07 守護神の天部達
「4人?」
すると亘、越時、昇の横に風が舞い上がり、3人の男性が現れた。
「相変わらず減らず口じゃのう」
そう言ったのは見た目は祖父の年齢ぐらいの老人の男性。
「本当に。そろそろ落ち着いたらどうだ」
物静かな面持ちの少しきつめの顔のシュラと同じぐらいの年齢に見える男性は、
「ほんと、もう少し静かにしてほしいですね」
背が低く見た目は子供の姿の少年は、昇の守護神、広目天のユウラだ。
皆、それぞれシュラに文句を言いながら、翔琉に自己紹介をした。
「今度の
そう言って
「あのー、あなたは?」
「私? サラと申します。よろしくお願いしますわ。あなた達の天部の名前で言うと
「弁財天は私の
「四天王じゃないのか」
「四天王は
そう答えたのは越時だ。
「じゃあさっきサラさんが言っていた今度の多聞天っていうのは? 多聞天って何人もいるのか?」
「簡単に言えば、日本人とアメリカ人みたいなもんだな」
応えたシュラにリュカが嘆息し指摘する。
「シュラ、その言い方は誤解を招く。我らにつけられている
「それって四天王は役者の名前で、その役をシュラ達がやっているって感じか?」
「お! 翔琉いいこと言うじゃねえか。そうそう、そんな感じだ」
シュラが笑顔で言うと、リュカが不本意だと言いたげな顔を向けるが、
「あながち間違っていないな」
と肯首する。それを聞いたシュラは勝ったとリュカへと自慢げな笑顔を見せる。
「今度のってことはシュラの前の多聞天っていうのは?」
翔琉の疑問に応えたのは祖父の
「わしの守護神の多聞天だ」
すると
「
髭を生やした壮年で、とても落ち着いた雰囲気の低い声のバナラに翔琉はシュラと見比べる。
「ほんとシュラと正反対な感じだな。威厳がある」
それに対しシュラは「否定はしない」とまた笑った。そこで翔琉はあることに疑問を持つ。他の4人はこの場にいる感じなのだが、常時のバナラは違うのだ。
「なんでじいちゃんのバナラだけ遠い感じなんだ?」
するとそこにいた守護神達は驚く。
――ほう、分かるのか。
――へえ。やるね。
――そこまで分かるんだ。
守護神達は目を見開き感心する。普通、人間には分からないのだ。
何か意味ありげに見てくる四天王に翔琉は目を眇める。
「なんだよ。何か変なこと言ったか?」
「いや。よく分かったなと思っただけだ」
そう応えたのはシュラだ。そしてバナラ本人が説明する。
「
「だからわしは時渡りの仕事はお前達に任せ、この神社の神主の仕事一本にするんじゃよ。念願の隠居生活じゃ」
なぜか胸を張って言う
「まあそれは無理だな。まだまだ親父のやることはたくさんある」
「そうだな。まだ
バナラも頷き笑う。
「
トスマがかかかと笑うと祖父は肩を落とす。
「なんじゃ。まだまだ隠居生活は遠そうだのう」
「早く隠居生活をしたいなら越時が出来るように教えるんじゃな」
「トスマ。余計なことを言うんじゃない。俺はまだ遠慮する」
越時は本気で嫌がり反論するのでトスマは大笑いする。
「だそうじゃ
トスマの言葉に四天王達も笑った。
「じゃあ私は戻る」
バナラはその場から忽然と消えた。
「はや」
翔琉が声を上げると、シュラが今までと違う落ち着いた声音で言う。
「バナラは長い時間こちらの世界にいることが出来ない。あまりいると
「そうなんだ」
そこで翔琉は四天王はやはりとても優しく慈悲深い神なのだと改めて思うのだった。
「じゃあわしらも戻るぞ」
「ああ。ありがとさん」
祖父がお礼を言うと四天王はその場から消えた。
「あれ? 帰ったのか?」
「ああ。基本現代では四天王達は姿を現さない。今は翔琉に挨拶するために出てきてくれただけじゃ」
そういうものなのかと翔琉は思っていると、越時が言う。
「じゃあ挨拶も終わったところで仕事だ」
「え? 今から?」
「ああ。そうだ。けっこうこの仕事は忙しいんだよ。香里奈」
香里奈がいつの間にか両手にたとう紙を持っていた。
「翔琉君、これに着替えてもらいます」
渡されたのは上下同じ色の神職用着物と袴だ。
「翔琉君は、この藍色ね」
渡された着物を受け取る。
「時渡りをする時は基本着物を着てもらう。どの時代も神職の衣装は変わらんからな。それに神職や僧侶というだけでけっこう融通が利くんだ」
昔から神社やお寺は一目置かれ、悪い者はいないという人間の心理が働くみたいだ。
「じゃあ奥の部屋で着替えたらここにまた集合」
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