放置されすぎた女がこの世に現れて…… 〜ねえ? 貴方? どうして私を放置するの?〜

山村久幸

放置されすぎた女がこの世に現れて…… 〜ねえ? 貴方? どうして私を放置するの?〜

「こんにちは。モンゴウイカリング様……。いえ、こっちの世界では花山はなやま大志たいしさんというのね?」


「え? え? まさか、君、あの『千華の花園せんかのはなぞの』の初期キャラ、梅野うめの千華ちかちゃん?」


「はい。そうですよ。梅野うめの千華ちかです!」


 男は目を疑った。まさか放置ゲーム『千華の花園せんかのはなぞの』の初期キャラが目の前に現出しているとは思わなかったからだ。でも、なんでゲームの世界の人間がこっちに出てきたんだ? 男、花山はなやま大志たいしは不思議で仕方がなかった。


花山はなやまさん? しばらくは貴方の世界で貴方と一緒に過ごしますわ? だから……、どうせなら、い・け・な・い・あ・そ・び♡をしませんか?」


「い、いけないあそびって?」


 梅野うめの千華ちか花山はなやまを誘惑するように流し目を送りながら、語りかける。自身の胸元を少しずつ露わにしながら……。


 花山はなやまはそれを見て、思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまう。そして、自身の下半身がたぎり初めていることを自覚してしまい、顔を赤くする。


「あら? 我慢しようとしても我慢できるのかしら?」


 それを目ざとく見つけた千華ちか花山はなやまのズボンのファスナーに手をかけ……。


 ジジジジジとファスナーが鳴り、カチャカチャとベルトのバックラーが鳴り。シュルシュルと衣擦きぬずれの音がする。


 あっという間の早業はやわざでポロンと花山はなやまの立派なこんを露出させた千華ちか


「え! え! うそ! そんな遊びもあるの?」


 花山はなやまはあまりの早業はやわざに驚きを隠せない。


 パクリッとそのこんくわえる千華ちか。ジュッポジュッポと顔を前後に動かしていくとこんと唇がこすれ、唾液が泡立つ音がする。


「あっ! き、気持ちいいっ♡」


 千華ちかの口を使った巧技に一瞬にして骨抜きにされた花山はなやま


 ジュッポジュッポ。ジュッポジュッポ。ほらほら、千華ちかはしきりにこんを唇でこすっていく。


「あっ! あ! あああああああああああああっ!」


 ピュルピュルルルル。ああ、どうやらこんは仕込みこんだったようだ。

 ドクドクドクと仕込みこんから流れ出る粘っこいもの。


 千華ちかの巧みな技に果ててしまった花山はなやま千華ちかは満足そうに舌を出し、花山はなやまの種を見せつけた。


 ――ゴクリ。


「うふふふふふ。美味しいわ♡ ねえ? 花山はなやまさん? 今日もこれからもっと激しいこともするし、しばらくは毎晩イケナイことをできるわ? だから、毎日早く帰ってきてね?♡」


「は、はいぃいい!」


 花山はなやまの種を飲み込んだ直後の魅惑あふれる顔でそうお願いされたら、『はい』か『Yes』か『喜んで』か『ありがとうございます』しか言えない。


 ――シュルッ。シュルルルル。


 そして、このすぐ後に千華ちかは全ての服を脱ぎ捨て……、花山はなやまの服も脱ぎ捨てさせ……――。


 千華ちか花山はなやまから大事なものを奪ってしまったようだ。



「ねえ? 大志たいしさん? 今日はどんなプレイが良いかしら?」


千華ちかちゃんにおまかせするよ。千華ちかちゃんならいつもいつも俺を最高の快楽に導いてくれるから!」


「あら! 嬉しいことを言ってくれるのね? 大志たいしさん、期待していてね?♡ じゃあ、ってらっしゃい♡」


 あれから1月とうとしている。名前呼びを許された花山はなやま……、大志たいしは昨日も千華ちかに骨抜きにされた。毎日毎日、骨抜きにされて、仕事に支障がないのであろうか? そう心配の声も上がろう。でも、千華ちかは毎日毎日、朝晩、秘薬を食事に仕込んでいる。だから、大志たいしの体調に問題はないのだ……。……多分。うん。問題ないったら問題ないのだ。心配は無用!


 千華ちかのお見送りを受けて、デレッデレの表情で出社する大志たいし。会社の同僚には「今、すっごい美人と同棲・・・・・・・・・しているんだ!」と自慢を重ねる大志たいし可笑おかしいね? なんで、個人名出せないんだろう? うん? 細かいことは気にするな?



 少し時は進む。大志たいしがどうやら仕事から帰ってきたようだ。


「おかえりなさい! た♡い♡し♡!」


「ただいま! ち♡か♡!」


 チュッと軽い口づけ。

 レロッ、レロレロと舌を割り入れ。

 息苦しくなり口が離れた瞬間にチュッチュとまた軽い口づけ。


 ここ数日は大志たいしが帰ってきたら、こうしてディープキスから始まり……、そのまま風呂場へなだれ込み1回戦目が始まるというのが定番である。

 だが、今日は千華ちかがいつもと違う表情だ。まるで、この世の終わりと言わんばかりの表情だ。何を思いつめているのであろうか?


