第7話


果たして磁石はできた。

発電機製作の材料は揃った。

スカジと製作所のドヴェルグ達はコイル作りにのめり込んだ。

彼らの技術で作りやすい、運用しやすい、目的を達成しやすい、諸処の条件を満たすものを作る。

「コイルを回すのが難しいから、磁石をクランクに取り付けて回すようにしたよ」

スカジが実物を持ってきて説明した。

蒸気シリンダーとクランクを動力にして、磁石クランクが回転する。

磁石クランクの左右に電線で作ったコイルを配置している。

「発生した電気を確認するのに、もう一台のコイルへつなげてみた」

スカジはそう言ってボイラーを稼働させる。

「モーターだね」

アレクサンドラがうなずく。

しばらく待ってると、蒸気の力でシリンダーが動き出し、磁石クランクが回り始める。

電磁誘導により電気が流れてモーターが回転した。

「やったね!」

「後は電球作りだね!」

「蒸気機関車も欲しいな!」

静たちは勝手な事を言っている。

「おいおい、ちょっとは休ませてくれよ!」

スカジは逃げ腰。


「スネグーラチカ内閣は計画を立てる」

スネグーラチカは宣言した。

内閣総理大臣はスネグーラチカだ。

「じゃが、具体的にどのようにすればいいのじゃ?」

「なんだよ、よく分ってないのかよ」

静が突っ込んだ。

「うるさい、私も初めてのことでよく知らんのじゃ!」

「1年単位で計画を立てて、それに予算を決めてゆくのがいいでしょうね」

マグダレナが言った。

「法務、外務、財務、文部科学、農林水産、厚生労働、経済産業、国土交通、国防、それぞれの局で計画を掲げましょう」

「え、ということは…」

クレアが何かに気付いたようだった。

「ええ、あなた方にそれぞれの部門の計画を出してもらいます」

マグダレナは笑顔で言った。

しかし、目が笑ってない。


「法律を制定したから、法務局はそれを守らせる組織の設立ってとこかな」

パトラは答える。

「法を根拠とした審判、裁判の公平さを保証する、犯罪者の逮捕、刑の執行などなど。やることは一杯あるね」

「うへー、聞いてると怖いのばっかだね」

「それが法ってもんよ」

静が怖じ気づいてるとパトラは気楽に答える。


「外務局はいまんとこ、なにすればいいの?」

巴が言うと、

「あまりやることはないのう、とりあえず今まで通りニョルズを鍛えてくれぬか」

スネグーラチカが済まなそうに言う。

「分った」

巴はうなずいた。


「じゃあ、財務局は税金を徴収っと」

クレアはニンマリしてるが、

「税を銭で徴収するのはムリじゃ、今でも祖として物資を納めたり、役といって仕事をさせておるからのう」

スネグーラチカはたしなめるように言う。

「租庸調かよ」

静が学校の授業で習った事を思い出しながら言った。

「税はゆるいままじゃ、税金は民が豊かになってからじゃ」

スネグーラチカはさっと横へ手を振る。

否定的なサインのようだった。

「うへー、じゃあすることなくね?」

「経済の活性化の手伝いをしてくれぬか」

クレアが聞くと、スネグーラチカはそこでお願いするように答えた。

「あー、はいはい」

クレアはふて腐れ気味でうなずく。


「文部科学局は、学校の設立ですね」

マグダレナは言った。

「うむ、教師を養成せぬとな」

スネグーラチカはうなずいた。

「パックがいいんじゃない?」

静が言ったが、

「うむ、パックが最有力候補なのは確かじゃ」

スネグーラチカは頭を振った。

「だが、パック一人だけでは足りぬ。国内の各地に学校を建ててしっかり教育せねばならぬからな」

「あー、そうだね」

「とにかく教育は大事ですよ」

マグダレナはニコリと笑う。


「農林水産局は?」

ヤンが聞いた。

「農産物、水産物、林業の状況を把握するところから始めたらよいかと思いますよ」

マグダレナがアドバイスする。

「要は増産だよね?」

「うむ」

「じゃあ、畑の収穫、魚の水揚げ、木材を増やす、かな」

「そうじゃな」

ヤンが言うと、スネグーラチカはうなずいた。


「厚生労働局は、やはり医務室の設立ですね」

フローラは言った。

常々言っていることである。

「うむ、医師の養成もな」

スネグーラチカはうなずいた。

「文部科学局と連携を取らないといけませんね」

「パックの治癒魔法でいいんじゃないの?」

静が言ったが、

「もちろんパックさんにも手伝ってもらいます。でもパックさん一人だけではとても手が足りませんよ」

「あー、そうか」

「それに治癒魔法だけでは治せない病気などもありますしね」

「うむ、その通り」

スネグーラチカはうなずいた。


「経済産業局は、産業を活性化させて富国強兵を…!」

「アウトォッ!」

静の話をクレアが遮った。

「富国強兵…よいではないか!」

スネグーラチカはポンと膝を打つ。

