わんわんのお里で

織風 羊

第1話



 ねぇ、泣かないで欲しいんだ。

僕は、君が泣いている前にあるお墓

そこには、もう居ないよ。


 あっくんが泣いてると

僕、ここから、そこへ行きたくなっちゃうよ。


 悲しまないで欲しいんだ

僕は今、とても幸せだよ。


 あっくんっていう親友は傍にはいないけど・・・。

ここには、たくさんの仲間がいるんだよ。


 みんな幸せそうだよ。

あっくんのいる世界を見れるこの湖のほとりには

お昼寝している子もいてる

綺麗な蝶々を追いかけて走っている子もいる

肩を寄せ合っている恋人同士もいるんだよ。


 この湖面から覗き込むと

あっくん達の世界が見えるんだ

泣いているあっくんが見えるんだ。


 あっくん?

君は未だ小さい

君が生まれた時

僕も子犬だったね

いっぱい遊んだね

君がほんの少し大きくなったら

君が僕と遊んでくれたね


 あっくん?

自分のための人生なんだ

僕のことで悲しんではいけない

あっくんの人生を楽しまなければいけない


 僕は君が居たから

此のお里に来れたんだよ

それを分かって欲しいんだ

此処は幸せな思い出を持っている子しか来れない場所なんだ

残念だけど怒りや憎しみを持っている子は

ここには来れないんだ

そう、残念なことだけど・・・。


 それでも

そんな思いを忘れて消し去ることができれば

此処へ来れるんだ

何処にいても希望っていう言葉は有るんだよ。


 いつか、あっくんも此処へ案内してあげるよ

まだまだ遠い未来だけどね

此処は僕たちの場所なんだ

僕達は此処を

わんわんのお里

って呼んでるよ。


それじゃまたね

この言葉が届くと、いいな。

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