ワンナイトで求めるものをはき違えてる

闇野ゆかい

第1話カノジョのトリコに早くも陥っていた

「硬いですよぅ〜おねーさん。もっと柔らかくですってぇ〜」

「……てるって。もう……」

 正面の椅子に腰を落ち着かせていた女子高生が、腰を浮かせテーブルに身を乗りだした体勢で私の両頬をひとさし指で突っついていた。

 からかいがいのある相手だと認識している緩みきった笑みを浮かべながら、拷問を続ける藤野伊栞とうのいしおりに抗えずにされるがままだった。

 現在いまの状況を会社の同僚や先輩に見られでもしたら、会社での評判は危うくなる。

 確実に、だ。

 歳下に、それも女子高生にされるがままになっているだなんて……信用が下落してしまう。

 硬い硬いというが、普段から表情筋を動かしてないのだから仕方がない。

 仏頂面なやつに声を掛けてきたのはどこのどいつだ、と毒づきたい衝動を一心に堪える。

 彼女の顔だちは整っており、軽い化粧で更に美人になっている。


 あぁあーもうぅっ羨ましい、栞はっ!!


 肩を露出させ、鎖骨まで見せるなんて栞は本当に……


 二日前の出逢い——彼女と身体を重ねて、湧きあがる欲求に冒されていく。

 病魔のように身体を侵蝕し、冒していくある感情に抗えないでいるのを認識せざるを得ない。


 踏み越えてはならない一線を踏み越えた瞬間から、私は堕ちていったのだった。


 彼女に、藤野伊栞にいざなわれたあの瞬間ときから足場を踏み外していた。いや、踏み外されたのだ。彼女によって。




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