第57話 魔王とショコラ

 最上階の魔王城。


 魔王は窓の外、魔法少女たちが帰って行く姿揚げを見届けていた。


「……魔王様」


 扉を開け、中に入ったショコラが、魔王に話しかける。


「ああ、来たかショコラよ」


 ショコラに気付き、魔王は振り向かずに声だけで出迎える。

 すでに他の悪魔に回復魔法をかけてもらい、全回復していた。


「やはりユーリアはいいな。あやつは強い。我を楽しませてくれる」


 窓の外でユーリアたちが見えなくなるのを見て、魔王はショコラに向き直った。


「毎日偵察、ご苦労だなショコラ。……いや2人きりだ。ユーリアが付けた名ではなく、ハトゥールと呼ぼう」


 ハトゥール、それがショコラの本当の名だ。


「我が初めてあやつに負けた時、お前にユーリアに心酔したフリをして、偵察をするよう頼んだな」


「はい、魔王様」


「ユーリアといて、何か不満はあるか?」


 部下であるショコラに、偵察の不満を聞き出す上司の魔王。


「いいえ、魔王様。ユーリア様との生活は楽しいので、不満はありません」


「そんなにあの娘が気に入ったか? 我もあの残酷な面と甘い面、両方を持つあやつが面白くて気に入っておる」


 ショコラの言葉に同意し、ユーリアについて語り合う2人。


「しかしハトゥールよ。あの時、我がユーリアに死を授けていたのならば、本気で我を殺したであろう?」


「……そのようなこと、ありません」


 魔王の問いかけに、ショコラは涼しい顔で否定する。


「随分とあやつに感化されたな。たとえ死んでも、蘇生魔法で生き返るのだぞ?」


「魔王様。私は魔王様に刃向かうことなどありませんよ」


「お前の本気、見てみたかったぞ。ユーリアを殺せていたら見られたのにな。惜しいことをした」


「あり得ませんよ」


──我が主、アレキサンダー・ルシファー様。


 深々とお辞儀をするショコラ。


「本心を話さぬならば、それも良かろう。……しかし我も、あやつと一緒にいたら変わるのだろうか?」


「ユーリア様との生活は楽しいものです。良かったら魔王様、ユーリア様のお近くに住まいを移されてはいかがです?」


 そう提案するショコラに笑い「それもよいな」と魔王は一言、言葉を零した。



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