第133話 新生
リリーシアと文官達、さらには二百数十名程の移民と第二領地を得て、一気に規模が大きくなったスタトリン。
しかも、第二領地が町としての第一段階が完成したその日に、第一領地の方にも土地が確保されていた為、リンの公衆浴場の受付場と公衆トイレの出入り口が作られ…
さらには、井戸とは別にリンが浄化した水の供給設備まで作られ…
規模が大きくなったのみならず、町全体の利便性が大きく向上することとなった。
住民税を施行する、と言う町の代表――――ジャスティンとエイレーン――――の言葉。
その言葉には、それを口にした二人もさすがに反論が多く出るのではないか、と思っていたのだが…
予想に反して、反対意見はまるで出なかった。
それもそのはず。
今のスタトリンは、右肩上がりで経営が上向きになっている冒険者ギルド スタトリン支部、ジャスティン商会、ジュリア商会の方で、積極的な人員の募集をしており…
安定した仕事がなくて、日々の生活に苦しんでいた人が大きく減り、町全体の生活レベルが向上していっている。
加えて、冒険者も身入のいい依頼が多くなっており、生活が非常に安定してきているのだ。
しかも、第二領地の方でも新たな仕事が豊富にあると聞かされ、なおのこと反対意見が出ることはなかった。
さらに、その住民税にリンが作った公衆トイレや水の供給設備の利用料金が含まれていると聞かされ、それには住民全員から喜びの声が上がっていた程。
自分達の命も未来も救ってくれた稀代の英雄に、少しでも恩返しがしたい住民達からすれば、これでやっとリンに恩返しができる、となり、むしろ喜ばない理由の方が皆無と言える程だった。
何より、リンが町の相談役となり、町の困りごとをリンが解決してくれること。
リンへの依頼の報酬も、住民税に含まれること。
それらを聞かされて、住民達は町全体に響き渡る程の大歓声を上げて喜んだ。
その為、人によっては住民税以外に税金はないのか、などと質問してくる始末となり…
リンの為に目いっぱい稼いで、いっぱい税金を払って…
その税金から、リンの活躍に相応しい報酬をいっぱい受け取ってほしい、と願う住民が圧倒的多数となってしまっている。
「ニノちゃんニノちゃん!」
「?どうしたんですか?ランちゃん?」
「今度できる、スタトリンの住民税なんだけど」
「ああ…できますよね。でも、それが?」
「あーし達が税金い~っぱい払ったら、それだけリンちゃんがいっぱいもらえるってことよね?」
「!そうですね!じゃあ…」
「そう!リンちゃんに、あーし達からい~っぱい恩返しできるってことよね!」
「ですです!」
「じゃあさじゃあさ!エイレーンさんにお願いして、あーし達い~っぱい住民税払おうよ!」
「やりましょう!エイレーンお姉ちゃんにお願いしないと!」
「うん!」
「リン様に恩返しさせて頂けるなら、私達もいっぱい住民税払います!」
「いっぱい住民税払って、いっぱいリン様に恩返ししたい!」
孤児院で働くニノ達四人などは、支出よりも収入の方が大きい為貯金もかなり増えていることもあり…
常日頃からの感謝の気持ちを、いっぱいリンに受け取ってほしくて…
その思いから、四人全員住民税を多く払って、少しでもリンに報酬として入るようにと、誓いを立ててしまう。
「おい、聞いたか!?」
「聞いた聞いた!!」
「住民税払えば、そこからリン様に報酬として還元されるんだよな!!」
「ならおれ達、いっぱい住民税払って、少しでもリン様に恩返しさせてもらおうぜ!!」
「おお!!」
「少しでもリン様に、オレ達の感謝の気持ち、受け取ってほしいよな!!」
ジャスティン商会預かりとなっている、町の護衛部隊の面々もこのような状態であり…
誰もが住民勢を少しでも多く払って、リンに少しでも自分達の感謝の思いを受け取ってほしいと、やる気に満ち溢れている。
第二領地が完成し、新体制となって数日が経ったスタトリンは、リンへの還元の為に仕事にしっかり取組み、少しでも多く稼いで少しでも多く住民税を払おうと言う…
そんな住民が多数いる状態と、なっている。
――――
第二領地ができてから、一週間が経った。
「この宿、いいなあ!」
「メシはうめえし、従業員も美人多いし!」
「建物全体はもちろん、部屋一つ一つすっげえ綺麗にされてて、居心地いいし!」
