Ghost Drive =drive≧≧buddy【ゴーストオーバードライブ】

あさひ

第1話 始まりと終わりの運命《オカルト》

 夜も更けようと月が太陽に呼びかけるそんな時間

学園に忘れ物を取りに来た学生がいた。

「やばい! アキ様のクリアファイルを忘れた?」

 アキ様とは人気急上昇のアイドルで

学園でもひっきりなしに話題に上がる人気アイドル歌手

クリアファイルにはプレミアムが付くほどに誰でも知っている。

 学園は静まり返る以上に無音

不気味を通り越して静寂に戦慄した

それは雰囲気だけではなく

雑木林に囲まれた古風な見た目も手伝った。

「なんでこんなにお化け屋敷なんだよ……」

 恐怖のあまりか普段は出ない口調で自身を鼓舞する学生

逃げやすくすることそして学生を装わないという戦術を纏っている。

「僕は負けないんだ! アキ様はいつでも女性の味方なんだもん!」

 強く猛く熱くをモットーとする心情を歌った

人気曲の歌詞が頭に響き渡るのは

熱すぎる感情から来ると豪語するライブが

彼女をお化け屋敷にも似たダンジョンへと誘い飲み込んだ。

「あれ校門と奥の入り口が開いてる?」

 いつもは暗がりに支配され誰も通らない

用務員ですら

【裏門の鏡】と掃除を怠る雑木林の道

ざわざわした頬を撫でる音が

より何かを彷彿とし恐怖と旋律を煽る。

 雑木林の途中には学校七不思議である

「裏道様」というものがあり

なんでも途中に慰霊碑か石碑に祭られる神様のようなもので

学園でも知っているのは指折りしかいない。

 この少女も実は指折りの一人なのだが

【先輩に聞いた】

 それだけの若輩者と

位置づけられるくらいしか知らない。

 そして案の定にも見つけてしまうのが

こういった手の話にはつきものである。

「うわぁ……」

 お供え物が羊羹と茶の缶という

和のホラーにはよくありがちの組み合わせが目の前に存在していた。

「これが裏道のそのまんま悪霊の石碑? 先輩かな? お供え物なんて……」

 《ちがう……》

 どこからか耳元に声が届く

息をする音まで聞こえてきそうなほどの細い声が

ぞくりと場を盛り上がらせる。

「ホラー映画の見すぎかな!」

 《どんな? 見せて……》

 もはや会話が成り立っているが

幻聴だと少女を足早にアキ様の救出へと向かわせた。

 《待って……》

「いやだなぁ! 待てないのがファンの情熱だからっ!」

 怖さが上回ったのか怒りを見せながら答えてしまっている。

 《うれしいっ……》

「やばいな」

 足の歩行スピードが最高潮だったのか

開いていた入り口である用務具小屋の併設するドアを開け

逃げるために開けておいた。

 廊下はシンと音を残さない故に声が聞こえたら

もう耳に残り続けるほどに致命傷だろう。

 《ねえどこにいくの?》

 おそらく夢の世界にも少しだけ居候する未来が

確定したのは言うまでもない。

 三階にある教室には端の階段にまで行かなければ

遮断された《裏門の鏡》からは到達できない。

 その間も声は必死に構ってもらおうと問いかける

しかし熱唱し始めた少女に敵う声など

アキ様ぐらいしかもう存在しなかった。

 あっという間に三階の教室から

アキ様を奪還と救出

曖昧な英雄譚は幕を閉じるはずだった……

「よし! あとは帰るだけだっ!」

【ようやく終わったね】

「ん? 何が?」

【あなたの人生がだよ】

「はぁ? 何を言ってるんだかな! ヘタレ!」

【大丈夫だよ「僕のうらみちゃん」】

「わたしはシオミだけど?」

 疑問をそのままにぶつけたが

雑木林の中腹に行く頃には体に浸透している

そんなことにも気が付かない。

 ゆっくりと腹の部分をなぞる柔い腕が

抱きしめていることに気が付く原因は偶然にも落ちていた。

 昔の携帯に映るそれは鏡ではないはずなのだが

見えるように最大の光源という形で石碑にぶら下がっている。

 ニタァと笑う真っ白い中性的な着物の何かは

少しの美しさと血に染まった手で相反した芸術と化していた。

 ゆっくりと血の気を奪う吸血鬼は

感情と体力も徐々に消していく。

「うわぁっ! ああぁぁっぁぁぁぁぁぁあぁっ!」

 気づくと走り出していた

もう息も乱れ吸うことも吐くことも

まばらで絶え絶えながら一つの線でギリギリ留まる有様で

息のできない魚が捌かれるのを待つだけの状態だ。

 あと少しで校門を出きる頃には

虚ろな瞳がゆらゆら揺れているだけの

人形のようだった。

 そしてこう言っている

【これで私のモノだね! うらみちゃん!】


 《見つけてくれたぁああぁあっ!》

【私の体は健康ねぇえぇぇぇぇっぇぇっっ!】

「これで私の夢は叶うのぉぉぉぉぉおぉぉぉぉっ!」

 【《「待っててねぇ…… 姉さまぁ……」》】

 ぞくりとしたパソコンの画面前

監視カメラに囲まれた不思議なひと部屋には

髪が長く流麗で可憐を姿にした美少女が目を覚ましていた。

「今日はあの子の徘徊が終わって何日目だったっけ?」

 ニタニタしながら

一人の男子が一人で何かをしている録画のアーカイブを

コレクションしたアニメのようにスクロールする。

「オタクくん…… 漫画見たいだなぁ」

 その頃、画面にいた少年は

少しだけ眉を潜めて

「うっせえよ……」

 答えを誰か虚空に伝えていた

「ずっと傍に居やがって…… ありがてえな……」

 視線と見えない何かに言っているのか

周りがざわめくほどの一閃が流れた。


 第一話 おわり

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