第2話 いざ、ユーリアの城へ

 はあー……。


 ある絢爛豪華なお城を前に、エアデロンの世界の神、ジャスティアスが深めのため息をついていた。


 彼は『ザ・神』といった出で立ちで、見るからに偉そうなイメージを醸し出していた。


 そう、まるでオリュンポスの神々のようにシルクの光沢のある絹を身に纏い、頭には色とりどりの宝石がはめ込まれた王冠、更に神々しい金色に輝く髪は、辺り一面を照らしまくるほど、眩しい。


 そう、ジャスティアスのいる半径10メートルくらいは、ランプの明かりがいらない。


 ああ、マジでやだ。またあやつの世話になるなんて……。


 肩を落とし、愚痴を零す姿からは、とてもではないが威厳は感じられない。


「しかしあやつ、以前にも増して更にばかでかい城にすんでおるな……」


 緑が生い茂る山奥の、夏の避暑地になりそうな場所に、どどんと構える大きなお城。


 城の見上げるほどに高い門を前に、ひとりの魔法少女の顔を思い浮かべる。


 世界最強。

 魔法少女界、いや世界一の類い稀なる力を持つ絶対的存在……ユーリア・リュンベルト。


 いや、もちろん最高神、私が最強だがな。あくまでも現世でって事でな。

 このジャスティアス様より上な者など……。


「おい、そこの神」


「はっ! その声は!!」


 独り言を呟いていた神の後ろから聞こえた、バリトンボイス。


 振り返って見ればそこに佇む、スタイリッシュかつ夢の8等身ボディを持つ一匹の黒猫。


 かつては魔王の右腕として暗躍し、ブラックシャドウの二つ名を持ち、神でさえ手こずった悪魔。

 それが最強の魔法少女に倒され、彼女に心酔し今ではユーリアの忠実なる執事。

 名をショコラという(ユーリアが改名)。


「また来たのですか?」


 と、全身真っ黒で艶やかなビロードに、上流貴族のような紳士でエレガントな服に包まれたヤツが言う。


 猫のクセに相変わらず背筋が伸びた、すらりとした体型だ。なんて生意気な……!


「ショコラよ、彼女に伝えなさい。世界最強の魔法少女ユーリア・リュンベルトよ。今一度、魔王を倒し世界に平和をもたらしなさい……と」


 私は神らしく、普通の民ならば有り難がる威厳に満ちた声音で命令する。


 しかし、ヤツの返答は……。


「ハッ! 口の聞き方がなっていない、格下が!」


 心肺停止しそうな冷え切ったまなこと共にそう言って一蹴された。


「格下はお前であろう!」


 しかし、そのまま城に帰って行こうとするショコラを、神は慌てて捕まえる。


「世界の最高神、ジャスティアス様が頼んでおるのだぞっ! 無視するヤツがおるかーっ!」


「フッ、ここにおりますが?」


 とにかく、あやつに会わないと話が進まないので、私は無理やり中に入らせてもらう! 神をナメるでないっ!


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