第18話 不思議アルバイト5
不思議アルバイト5
「任務失敗ってヤツね」
朝日さんはどこか他人事のように言った。
それ、普通は怒られるヤツだろ。
「あー、まあ、大丈夫だよ」
朝日さんは暢気である。
「……で、バイト代は?」
オレは聞いてみた。
「それは大丈夫、当初約束した通りの額を出すよ」
朝日さんは笑顔を見せる。
「よかった、これで少し足しになるぜ」
「生活費だね」
オレがつぶやくと、朝日さんはふふと笑った。
「私には?」
「元からなし。稼業の内だよ」
夕凪も聞いたが、朝日さんは冷たく言い放った。
*
『ま、平和的に終わったな』
蛇女はやれやれという感じで言う。
暢気にお茶を飲んでいる。
「あの口裂け女、ナニモンなんだ?」
オレは聞いた。
『うむ、まあ、古い知り合いみたいなもんだ』
既に部屋に戻っている。
「それだけじゃないだろ?」
オレは意味ありげに言った。
『……』
「……」
蛇女と蜘蛛猫は黙り込んだ。
そして、顔を見合わせる。
「ま、まあ、そんにゃに聞きたいにょ?」
『別にそんなもの聞かなくても問題はないだろう?』
2人とも話したくない雰囲気バリバリ出してるな。
「いや、何でそんなに話したくないんだ? 逆に興味出てくるだろ」
オレは正直な感想を述べた。
『仕方ない』
蛇女はため息をつく。
「あー、ぶっちゃけ、アイツら古代生物にゃのよ」
蜘蛛猫がなんか言った。
「は? ぶっちゃけ? なんだと?」
オレは聞き返す。
「古代生物にゃ」
蜘蛛猫は言った。
「アラフォーは絶滅した鳥にゃ」
「……」
オレは無言。
え、鳥?
『現代の言葉では恐鳥ってヤツだな』
蛇女が答える。
『フォルスラコスとか言ったかな』
小説だけじゃなく、図鑑とかも見てるのはそういう事か。
「じゃあ、口裂け女は?」
オレは少しムキになって聞いた。
「あー、あの動物にゃんて言ったっけにゃ?」
蜘蛛猫が首を傾げる。
『確か、ミアキスとか言ったかな』
蛇女は思い出しながら答える。
「なんだそれ?」
「こういう、猫みたいにゃ犬みたいにゃ、動物だにょ」
オレが聞くと、蜘蛛猫はスマホをいじって画像を出す。
イタチみたいなほっそりした姿の動物だ。
「これが…」
オレは画像に見入ってから、
「でも、なんで妖怪になってんの?」
正直な感想を述べた。
『コイツらのように妖怪化することを「変化」という』
蛇女は答えた。
なんか意外と真面目に答えてくれるのな。
『生きながら、死後に復活して、変化して永久不滅の存在になる場合がある』
蛇女はなんか言った。
「どんな場合だよ!」
オレはツッコミを入れる。
「ボケじゃにゃいにょ!」
蜘蛛猫が重ねてツッコむ。
『とにかく変化した結果、伝説・都市伝説の中で語られる妖怪・怪異となったのだ』
蛇女は言った。
なんだか厳かに聞こえる。
…ん?
てことは、蛇女とか蜘蛛猫も?
「じゃあ、お前らも?」
『ん? あー、そうだな』
オレが聞くと、蛇女は歯切れが悪い。
「蛇女さんはこれだにょ」
蜘蛛猫はスマホの画面を見せた。
『でかいヘビじゃん』
黒い女が後ろから、のぞき込んでいる。
全然興味を示さなかったのに。
寂しくなったのか?
「ティタノボアだにょ」
蜘蛛猫が言った。
『名前なぞ、どうでも良い』
蛇女はフッと笑った。
『かつてそういう生き物がいた。ただそれだけだ』
「蜘蛛猫は?」
オレはスルー気味に聞いた。
『いや、もっとわらわのこと聞けよ!』
蛇女はなんか怒ってる。
「私はいくつかにょ動物にょ合成ですにょ」
蜘蛛猫はにこやかに答えたが、
『うわ、それってキメラじゃん』
黒い女が引いている。
3メートルくらいか。
「変化と合成か、訳分からん」
オレは匙を投げた。
てか、もう何で問い詰めてるのか分からなくなってきた。
「ま、いいや。どんな生まれかより、今どうかだしな」
オレは適当に言って、しめた。
『ふん』
「にゃー」
『それより、大混乱クラッシュマスターズやろーぜ』
『いいな』
「やろにゃー」
3人は無視して、コントローラーを握った。
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