第六話① 初めての敗北
それからというもの、カイとベレトはことあるごとに衝突していた。
日中、二人は顔を合わせる度に「バカ」「アホ」と互いへの罵倒を始め、そこから殴り合いの喧嘩へと発展する流れになっていた。ベレトは、外見からは想像できない強い腕力の持ち主であった。その攻撃的な性格も相まって、カイの方も全力でぶつかっていた。実際の喧嘩では、カイは彼女からの攻撃を防ぐのに精一杯で、反撃に出ることが出来ず、最終的にボコボコにされることが多かった。ハヤテが二人を諌め、その様子をエミールが呆れながら見守り、ブラウは二人の喧嘩に意味を見出せず「理解できない」と呟く、という一連の流れが出来ていた。
また、授業では課題の点数を、食事の時はどちらがより多く食べられるかを競い合った。
カイは、ベレトに強い対抗意識を持ち、「ベレトに勝って、『ギャフン』と言わせてやる!」と意気込んでいた。しかし同時に、こんなことがずっと続くのかと思うと、少し疲れを感じていた。
しかし、その疲れが吹き飛ぶような出来事が起こった。
それは、西の塔内の修練場で行われる『戦闘訓練』の授業でのことだった。
「今日の授業は、継承者同士による模擬戦を行うのでああある!!!」
<七星騎士団>の一人、<武人>ミザールの声が修練場内にこだました。
ミザールは、巨大な斧を使った豪快な戦いをする、騎士団の主戦力の一人であった。彼自身も、情熱的かつ細かいことは気にしない豪快な性格の持ち主だった。筋骨隆々のたくましい肉体は、二メートルは超えており、赤みがかった茶色の髪と目は、武人としての彼の情熱を表しているようだった。
「これまでは体力作りのための運動を中心に授業をおこなってきたが、今回は! 実戦を想定して!! 一対一の模擬戦を行うのである!!!」
(も…模擬戦!?)
継承者たちは、これまでのように、ランニングなどの運動を行うと思っていたため驚いた。しかし、カイとベレトは同時にチャンスだと考えた。
(もしかして、ベレトをギャフンと言わせられるんじゃ……!?)
(あのうるさいヤツをブッ飛ばせるかもしれないな……よし)
「では、戦う意思のある、勇敢なるものは誰であるかな!?」
ミザールは、さっそく希望者を募った。
「はいっ! はいっ! 俺いきます!」
カイはすぐに手を挙げた。
「おお、カイ・ソラリアム! なんと勇敢であるか! では、カイと戦う、同じく勇敢なるものは誰であるかな!? ……おお!!」
ベレトも、彼とほぼ同じタイミングで手を挙げていた。
(ベレトキタ!)
ミザールは、自ら進んで戦う意志を見せた二人を称賛した。
「おお、ベレト・ゴエティウス! お主もまた勇敢であるな! では今回は、カイ・ソラリアムとベレト・ゴエティウスの両者による、模擬戦を行うのである!!」
(うーし、ぜってー勝ってやるっ!!)
(ぜってーブッ潰す)
こうして、カイとベレトの模擬戦が行われることとなった。
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