第2話



 なみちゃんていう子が来たよ

交通事故だったんだって。


 お婆さんに可愛がってもらっていてね

とても人の良いお婆さんだったんだって。


 でもね

なみちゃん自身はお転婆な女の子だったんだって

よく人に吠えたり

お婆さん以外には気持ちを許さない子だったんだって

それも有りかもしれないね

だってさ

あっくんは覚えてくれてるかな

僕が近所のヤンチャな人間の男の子達に虐められていた時のこと

あっくんは僕を抱きしめて守ってくれたよね

嬉しかったんだ

あっくんは僕を見つめてくれたよね

僕の涙でキラキラひかる瞳を見てくれたよね

とても幸せだったんだ。


 あっくん?

最近泣かなくなったね

良かった


 でもね

いつもあっくんと遊んだ公園に行って

一人で漕ぎもしないブランコに乗るのはやめた方がいいかな?


だって

あそこは僕が人間の男の子達に虐められた場所じゃない?

あっくんが思い出さないとも限らないからね

悲しい思い出は順番に消していって欲しいんだ

それはね

悲しみは越えるためにあって

涙を溜める場所じゃないんだ

っていうことを分かって欲しいからなんだ

そこは立ち止まる場所じゃなくて

始まりの一歩を踏み出す場所なんだってこと


 あっくんに伝えたかったんだ。

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