百合の花
鳳凰澪崋 暁月
いつだっけ。夕陽が射す公園で君は笑いながら教えてくれた。
「私ね、百合の花に囲まれて眠りたいの、それが私の夢だから」
そう言った君の笑顔は小さな子どものようで、なのに悲しげで、脳裏に焼きついたまま離れない。
数日後、君は眠りについた。
聞けば病だったらしい。僕は彼女の夢を叶えるために、彼女が眠る棺の中を百合で覆い尽くした。百合に囲まれて眠る彼女は、また、起きてくるのでは無いかというほどに、綺麗な顔をしている。僕は、君が好きなのに。君以外を考える事も出来ないのに。好きだと伝える事もできないまま。その日、ポストに一通の手紙が届いた。
「この手紙が届いてると言うことは、もう、私は居ないと言うことですね。本当は、口で伝えたいと思ったけど、迷惑かと思って手紙で伝えようと思う。
私は、貴方が好きでした。君が私を好きなのは、なんとなく分かっていたよ。図々しいお願いだけど、私の分まで生きて欲しい。だから、私を追いかけないで」
僕は、一生分の涙を流した。
数年後、庭に咲いた百合を眺めながら僕は
君を想う。
百合の花 鳳凰澪崋 暁月 @albaLuna
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