第4話


 お肉料理やサラダ、パスタも少しずつ取り分けて料理を楽しむ。

 

 空気の綺麗な森の中。

 周りには愉快な格好の仲間たち。

 すごい……メルヘンだわ……!!


 こんな素敵なパーティを開いてくれるなんて、皆には感謝しかない。

 そろそろお腹も膨れてきたし、締めのケーキでも頂こうかな。

 

 テーブルの真ん中には、生クリームのケーキの上にホワイトチョコレートの削りが振りかけられ、その上にはピンク色のチョコレートで作られた桜のチョコプレートが飾られた、それはもう可愛らしいケーキが置かれている。


「とっても素敵なケーキですね!!」

「あぁヒメ、私が切り分けてあげるわ」


 隣で甲斐甲斐しくさっきからお料理を取り分けてくれていたレオンティウス様が、ケーキも漏れなく切り分けてくれる。

 至れり尽くせり……!!

 良いんだろうか、こんな贅沢して……!!

「あ、ありがとうございます」

 私はお礼を言って、綺麗に切り分けられたケーキの乗ったお皿を受け取ると、クレアが立ち上がって、それを合図に私と先生以外の皆が同じように立ち上がった。


「さて……そろそろプレゼントよ。──レイヴン先生!!」

「おう!!」

「クリンテッド副騎士団長!!」

「任せて!!」


 な、何!?

 何が始まるの!?


「!? 何をする!? レオンティウス!!」

「ごめんね、シリル」

 突然先生の両手を後ろで拘束したレオンティウス様と、そんな先生に右手のひらを向けて魔法をぶっ放そうとしているレイヴン──!!


「ちょ!! 何してんですか二人とも!?」

 ご乱心ですか!?

「よーく見とけよぉ〜!! これが、俺たちからのプレゼントだ!!」

 そう言ってレイヴンは勢いよく先生に向けて魔法を放った──!!


「!? 先生!!」


 ボンッ!!


 直撃した。

 もろに直撃したよ!!

 一瞬にして白い煙に包まれる先生の姿。

 そして、それを見てニヤリと笑うレイヴンと、魔法がぶつかる直前にすかさず先生から離れて笑顔で見守るレオンティウス様。


 一体何を──……。


 やがて煙が消えて、中から現れた先生の姿に私は言葉を失った。



「なっ……」


 現れたのは真っ赤な巨大リボンでラッピングされた、猫耳先生……。


「レイヴン……レオンティウス……」


 あぁっ!!

 先生が怒りに震えてらっしゃる……!!

 猫耳のはずなのに角に見えてきた!!

 魔王は二人もいりませんよぉぉっ!!


「ヒメへのプレゼントはシリルだ!! 今日だけな!!」

 ぷ、プレゼントは先生!?

「えっと……エェッ!? な……どっ……」

 驚きのあまり上手く言葉が出てこない。


「ジオルド」

 先生の低い声がジオルド君に向かう。

「はい」

ほどけ」

「……すみません兄上。こればっかりは……」

 あのジオルド君が先生の命令を断った!?

 明日は雨か。

「ジオルド……」

「あぁちなみにそのリボン、ヒメじゃないと解けねぇから」

 レイヴンがニンマリと笑って先生の希望を打ち砕く。

「レイヴン、貴様……」

 眉間のしわがこれ以上ないほどに深くなってますよ先生!!


「じゃ、私たちは行くわね」

「良いバースデーパーティを、ですわ」

 クレアとメルヴィが手を振って、この空間かシュンッ──と消えた。

「エェッ!? メルヴィ!? クレア!?」


「俺たちも行くな」

「クロスフォード騎士団長、頑張ってください!!」

「ヒメ、本当におめでとうございました」

 マローとアステル、ラウルも、彼女たちの後を追う。

「兄上……本当……すみません!!」

 苦悶の表情を浮かべるジオルド君も、後ろ髪をひかれながらもその後を追った。


 えぇ〜……。

 逃げた……。


「シリル、しっかりね? ヒメ、本当におめでとう」

 アレンまで!?

 ていうか「しっかりね?」の圧!!

 さすが魔王様……。

「あ、ありがとうございました、アレン」

 感謝の言葉を口にする私ににっこりと笑いかけ、アレンもまた消えた。



「さて、俺らも行くか」

「そーね。──ぁ……ヒメ」

 思い出したようにレオンティウス様が懐から1通の封筒を取り出して私に差し出した。


「これ、あんたに。後で見てね。……お誕生日、本当におめでとう。私のうさぎちゃん──チュッ」

「!?」

「レオンティウス!!」


 レオンティウス様は私の頬に自然な流れで小さなリップ音とともに唇を落とすと、そのままレイヴンと一緒に消えてしまった。

 

 さすがグローリアスの歩く18禁……。

 息をするように自然にキスをする男。

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