残響と生きるR
かしゆん。
別れと出会い
よくある話かもしれない
ふられてしまっただなんて
まぁ頑張って生きろみたいなこと前にも言われた
し、私も言ったような気がする
だけど
違うんだ
私にはあの人しかいなかった
本当だ、本当に私は運命の人と出会ってしまったのだ
でも違うのかな、振られちゃったんだから
人を恋愛的な意味で好きになるのなんて初めてだったし
正直最初はなんだこいつと思っていた
私が勉強が難しくって悩んでいると解き方を教えてくれた
問題を私ができたら自分のことのように喜んでくれた
転びそうになったらそっと支えてくれた
足をくじいて痛くて動けないときは負ぶって保健室まで連れてってくれた
優しくてきれいな笑顔
驚いた時に見せるちょっとかわいい顔
私にとって最高のイケメン
ほかの女子が全然興味を示さないことにちょっと安堵しながらちょっと寂しかった
そんなことさえ思ってた私は・・・一体何だったんだろう
まだ自分の彼氏になったわけじゃないのに、私が好きでも彼はそんなでもなかった
その事実はしょうがないかもしれない
別に特別に突出してるわけでもないし、特に取り柄がなかったから
それでもショックだった
もうやる気が出ない、そうだ
彼が私のことを好きじゃないんだったらそれはしょうがないとして
私は生きてても意味ないんじゃない?
「死のう」
そうだよ
死のう、屋上から飛び降りるでもして
彼の最後に言った言葉は
「俺、すす好きな人いるんだ。ちょっと今は待っててくれ、ごめん」
がちがちに緊張してほおをちょっと赤く染めて
言って仕舞った!というような顔をしていた
私が勝手に好きになっただけだけど
やっぱりショックだったなぁ
屋上に上ろう
もう今は怖いものなんてない
みんな幸せそうな顔で笑っている、今日を精一杯楽しんでいる
私もそうだったなぁ友達と一緒に遊んで笑って・・・
「楽しかったなぁ・・・」
いやいけない、確かに楽しかったけどそれは彼がいたからで
彼がいないから今の私にとってはそんな記憶足止めとしては意味ない
屋上だ、屋上・・・
「ほい」
と、軽く柵を超えて
地面の淵に立つ
足が震える、意外と怖い
「死にますか?」
「だれ!」
さっきまではここに誰もいなかったはず
何で急に声が聞こえたの?
というかあの紳士服を着た老人は誰なの?
「学校の先生じゃないでしょ!なんでこんなところにいるの!?」
「まぁ、落ち着いてください。あなた、これから死にますよね」
「なによ、あんたには関係ないでしょ!ふざけてないでどっかに行ってよ!」
あたしの気持ちも知らないで
何ふざけたこと言ってんの
「あなたは、本当に死にたいって思ってますか?本当はいきたいと思っていませんか?」
「な、なんで」
こっちに来てるの?
柵があって普通の老人じゃこんな一瞬で来れないはずなのに・・・
「何でこんなに早くこれたのかって顔してますねぇ、その答えは後程教えて差し上げましょう。ではもう一回、本当に死にたいですか?」
「死にたい!大好きな人に振られて、勝手に好きになったのは私だけど!それでもあんなに優しくされて好きにならない人なんていない!私は・・・わ、たしは・・・」
「そうですかそうですか。あなたには家族がいますよね?その方たちのことは全く考えないのですか?昨日まで楽しそうに笑っていた娘が今日、自分の意志で死ぬ。それに直面した時の家族の気持ち。そんなことは」
言葉に圧が・・・ものすごい重い圧がかけられていた
怖い、何でこんなよぼよぼの老人に諭されて威圧されないといけないの?
あーもういい飛び降りてやる
「飛び降りますか?ご家族の気持ちは考えずに?自分が死んで悲しんでくれる人がまだたくさんいるのに、世界があなたを捨てたわけじゃないのに?」
「うるさいうるさいうるさい!あなたにはわからないんでしょ!本当に、本当に好きだった人に振られる気持ち!・・・ウゥッ!」
やばいこの人はやばい本当に
眼光が刀よりも鋭い、心が委縮してしまうほどに
目がこの世の終わりみたいに深くて暗い色だ・・・!
「そんなに死にたいんですね。好きな人が無残に殺されたわけでもないのに、振られただけで自分は世界から嫌われていると特別扱い。そうですか、いいでしょう。そんなにお望みなら・・・殺して差し上げますよ」
ドスの効いた低くて重い声
それと同時に後ろによろける体
足をつく所が、ない
あれ、私死ぬの?
いや死にたいって言ってここに来たけどさ
本当にそう思ってたけどさ
あの人の言ったことをふと思い出す
好きな人が無残に殺されたわけでもいない
悲しんでくれる人がまだいるのに
家族が、友達が、いるのに・・・
小さいころからの記憶が浮かび上がってくる
これは家族で遊園地に行ってるシーンだ、あの時はたのしかったなぁ
もう一回行きたい・・・行きたい?
これは最近友達といったカラオケだ、音痴でも気分よく歌って
もっとたたくさん歌いたいって思った記憶だ
これは、・・・叔母さんが亡くなったお葬式だ
子供がいないからといつも優しくしてくれた叔母さんが亡くなった時はすっごく悲しかった、先に一人でいかないでと思った
あれ?死にたいって思ってたはずなのに
もっと思い出を作りたい
私がいなくなったら悲しんでくれるひとがいる
大切な人が死んだらものすごく悲しかった
お父さんとお母さんは私を大切に思ってくれてる、とおもう
私が死んだら、また叔母さんの時と同じ悲しみを味わうとすれば?
いや・・・・・・・・・
嫌だ、死にたくない
何で私はあんな所に行って仕舞ったんだろう
今更後悔なんて遅すぎるけどさ
私は好きな人に振られただけで私の人生をあきらめた
未来はまだあったのに
こんな願いをするのは傲慢だってわかってるけど
一度は確かに私が望んだ死だけど
嫌いとか言った世界だけど
もし奇跡が起こるなら
「生きたい・・・」
「そうですか」
なんで
なんであのおじいさんの声が?
死んじゃったの?私
そりゃあそうかあの高さから落ちて生きていられるわけないよね
ごめんね、皆・・・ごめんね・・・!
「ほらね、言ったでしょう?本当はいきたいと思っているんじゃないのかと」
「え?」
死んだんじゃないの?
何で無傷なの?死んでなくても激痛ぐらいは来るはずじゃ
あ、
「お姫様抱っこされてる・・・」
「よく聞きなさい。私は説教臭いことが嫌いです。だから、簡潔に言います。
捨てる神有れば、拾う神有り。心に叩き込んでおいてください」
では、と言ってそのままどこかに行って仕舞った
お礼の一つも言えなかった
あの人は何なのだろう、普通屋上から形の変わる47キロが落ちてきたらうけとめきれないはずなのに
拾う神有れば捨てる神有り、か
確かにそうなのかもしれない
わたしのことが別に必要ない人もいるし
わたしのことが必要な人がもしかしたら、いるかもしれない
ん?私が好きだった彼が走ってくる
なかなか必死な顔だけどどうしたのだろう
「ご、ごめん!さっきは、ちょっと動揺しちゃって、君のことを振っちゃったけど!俺も好きなんだ!ごめん、ホントに、意味の分からない照れ隠しというかかっこの付け方というか・・・ごめんね!ただ、俺も好きです、こちらこそ付き合ってください!」
なんだ、照れ隠しだったのか
へへ・・・
そうやってはにかんでいった
「喜んで!」
ありがとうおじいさん
またいつか会えますように
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