第7話 アザリの夢

「アザリはユーリアが好きだよっ! ユーリアが16さいになったら、けっこんしよー!」


「……めんどい」


「めんどくさがりなユーリアが一生、はたらかなくてすむように、ぼくがラクさせてあげるっ!」


「……けっこんする」


「やくそくだからねっ!」



 ────

 ──────


「もう結婚してるはずなのに……」


「なにか言ったか?」


 ポツリと独り言を漏らすアザリに、いまや4等身に戻ったユーリアは聞き返す。


 いま現在、ユーリア一行は雄大な森を抜け、近くの小さな町ジェロミーゼを目指していた。

 アザリと執事のショコラは徒歩だが、ユーリアはショコラに抱っこされてラクラクだった。


「小さい時に16才になったら、結婚しようねって約束したのに……ぐすっ」


「あの後に、ジャスさんに魔法少女の素質を見出されて、一生分のお金を稼いだからな。もう結婚の必要性を感じ得ない」


 だるそうな大きな三白眼がアザリを見ながら、きっぱりと断る。


「ひどいよぉおー! 約束を白紙に戻さないでーっ! しかも『身長維持すんのめんどい』とか言って、普段は魔法で小さい時の姿だしいぃー!」


 ひどいひどい! とだだをこねるアザリに、


「……お嬢様、この男を殺っても?」


 ショコラが尋ねた。


「大丈夫だ。……めんどい」


「はっ! 仰せのままに!」


 アザリには聞こえぬように2人、密談を交わしていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る