【一人用台本】焔

しんえん君

焔(ほむら)

【諸注意等】


生配信等での使用は可。その際、リンクの明記をお願い致します。

動画など、残るものに関してはご連絡下さい。(プロフィールよりtwitterへ飛べます。)

アドリブ、細部の改変、性別の変更などは可能です。



【本作の読み方】


・「」外は状況の説明ですので読まなくて結構です。演技のプランニングやSE等の参考にお使い下さい。

・ダークな作品ですので、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

・一人用の台本ですので、自由に読んでいただけたらと思います。

但し、改変は常識の範囲内で。



 



役表


 放火魔 不問:



【登場人物】


 放火魔

 炎に入っても燃えぬたち。でも服は燃えちゃう。火が大好き。特徴的な女口調。





【台本本文】


あー。いい汗かいた。


この家も、もう時期終わりね。ほとんど燃えちゃった。


ああ、でも。この揺れる明かりといい、小気味こぎみの良い音といい、まだまだ最高。最期まで魅せてくれるわね。




ね。そう思うでしょ?


通報もせずただ見てるなんて、貴方も、炎に魅入みいられちゃった人?


助けに来たなら余計なお世話。アタシ、燃えないもの。




貴方がただ突っ立ってただけのおかげで、こうして最後まで楽しむことができてるわけだけど。できれば遠慮して欲しいわね。


見るからに、アタシ、素っ裸だし、プライベートな時間を過ごしていることくらい察して欲しいんだけど。




ああ、それとも、この家の人?アタシが邪魔しちゃった感じかしら?


全員燃やしたと思ったけど。




あら、違うの?


じゃあ話してもいいわよね。彼等と過ごした明るい夜を。ふふふ。

素敵な夜だったわ。


眠っている間にたっぷり下ごしらえをして、3つ数えて火を放ったの。3、2、1、着火ってね。


順に炎のドレスを着て踊りだすものだから、アタシおかしくて。

だんだん赤く燃え上がった壁や床はステージとして夜を盛り上げる。空へと登る黒煙こくえんと豪快な音を立てて崩れる柱。

そしてなんと言ってもアタシの服をむしばむ炎!熱くて燃え死ぬかと思ったわ!そうしてアタシも炎のドレスを身にまとうと、うめき声に合わせて踊ったの。


彼等はすぐに踊れなくなってしまったけれど、それまでは最高に盛り上がった。


彼等やステージがただの黒い塊になってしまった後は、それをつついて遊んだ。時々火の粉が舞うのが可愛くて可愛くて。


ああ、素敵だったわ。


ねぇ、もっと聞きたい?


あら。大丈夫?青い顔してるけど。




ふふ、イカれてるって思った?あははは!


アタシも思うわ!アタシって最高にイカれてるって!




でも、期待はずれだわ。貴方。


紫になってゲエゲエ吐くまでいかなくても、足がふにゃふにゃになって立てなくなるくらいの反応が欲しかった。


意外とそういうグロテスクなのが好きなタイプ?


それか、ちょっと表現が詩的で遠回しすぎたかしら?


それとも……もともと知っていたのかしら?


知っててここへ来たのかしら?


ねぇ、あなたに聞いているのよ?


どうなの?




やっぱり。貴方はアタシの事を知っていて会いに来たのね。

よくできました。アタシがここに来るってわかるなんて。すごいわ!

もし貴方が警察官になったら、とってもやりにくいでしょうね。




へぇ、この前、貴方のパパとママを燃やしちゃった事を怒ってるのね。

覚えてるわ。

サッカーボールや子供用のスパイクがあるのに、夫婦二人住まいなんておかしいとは思ったのよ。やっぱり生き残っちゃったのね。かわいそう。


あの日はどうしたの?彼女のお家にでも行ってた?おっと、冗談よ。




で、どうしてほしいの?


パパとママの後を追わせて欲しいの?


黒煙こくえんに乗ってあっという間に天国に行けるかもしれないわよ?


……違うのね。アタシに復讐しに来たってわけか。




同じ目にあわせてやろうったって、アタシは燃えないわよ?




あら、子供は刃物を持っちゃいけないのよ?危ないじゃない。




はいはい、お手上げ。アタシ武闘派じゃないの。


男の子ってすぐに暴力に訴えるわよね。


わかったわよ。おとなしく殺される。


でもお願いがあるの。


アタシが死んだら燃やしてくれない?


死んだらアタシもきれいな炎と真っ黒の塊になれるかしら?


え?アタシのお願いなんか聞く義理ない?

そう。じゃあ話は別よ。


貴方もアタシが燃やしてあげる。


確実に天国まで連れてってあげるわ。




とはいえ、全部燃えちゃったから今日は無理ね。火を起こせないもの。

それに、もうじき明るくなる頃だし。


んふふ。あら。また会う口実できちゃった。嬉しいわ。




大人のオンナをナメるとろくなことにならないって……身をもって教えてあげる。

その日まで毎晩、震えて眠りなさい。ああ、貴方の骨をきれいな炎が舐めるのを早く見たいわ。




さて、今日の貴方にはもう用はないわね。だって燃やせないし。じゃあね。


気をつけて帰るのよ。




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