ラブコメの世界へようこそ!
いづみあきら
4月7日 22時18分(プロローグ)
拝啓、読者の皆様。
僕の名前は大橋明日真と申します。
春陽麗和の好季節、如何お過ごしでしょうか?
僕はというと、中学2年生の頃から必死に取り組んだ受験勉強が功を奏し、何とか志望校への入学を果たすことができました。
晴れて本日より、県立浮雲高校の新1年生です。
やはり高校となると、これまで通っていた中学校とは空気感が全く異なります。
特にこの浮雲高校は公立校であるにも関わらず自由な校風として知られ、少し校内を歩いてみても、明るい色の髪の毛をした先輩がいたり、制服は着崩していたり、女生徒の一部は滅びたはずのルーズソックスを履いていたり、各々が思い思いにオシャレをしています。パッと見回しただけではどこかのヤンチャスクールの学び舎に迷い込んだような錯覚を覚えるでしょう。
しかし実態は県内でも有数の偏差値を誇り、卒業生の多数は都内の有名大学に進学しているような名門校なのです。
よく見ると校内は清潔に保たれて落書き一つなく、先輩方の髪型や服装も、反発による風紀の乱れというより、制服を着こなすための手段としてそういったコーディネイトをしていることがわかります。
名門校というだけで何もかもが素敵に見えるフィルターがかかっているだけなのかもしれませんが。
校舎には運動系の部活動の声出しや、吹奏楽部によるものと思われる金管楽器の音色、何が楽しいのか、生徒たちの笑い声がどこからともなく響き渡ります。
とても良い雰囲気です。この学校に入学することができて良かった、あのとき頑張って良かったと、つくづく感じることができました。
支えてくれた家族、友人たち、理解力の足りない僕にオリジナルの問題集を作り続けてくれた塾講師の方々に深く感謝したいと思います。
さて、少し前置きが長くなりましたが、これより本題に入らせて頂きます。
おそらく僕は、異世界に迷い込んでしまったと思うのです。
いつの頃からかはわかりません。
巷に溢れかっている某〇〇系小説のように、わかりやすく交通事故か何かにあって転生したようなら僕もそれをはっきりと自覚することができたでしょう。
しかし、それらしいターニングポイントや、誰かの声に導かれてなどといったイベントが発生した記憶がありません。
一応家族の者にここ最近事故等に遭ったことはないか確認をとったのですが、首をかしげていたので客観的事実としてもそういったことは起きなかったようです。
となると、はっきり違和感を感じた今日の朝、もしくは就寝中に何らかの"事象"が起き、僕は異世界に転送された可能性が高いと思われます。
ちなみに、先ほどから"異世界"というワードを使っていますが、何も剣と魔法とドラゴンが飛び交うファンタジー世界というわけではありません。
きわめて現実に近しく、それでいてありえないことが次々に起こりうる世界。
そう、ラブコメの世界に放り込まれたようなのです。
そうでないと説明できない出来事が朝から晩まで続きました。
これまでの僕の人生を振り返ってみても、一度として発生しなかったイベントが次々と沸き起こったのです。
それも、ラブコメの主人公でないと起こり得ないようなファンタジー過ぎるイベントが。
それだけには留まりません。
なんとこれまで見知った人ですら人格が変わってしまったのです。
まるで、ラブコメの世界の登場人物のように。
もしここがラブコメ世界ということであれば、現実の世界に戻るためにはヒロインとの恋愛、そしてその成就が必要となってくるでしょう。
だとしたら、僕はそのヒロインの中から、この物語のメインヒロインを探さなくてはなりません。
現実の世界に帰るために。
この物語をどこからか見守っている読者の皆様。
どうか教えてください。
今日出会った女の子の中に、この物語のメインヒロインはいるのでしょうか。
そのヒロインと、どのような恋愛をすればいいのでしょうか。
また、成就とはどこまでを指すのでしょうか。
この世に生を受けて15年。
恋愛というものに全く無縁の人生を過ごしてきました。
初恋らしい感情も抱いたことはありません。
当然、童貞です。
だからこそ、高校では心機一転、もっと積極的に青春しようと考えてはいましたが、こんなラブコメファンタジーを望んでいたわけではありません。
それでは、このハレの日である4月7日に誰と出会い、何があってラブコメ世界に召喚されたと思ったのかを語らせて頂きます。
既に導入部分で長文となっており、皆様におかれましてはそろそろ辟易し出している頃合いかと思われますが、何卒ご容赦願います。
それでは、よろしくお願い申し上げます。
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