30 国境の町(2)
◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。帰省先の故郷から王都に向けて帰還中。
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属するAランクの先輩冒険者
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「馬車には乗らないのか?」
「早めにワーレンに着きたいので、別の手段を使います」
そう言って、さっさと町の門をでた。
すたすたと私が先に出て、それを焦ったデニスさんが追い掛ける様子は、人からみたら
いや、この身長差じゃあ親子程にも見えてるかもしれない。普通に並べば私はデニスさんの胸辺りまでしか背丈がないし。
しばらく街道を進み、手頃な林を見つけて獣道を分け入る。
「おい!」とデニスさんが焦ったように声をかけてきたが、「付いてきてください」と歩を進めた。
さほど奥までは行かない、でも街道からは見えない距離で荷物を下ろす。
「何をするんだ?」
「えっと、デニスさん、少し後ろを向いていて下さい」
「?……何でだ??」
「ちょっと見られたくないです ……恥ずかしいので……」
少し目を
まず完全獣化して黒狼の姿になる。だけどこの
ドリーさんの調整のお陰で、いくつかの神秘魔法を魔法石無しで使えるようになった。そのうちの一つ、変姿の魔法を発動させる。
「こっちを向いて大丈夫です」
声をかけて、デニスさんが振り向くと、デニスさんの体に一瞬緊張と警戒が走ったのがわかった。
恐らく獣人の完全獣化を見るのは初めてなのだろう。
さらに巨大化させた今の姿では、体高でデニスさんとほぼ同じくらいにある。ブラックドッグと間違えられてもおかしくない姿だ。
「荷物はしっかりと背に負って固定して、左右に振れないようにしてください。走っててバランスを崩すと危ないので。乗ったらしっかりと掴まって下さい」
そう伝えて伏せた姿勢になる。
「良いのか?」
「……獣人が普通にこんな事をするとは思わないで下さい。特別です。のんびり馬車旅するつもりもないですし。ただ誰かを乗せるのは初めてなので、最初はゆっくり走ります。慣れて来たらスピードを上げますので」
そう言って首も下げてみせると、デニスさんも覚悟を決めてくれたようだ。
流石にこの姿では街道は走れない。独りの時と同じく人には見られないように、森の中を選んで走る。
「本来なら乗せるのはマスターくらいです。獣人は人間よりもプライドが高いので、パートナーと決めた相手くらいしか乗せません」
デニスさんは、最初は馬に乗るように体を起こして乗っていたが、体を低くして乗るように体勢を変えてもらった。
体を起こしていると重心がやや高くなるので、何も乗せずに走るのと勝手が違って走りにくい。加えて、森には木々の枝が張り出していて危なく、自分の身より広い範囲を気にしながら走るには余計な気を使ってしまう。
その結果、デニスさんには私の首に掴まってもらう形になったのだけど……
いくら狼の姿とはいえ、男性にしがみつかれた経験など、
意識すると足元が
「スピードを上げますね」
余計な考えを振り払うつもりで、速度をあげた。
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おまけ
キャラ設定として数値で身長を決めています(話の中では数値で表現するくだりはないので)
デニス… 186cm(メインキャラの中で一番高い)
リリアン… 156cm(メインキャラの中で一番低い)
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