「あたしみたいな女の一人旅でも、安心して泊まれるし!」
「お風呂もトイレもあるし、両方共めっちゃ綺麗だしね!」
「おまけにこんなに高級そうなのに、結構安いしね!」
「冒険者ギルドの分室も近いから、依頼の受注も完了報告もすぐできるのもいいよね!」
「しかもこの町の依頼、報酬がいいの多くて!」
「それに戦闘系以外でも依頼めっちゃあるし!」
「ねえ、しばらくここを拠点にして、思いっきり稼いじゃおうよ!」
「そうしよ!」
第二領地の方では、リンが建築し、オーナーとなっている宿屋が冒険者や商人含む旅人達に大絶賛され、瞬く間に売上は爆上がりしていっている。
トータルの部屋数が百を超えており、しかも一室一室が割と広く作られている。
しかもリンが【風】属性の魔法を付与した、空調の魔導具を全部屋設置しているので、常に快適な気温と清浄な空気を保つことができる。
おまけに全室風呂とトイレが完備されており、さらにそれとは別に大浴場もあるので、風呂に関してはどちらを使ってもいいようになっている。
おまけにチェックイン時に、客の血液か髪の毛の一本を使って、リンが生成した魔導具となるカードキーに客の情報を登録することができ…
宿泊期間中は従業員以外は登録された客でないとその部屋が開けられないようになっている為、女性一人の宿泊もかなり安心となっている。
もちろん、チェックアウト時にはその登録情報は破棄されるので、カードキーは再利用が可能となっている。
料理は高レベルの【家事・料理】の技能持ちの従業員が、リンが生産している食品、食材を使って徹底的に味も見た目も追及しているので、今のところ味も見た目も絶品と評されている。
しかも宿屋の資材、金銭、食品など全てリンの収納の魔導具で管理できる為…
料理はあらかじめ作り置きしておいて、いつでも出来立ての状態で出すことができるし、剃刀や石鹸、貸タオルなどのアメニティ関連もすぐに用意することができる。
その資材なども全てリンが提供してくれるし、宿屋の中で使う魔道具も全てリンのお手製。
魔道具に必要な魔力も、常時リンの魔力を充填しているので、従業員の労働力以外での、コストらしいコストはほぼないと言っていい。
「嬉しい…今日もこんなにお客様に喜んで頂けて」
「リン様が作ってくださったこの宿屋の素晴らしさを、もっと多くの方にお伝えしましょう!」
「その為にも、もっとお客様に喜んで頂けるサービスも考えていきましょう!」
「お料理も、これはどうかな?と言うのが出てきましたから、また試食して頂いてもいいでしょうか?」
「いいですね!ぜひ!」
「その時は、リン様にもご試食頂きましょう!」
「リン様のおかげで、私達こんなにも素晴らしい職場を頂けて…」
「宿屋での賄いを頂けるし、資材も希望すればある程度は持ち帰らせて頂けるのに、お給金は凄く多くて…」
「しかもジュリア様とイリス様が税金の天引きまでしてくださってますから、わたし達が税金を納めに行かなくてもいいなんて…」
「もっともっとリン様にお喜び頂く為にも、この素晴らしい宿屋をもっともっとアピールしていきましょう!」
「はい!」
「頑張ります!」
しかもこのように従業員全員が、この宿屋を本気でリンの為に、国内最高峰の宿屋にしてやろうと本気で思い、常に全力で最高のサービスを追求している為…
そんじょそこらの宿屋では太刀打ちなどできない程に接客対応もサービスもよく、泊まったことのある者全てが大絶賛している状態となっている。
おまけに高級感もあって料理もサービスも接客対応も非常にいいのに、それでいて設定されている料金は決して高くなく…
稼ぎの少ない低ランクの冒険者でも一~二泊程度なら十分に宿泊できるレベルとなっている。
もちろんここも町の護衛部隊の立ち寄り場所となっている為、防犯に関しても非常に高レベルとなっている。
魔の森に最も近い町とされているスタトリンで、冒険者稼業で稼ごうとする冒険者はもちろん、スタトリンが栄えていると言う情報を入手し、商機を掴みに来た商人達も非常に満足できる、最高峰の宿屋となっている。
この宿屋の評判も実際に宿泊した者達の口コミがじょじょに広がっており、それだけでスタトリンに訪れる者が増えてきている。
そのおかげでこの宿屋はもちろん、ジャスティン商会の新店舗やジュリア商会の新店舗、そして冒険者ギルド スタトリン支部分室の売上も相乗効果で大きく伸びている。
