不誠実の密会

この空間しかない

秘めた密会

二人から発する

艶かしい湿度


誰にも見つからないよう

遠出をした帰り

とにかく喉が乾く

飲み物をあおる


良くない事だと解っていながら

目の前の様々な君が


欲しくて


欲しくて


君は


俺の物だ



日中に眺める君は

とにかく無邪気だ

訪れる幾多の場所で

子供の様にはしゃぎ回る


美味しそうだねと

写真を撮る君

満面の笑顔で

口一杯に頬張る


照れながら控えめに

袖口を引っ張る

いつもはできないこと

手を繋ぎたいのだろう


君の右手を握り

少しだけ視線を送る

少し驚きながら

嬉しそうにする君


幸せそうで

愛らしくて

俺の胸中は

独占欲に染まる



夕暮れの帰り道

寂しそうに助手席に乗る

運転する俺を見つめ

少し頬を膨らませる


それでもなお諦めず

何か楽しみを見つけようと

車窓から夕陽を指差し

綺麗だねと微笑む


せめて夕食もと

帰る時間を引き伸ばす

必死に店を探し

くつろげる場所を見つける


個室に案内され

笑顔に寂しさを隠し

俺と共にする時間を

噛み締めているんだろう


その健気さに

その寂しさに

またもや俺は

独占欲が広がりゆく



夜が訪れた車内

満腹と疲れの表情

トロンとした顔に

寂しさは消せない


夜の暗さに隠れる様に

俺の腕を少しなぞる

無邪気な顔から

大人の顔に変わりゆく


帰りたくない

離れたくない

子供の様な渇望で

大人の欲望を解放する君


人気のない駐車場に停めさせ

覆い被さるように

俺の唇を求めだす

応えるように押し付ける


飢えている

求めてくる

心も体も

独占欲のままに



息が上がり苦しい

それでも重ねて

それでも絡めて

それでも入って


君が俺を欲しがるように

俺も君が欲しいんだ

ただただお互いの

独占欲をぶつけあう


このとりとめもない関係に

意味を見出すように誠意を

だから俺は微笑んで

薬指の指輪を外しておく


この日だけでも

この瞬間だけでも

かりそめの愛に

泥沼の欲に浸る

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