おまけ 獣王隊(食べちゃったゲイルッカ編)

 我が名はブラドス・タリオン。

 遙か北方のタリオン農場にて生を受けし漆黒の黒馬である。

 あの日は森が騒がしかった。耳を劈く悲鳴に駆け付ければ、我に度々話し掛けてくれた農場主が、魔物の手に掛かり果てるところだった。

 それからは、農場を去り、森の畔で魔物を狩って暮らす日々。後ろ脚で蹴り上げれば、敵う魔物などそこには居なかった。

 冒険者協会の職員を名乗るその男が現れたのは、何時のことだったか。

 我はおかしなその男の協力も有って、冒険者協会の認識証を手に入れ、魔物素材の換金を教わり、街で買い物をすることを覚えた。

 やがて仲間が増えた。

 魔物に襲われし主人の帰りを待ち続けていた黒犬オードマン。

 闘争を求め彷徨う鶏ゲイルッカ。

 安住の地へ思いを馳せる黒猫ルッカラーオ。

 我が古巣、嘗ての農場の仲間より、己の道を行けと諭されて、我らは遙かなる旅に出た。

 東へ行っては海を臨み、西へ行っては霊峰を登る。

 数々の魔物を屠り、我らが名も広まりし頃、

 ――誇り高き鶏ゲイルッカが死んだ。

 おおゲイルッカよ! 既に歴戦の強者であったゲイルッカよ! 我らの中で唯一の白を持ちしゲイルッカよ!

 汝の魂は我らと共に! 汝の血肉は我らの血肉となりて共に生きようぞ!

 哀惜の念を胸に、我らは旅を続ける。

 旅路の果てに辿り着いた南の魔の森で、我らは一人の少女と出会った。

 少女は我らを一目見て、翼の不在を看破した。

 我らの胸に渦巻く想いは如何ばかりか。

 おお、おお、少女よ! 我らが想いを知る者よ!

 共に雄叫びを上げし同胞はらからよ!

 汝が行く道に恵みあれ!

 汝の選択に幸いあれ!

 我ら獣王の友に輝ける未来あれ!!

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