人族にとって、魔の森がすぐそばにある超危険地帯と称されてきた町なのに、実際に来てみれば万全に近い状態で安全が保証されており、しかも大衆浴場、公衆トイレ、水の供給設備など、公共の設備も非常に充実していて、普通に住むにも問題ないばかりか高い利便性が期待できる程のレベル。
「この森、ケア草がすぐ見つかるわ!」
「うそ!マナケア草もこんなにあっさり見つかるなんて!」
「食べられるキノコとか、果物とかもすっごく多いし!」
「採取依頼の報酬もいいし!」
「ここなら、いっぱい稼げるね!」
実際に住むのも、この宿屋で暮らしてもいいと言える程だし…
分室の方でなんと住居の相談にまで乗ってもらえる上に、仕事はいくらでもある為、稼ぎも十分に見込める。
しかも近辺の森には、リンが普段からフレア達精霊娘にお願いして、日に一回は森に自分の魔力を供給してもらっていることもあり、森の恵みとなる植物類も非常に豊富で採取系の依頼も非常に多くなっている。
「おい!ボアだぞボア!」
「こいつは逃せねえ!」
「あいつ一匹でかなりの報酬になるし、素材の報酬もいいからな!」
「魔物は多いけど、下位の魔物しかいねえから安心して討伐に出られるな!」
「ここはマジで稼げるぜ!」
「マジでここを拠点にするの、アリだな!」
その影響で魔物も多く生息しているのだが、いるのは冒険者ギルドで害獣指定されている下位の魔物ばかりなので、討伐系の依頼を主としている冒険者の旨味も大きい。
しかも素材としての価値がないに等しいゴブリン、あまり有用な素材にならないウルフはともかく、肉が美味な為食材としての価値が高いボア、そして森を生息地とする牛の魔物であるフォレストブルは別途で討伐依頼があり、その報酬も高めに設定されているからなおさら。
ボア、フォレストブルの生息地帯とスタトリンの第二領地が非常に近く、討伐した魔物の持ち込みは解体せずそのままでもいい為、鮮度をあまり落とすことなく持ち込むことが容易となっている。
その為、冒険者にとっても非常に住みよい町となっている。
何より、このスタトリンに住む者全てが、町の者に対してはもちろん、外から来た者にもとにかく親切。
なので、とにかく安心感しかない為、スタトリンへの移住を真剣に考える者も増えていっている。
「リン様の農場は本当に凄いのじゃ!」
「リン様がお作りくださった肥料の効き目がとんでもなくて、作物がすくすくと育ちよる!」
「早いものなら、植えてから一日もあれば収穫できるからのう!」
「おまけに、リン様がお作りくださる農具の使いやすいこと使いやすいこと!」
「しかも、リン様が常にこの農場の土壌に魔力をお注ぎくださるから、土壌の状態も常に最高じゃ!」
「しかも今は冒険者が多いから、専属秘書様経由で依頼を出せば森で家畜にできる獣や魔物を捕まえに行けるし!」
「家畜も今の時点で牛が十頭、羊が八頭、豚が十四頭、鶏が二十二羽もいるからな!」
「これだけいれば、ミルクも羊毛も卵もかなりの量が期待できるな!」
「こんなに楽しく仕事ができる農場で勤めさせてもらえるだけでもありがたいのに…リン様はわし達に下さるお給金まで、とても多いのじゃ…」
「リン様の大恩に少しでも報いるためにも、この農場でもっともっと作物を育てて、少しでも多くリン様に献上させて頂くのじゃ!」
「みんなで、頑張りましょう!」
そして、リンが所有する農場では、技能【生産・農業】を持っている移民の作業者達がとても楽しそうに農作業に勤しんでいる。
第二領地の面積の約五分の一を占めるその農場では、リンの魔力を常時充填し、それを土壌に注ぎ込む魔道具が設置されているので、常に土壌は最高の状態を保つことができるようになっている。
しかも、リンが生成する、最高品質のマダラ草を使った肥料もいくらでも使うことができ、リンお手製の農具も当然のように支給される。
その農具が非常に軽くて使いやすく、それでいて頑丈なので作業者達の身体の負担もかなり少なくなっている。
さらには、森に住む獣や魔物を家畜として確保しにいく時も、討伐系の依頼をメインにしている冒険者に、ジュリア、イリス経由で依頼を出すことができるので、その依頼を受注してくれた冒険者と共に森に出ることができる。
