第39話

エピローグ


世界には活気が満ち溢れている。

フロストランドが発端で始まった技術革命は着実に、この世界に浸透していた。


エリンはフロストランドにくっついて技術を吸収し、発展していった。

コバンザメみたいなものである。

そのエリンが更に他の地域へ技術を輸出してゆき、全土に波及されていったのだった。


新たな技術がこの世界の全土を覆い尽くした今、世界の生活水準は何段階もアップした。

結果、静たちの世界を軽く追い越している。

とりわけ精霊を使った技術が発達してゆき、静たちの世界の技術と融合していった。


兵器、電車、発電機、パワードスーツ等々。

数々の技術を精霊の力を使った形にアップグレードしている。


スネグーラチカは、それらをもって異世界へ進出した。



「おじいちゃん!」

藍子は帰宅するなり、バタバタと駆け込んできた。

「なんじゃい、騒々しい」

黄太郎はちょっと驚いている。

「テレビ、テレビ見た!?」

藍子はガバッとリモコンを取って、急いで電源をオンにする。

「なにかあったのか?」

「大変なんだよ!」

藍子はニュース番組を選ぼうとしたが、どこの局もニュースを流していた。

即ち、中国雲南省にゲートが現れたというヤツだ。


「はわ!? なんじゃこりゃっ?!」

黄太郎は腰を抜かさんばかりに驚いた。

「あれ、ブリジットと関係ある?」

「わ、分らん」

藍子がピンと来たようだが、黄太郎は頭を振った。


数日間、このニュースで巷は賑わっていた。

藍子が驚いたのは、親友の静とその姉の巴が重要人物として連れて行かれたことだった。

「えー!?」

「どういうこと?」

クラスメイトたちが色々と噂したが、正確な事は分らなかった。


それから、あれよあれよ、という間に外堀が埋まってゆき、気付いたらフロストランドという国の出先機関が雲南省にできていた。

異世界からの侵略だ、と人々は噂した。



『こんちは』

ブリジットたちは、あるところを訪れていた。

「御前」の表札が掲げられた古風な家だ。

『はい……あ!』

隆が出てくるなり、驚いていた。


『え!?』

ブリジットが話をすると、隆はさらに驚いた。

『そ、それって…』

『はい、我々の武術指南役になってください、是非!』

ブリジットは再度力説し、頭を下げた。

『お願いします』

『お願いします』

ダブリンとダーヒーも追随して頭を下げた。

『そ、そう急に言われても…』

隆は夢のような展開に戸惑っていた。

『承諾頂けるまで、私たちは帰りません!』

ブリジットは更に頭を下げた。

『お願いします』

『お願いします』

ダブリンとダーヒーがまた頭を下げた。

『しかし、君たちは異世界から来たと言うじゃないか』

隆は煮え切らない。

『そういや、巴と静ってフロストランドの大臣として活動してるんでしたっけー』

隆がなかなか「うん」と言わないので、ブリジットは攻め方を変えてきた。

『あっちの世界に行けば、いつでも遭いにいけるかもしれませんねぇ』

『う…』

隆は少し心が動いたようだった。

『ちょっと待ってくれ、家内に相談してみる』

というような流れで、隆とその妻の頼子が話し合い、2人でエリンへ行くことになった。

と言っても、日本国に話を通さなければならないので、すぐ行ける訳ではないが。



『よっ』

藍子が茶の間でフロストランド関係のニュースを見てると、黒髪の日焼けした女が入ってきた。

『あ!』

藍子の挙動が止まる。

『開いてたから勝手に入ってきたよ』

ブリジットだ。

しかし、藍子の記憶の中より大分老けてしまった感じだ。

記憶の中では20代前後だったが、今そこにいる姿は30代超えという容姿だ。

『あ、藍子さん、久しぶりッス』

『こんちは、お久しぶりです』

ダブリンとダーヒーも入ってくる。

2人とも30代超えのおっさんになっている。


『あの後、こっちに来れなくなってさぁ』

『ああ、そうなの?』

『ゲートが出来たから、やっとこっちに来れたんだよ』

ブリジットは面倒臭げに言った。

『ゲート作るのにヴァルトルーデさんがすげえ頑張ったんだよな』

『ああ、時間かかっちまったなぁ』

ダブリンとダーヒーが補足している。

『へー、あのゲートを通ってきたんだ』

藍子は思わず感心してしまった。

(てか、ヴァル……誰?)

(ん? てことは、あっちの世界では時間がかなり過ぎてしまったってこと?)

そう考えると、皆が老けてしまったのもうなずける。


「ん、なんじゃ、大勢来とるな」

黄太郎が帰ってきた。

また色々と説明して過ごす。

『お、これこれ、納豆』

『味噌汁ナツイ』

『おまえら、すっかり日本食に慣れちまいやがって…』

ダブリン、ダーヒー、ブリジットはいつも通り。

『皆、変わりなくて何よりじゃな』

黄太郎は笑っている。

『これからは、ちょくちょく来れるぞ、ジジイ』

ブリジットもワハハと笑った。

『よろしくな』

『ふん』

『仕方ないね』

黄太郎と藍子は2人とも口を尖らせた。




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エリンの娘 @OGANAO

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