「ねえ? 大志たいし? 明日、土曜日でしょ? それに明日、私が来て1ヶ月よ。その夕方……、大事な話があるの……」


「そうなのか? 千華ちか?」


「そうなの……。だから、今日は夜が明けるまで楽しみましょ?♡」


「あ、ああ♡」


 まあ、とりあえず、千華ちか的には前振りはOKだったのだろう。めくるめく夜はこれからだ……――――。



 夜を超え、雀がさえずっても、大志たいし千華ちかの行為は止まない。結局、行為が終わったのは8時過ぎであった。


 カァーーアアア。カァーーアアア。カァーーアアア。ああ、やけにカラスがうるさい。


 〽〽チャーーンチャンチャ。チャンチャンチャンチャン。チャンチャンチャンチャンチャーン。チャーンチャンチャン。チャンチャンチャンチャン。チャンチャンチャンチャンチャーーン。チャーンチャンチャン。チャンチャンチャンチャン。チャンチャンチャンチャンチャンーーン。チャンチャンチャンチャン。チャンチャンチャンチャン。チャンチャンチャンチャンチャーーン。


 『七つの子』のチャイムが外から流れてくる……。


 ああ、どうやら寝て起きたら17時を過ぎたようだ。朝チュンを通り越して、ゆうカァである。


「おっはよ? おっそよ? こんばんわ? た♡い♡し♡!」


 チュッと口づけをかわす千華ちか


「うん? ああ、もう夕方か……。千華ちか


「ねえ? 大志たいし? 貴方の会社の名前、覚えているかしら?」


「え? え? ええっと……。え! なんでだ?!」


 千華ちかからキスで起こされた大志たいし。唐突に受けた質問が答えられなくって驚愕するより他ない|大志。


「ねえ? 貴方のお父さん、お母さんの名前、覚えてるかしら?」


「え? え? え? ………………っ! どう言うことだよ! 千華ちか!」


 まさか最も身近な存在たる両親の名前すらも答えられなくなったという事実に狼狽ろうばいする大志たいし千華ちか魅惑みわくの笑みを浮かべるだけ……。


「うふふふ。ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。ははははは。はーっははははははは!」


「何がおかしいんだ! 千華ちか!」


 突如として大声を上げて笑い始めた千華ちか大志たいし激昂げきこうしてしまうが、そんなことは意に介さない千華ちか


「ねえ? 一緒に私の世界に一緒に行きましょう? 待っているの、私だけでないの……。何百人といるのよ? 大志たいしのことを待っているのよ? ねえ? 酒池肉林・・・・よ?」


 千華ちか大志たいしの胸板に手を当てて、自身のいた世界へと誘惑する。しかし、懸念材料が一つ……。


「なあ? 断ったらどうなるんだ?」


「うふふふ? 貴方の命はなくなるわ? だから返事は『はい』か『喜んで行かせてもらいます』しかないのよ?」


 そう。断ったら大志たいしの命はない。事実上の詰み・・である。となると答えは一つしかないのだ。


「喜んで行かせてもらいます……」


 大志たいしは余り喜んでない声でその言葉を発した。


 こうして大志たいしは『千華の花園せんかのはなぞの』の世界に千華ちかと共に向かった。結果として、大志たいしがいた世界に大志たいしがいたという記録、記憶は一切消えた。それは千華ちかの手によって……。


 大志たいし花山はなやま大志たいしと言う名前で『千華の花園せんかのはなぞの』の世界に過ごすことを許された。そして、毎朝毎昼毎晩、その世界の女ととっかえひっかえというただれた生活をして、360日……。



 その360日目もまたただれた生活であった。ただ、ひとつ違うことがあったが、それを行為の最中に大志たいしが知ることはなかった。


 大志たいしが目覚めると……、独房の中であった。独房の前には千華ちかがいた。


「おい! 千華ちか! どういうことだ!」


「ねえ? 貴方? どうして私を放置したの? 私たちを放置したの?!」


 激昂する大志たいし千華ちかは声を掛ける。いや、詰問するという方が正しいだろうか?


「何のことだ?!」


「『千華の花園せんかのはなぞの』のことよ?」


「それはそうすれば良いからそうやっただけだ!」


 千華ちかの質問に答えにならない答えを返した大志たいし。それに満面の笑顔を見せる千華ちか


「じゃあ、私たちも大志たいしの事をしばらく放置するわ! だって、そうすれば良いんでしょ? 安心して? 性欲処理はその壁にナニを入れればやってくれるわ! 食事も壁から出てくるわ! だから、安心して放置されてね?」


 千華ちかはそう言って、独房の前を去っていった。


「おい! おい! 千華ちか! 千華ちかぁあああ! 悪かった! 謝るから! 謝るからぁああ! 出してくれぇえええ!」


 今更、後悔して謝ったところで……、もう……遅い…………。余りにも罪を自覚するには遅すぎたのだ。


 ねえ? 皆さん? 『放置ゲーム・・・・・だからと言って放置しすぎる・・・・・・・』と痛い目を見るかも知れませんよ? だから、気をつけてくださいね?


 Fin

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