それを利用して、作業者達は急ピッチで家畜も集めており、今の時点でそれなりの数が揃っている。
しかも、家畜用の飼料もリンが生産している、栄養価満点の非常に上質なものをいくらでも使えるので、家畜も大喜び。
当然、リンが生産した資材を使うので、この農場にもリンの収納の魔道具が設置されており、作業に使う器具や資材などは全てそこで保管しているし、農作物の収穫にも収納の魔道具を使っているので、トマトのようにつぶれやすいものや卵のように割れやすいものを運ぶリスクも全くない。
水に関しても、公共の水供給設備とは別に、農場専用の水供給設備が設置されているので、必要な時にいくらでも水を使うことができる。
第二領地自体がリンの結界に護られているのだが、それとは別に農場全体がリンの結界で護られているので、防犯対策も万全の状態となっている。
この農場で働いている者達は全員、この農場のすぐそばに住居を構えているので、行きたい時にいつでもすぐに農場に行って作業できるようにしている。
収穫物や物資の管理などは全てジュリアとイリス、そしてリリーシアの文官達が担ってくれている為、作業者達は心置きなく農作業に従事することができている。
大好きな農業を心置きなく、しかも好きなだけ取り組むことができる、まさに天国のような職場。
なのに収穫した作物を希望すればある程度持ち帰ることもできるし、にも関わらず給金は平民の一月の生活を、特に制限せずに普通にしてもお釣りが出る程多い。
そんな職場を与えてくれたリンへの忠誠心と敬愛心は日に日に増していく一方。
彼らは、少しでも多くの農作物を収穫し、少しでも多くリンに納めることが生きがいにすらなっている。
「リン様!リン様の宿屋が凄まじい勢いで売上が伸びてます!」
「百以上も部屋があるのに常に満室ですし、宿泊頂いたお客様には大絶賛して頂けてます!」
「リン様の農場も、できて間がないのに凄い勢いで収穫物が増えていってます!」
「家畜の数も順調に増えてますし、ローテーションで様々な作物を作業員が育ててくれてますので、リン様の収納空間に凄い勢いで作物が増えていってます!」
「どちらの職場でも、従業員はとても喜んで、幸せそうに仕事ができているそうで、いつもいつも喜びの報告が来ています!」
「スタトリンへの移住希望者も右肩上がりに増えていて、第二領地の分室に希望者が殺到しているそうです!」
「冒険者ギルド スタトリン支部全体の売上も、ジャスティン商会とジュリア商会の新店舗の売上も、破竹の勢いで伸びていってます!」
新生スタトリンの至る所から、こうした喜びの報告が届いているのを、ジャスティンとエイレーンはもちろん、専属秘書であるジュリア、イリス、そしてリリーシア達第二領地の代表からひっきりなしにリンの方へと報告が来るようになっている。
「リン君!やはり私の目に狂いはなかったよ!君はまさにスタトリンの英雄であり、救世主だよ!」
「リンちゃん!スタトリンに住む人達がこんなにも喜びと幸せでいっぱいになれるのは、本当にリンちゃんのおかげだよ!」
「リン様!私のみならず、こんな私についてきてくれた民達までもお救いくださって、本当にありがとうございます!私…私…もう毎日が幸せでいっぱいです!」
もうすでにリンの拠点での生活に切り替えたジャスティン、リンの拠点で暮らし始めたリリーシア、そしてエイレーンが、普段から集まる拠点の地下一階のリビングスペースで寛ぎながら、リンに溢れんばかりの感謝の思いを言葉にする。
「み、みんな、が、こ、こんな、に、よ、喜んで、く、くれて、ぼ、ぼく、す、すっごく、う、嬉しい、です」
自分が作った宿屋や農場の経営が右肩上がりで伸びていることよりも、このスタトリンで暮らす人々、訪れる人々…
何より、自分が家族だと呼べる人々がこんなにも喜んでくれていることが本当に嬉しくて…
リンはふわりとした、天使のように可愛らしい笑顔を浮かべて、その喜びを露わにする。
そんなリンがあまりにも可愛すぎて、愛おしすぎてたまらず…
ジャスティン、エイレーン、リリーシアはもちろんのこと、その場にいた秘書達や文官達、さらにはメイド部隊の面々までもが、リンのことを抱きしめて思いっきり可愛がってしまうので、あった。
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