュに何か借りがあるようだ。詳しい話は聞けなかった。


 * * *


 アッシュはいつも通りだった。クリスにも何も言ってないみたい。


 ルイはシアの事が好きらしく、こっそり打ち明けてくれた。

 そういう事はよくわからないけれど、応援すると言ったらとても喜んでいた。


 * * *


 ルイは、シアとアッシュの仲が気になるみたい。

 よくわからないけれど、どうやらシアを独り占めにしたいようだ。恋とはそういうものらしい。


 今日もルイに物語を聞かせてもらった。

 ルイの国の話には、魔獣と戦う話もたくさんあるけれど、実際に魔獣と戦う事はないらしい。

 遊びの中で戦うんだって聞いたけれど、よくわからなかった。



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 少々予定は狂ったが、おおよそ予定通りにシナリオを進められている。

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