第4話 めんどくさがりのユーリア

「しかし、変わらないな。その性格がブレブレなとこ」


 サングラスを外したユーリアは、ため息混じりのあきれ顔で言葉を吐く。


「だって私、神だし……最高神だし、神らしくしなきゃーって」


 今やワット数を下げて、豆電球くらいの明かりまで落とした神。同時にテンションも下がっていた。


「……めんどい」


「なんだとうっ!」


 感情が高ぶり、急激に辺り一面を照らすジャスティアス。


「……」


「あ、ごめんね」


 気持ちを落ち着けつつ、このままでは埒があかないと思った神は、とにかく本題を進めることにした。


「さてユーリアよ。もちろん、今回も受けてくれるな」


「……やだ。しんどい」


「回答はやっ!」


「魔王が暴れ出したのはこれで何回目だ? もういっそのこと、世界は魔王に支配されてみてはどうだ?」


 そのやる気のない、半眼三白眼の大きな瞳がこちらを見る。


 くっ……! 相変わらずだな、この魔法少女は!


「あなたの能力を使えば、全世界は安泰なんですがね! あなたが頑張らないから、各地でそれぞれの魔法少女に、魔王からの攻撃を見張ってもらっているのですよ! 世界を統べる、絶対的な最高神、ジャスティアス様に向かってなんて口の聞き方だ! この私が頭を下げているのだぞ!」


 ユーリアの態度に腹を立てた神は、早口にまくし立てる。


「……いや、言葉のみで頭を下げておらんぞ。わたしは、余生をまったりゆったりと過ごしたいんだ。前回の魔王倒しで、たっぷりと報酬は頂いたのでな」


 実にアンニュイな顔で、話を切り上げようとするユーリアに神は慌てた。


「!!……す、すみません、魔法少女ユーリア。お願いですから、また世界を救って下さい!」


 どうにかして、超めんどくさがりなこやつを動かさなければ!


 神はもはや、自らのプライドを捨ててユーリアに頼み込む。


「いまならもれなく、神様の『なんでも願い叶えます券』あげます!」


「神自身で倒しに行け」


「ぐっ! わ、わたくしども神は、人々の信仰がないと力が振るえないのでございます…。」


「民の祈りがあるではないか」


「魔法少女たちの祈りはひとりで百人力で、その信仰の力に頼っていたので……」


「相変わらずの非力っぷりだな……」


「ちょっと、メンブレ起こすからヤメテクダサイ……っ!」


 さめざめと泣き出す神を見て、なんだかんだで渋々ユーリアは、魔王退治に行くことにした。


「……めんどい」






 その頃、魔王城。


『魔王様、魔法少女ユーリアがそちらに向かうようです』


「……わかった。報告、ご苦労」


 忠実なる部下からの連絡を受け、魔王はほくそ笑んだ。


「魔法少女ユーリア……やはり動いたか……」


 そう一言呟き、魔王は監視の間を後にした。



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