このフレーズが気に入ったようだ。

「じゃあ、軍艦マーチでも流すかー」

「おいー!?」

「ふざけてないで、真面目にやれ」

巴がドスの効いた声で言った。

「はいはい、当面は経済活性化の手伝いかな」

「あと、ニョルズの稽古な」

静が言うと、巴は付け加えた。

「あー、そうね」

「そこでテンション落とすなし」

クレアが突っ込んだ。

律儀だ。


「国土交通局は、鉄道による物資運搬の効率化だね」

アレクサンドラは言った。

「鉄道好きなだけじゃん」

クレアがバカにしたように言う。

「それは否定しない、鉄道はロマンなのよ!」

アレクサンドラは誰にはばかることもなく言ってのける。

「これだから鉄ヲタは…」

「あ、でも」

静は横から口を挟んだ。

「今って、ソリで物資運んでるだっけ、これ結構大変だっておっさんが言ってたよね」

「うむ、そうじゃな」

スネグーラチカはうなずく。

「じゃが、おっさんとかいうな」

「ソリが悪いとは思わないけどなー」

クレアは言った。

経営者の目をしている。

「鉄道は雪が多いこの土地じゃあ運用が難しくない?」

「それロシアにケンカ売ってんの?」

アレクサンドラは、横目でクレアを見た。

「除雪車を作ればいいのよ」

「あー、そーかもね」

「でも他国にまでレール敷けないから、結局ソリよね?」

フローラが指摘する。

「それでも、国内の物流には役立つじゃろ」

スネグーラチカは乗り気らしい。


「国防局は、まあ常備軍の設立かな」

ジャンヌは言った。

「今の軍隊って、必要時に一般人を徴兵する方式でしょ?」

「うむ、常備となると金がかかるのでなぁ」

スネグーラチカは苦笑した。

「でも、正規軍の設立は近代国家には必須だよ」

ジャンヌは説明している。

「兵士が秋になると畑が気になって戦に身が入らなくなるってのは、戦争継続能力が低下するのでデメリットが大きいし」

「うむ、そうかもしれんの」

「農耕が盛んじゃないフロストランドでも、畑が全くないってことはないし、専門の兵士は必要だよ」

「それについては、食糧生産が落ちない程度の人数から初めてもらわないといけませんね」

マグダレナが指摘する。

「人数はおいおい増やすということで」

「うん、それは分ってる」

ジャンヌはうなずいた。


「うむ、なかなかどうして、やらぬといかんことは上がってくるのう」

スネグーラチカは満足そうだ。

「今、皆さんが上げた計画は縦軸、ボイラーや発電機など技術及び制度等を横軸として、それぞれの分野で取捨選択して計画を実現し、また目標を達成するように務めてください」

マグダレナは話をまとめた。

内閣官房長官はマグダレナで決まりだ。

「それから、今の話を聞いていて気付いたのですが、建設を担当する部所も必要ですね」

フローラが言う。

「それについては、スカジたちの製作所を介してとりまとめをしてもらう」

スネグーラチカは答えた。

既に考えていたようである。

「ま、我が国には腕の良い大工が揃っておるから問題ないじゃろう」



電気が作れるようになったので、水圧ポンプの改良にのりだした。

シリンダーを使用しているので構造的には同じであるが、電気でモーターを動かしてシリンダー及びクランクへ動力を伝える。

「電気を安定させるにはまだ工夫がいるなぁ」

スカジはポンプを動かしながら言った。

モーターの回転にムラがある。

回転のムラは、つまり電圧のムラだ。

「生の電気をそのまま流してるからねぇ」

アレクサンドラは腕組みしている。

「電圧の具合次第じゃ、ショートしたりするから安定化しないとね」

「っていってもどうすんの?」

クレアが聞いた。

「スイッチを作ってやればいいんだよ。常時電源オンなんて危なっかしいからね」

アレクサンドラは答える。

「ああ、なるほどな。電気機器には電源のオンオフが要るんだね」

スカジは気付いたようである。

「それからコイルを間に挟んでやると電気が安定するよ」

「ふーん、勉強になるなぁ」

スカジはしきりにうなずいている。

「あと今は薪を燃やしてるけど、できれば石炭を使いたいね」

「ああ、フロストランドには炭鉱があるから手に入りやすいよ」

「石炭って煙がすごいんじゃなかった?」

クレアが渋い顔をしている。

「環境汚染になるほど普及してないから大丈夫」

「なんで目をそらしてんの」

「別に」


館のボイラー小屋の水圧ポンプが蒸気式に改造された。

動力が手押し式→蒸気式へレベルアップである。

蒸気式になって自動化したため、使用人の労力が不要になったので、その分マンパワーを他へ回せる。

現在、スカジたち製作所の作業員が入って、発電機を設置している。

「せっかく電気があるんだから、灯りが欲しいよねぇ」

静が言った。

「ついに電球かー」

アレクサンドラは頭を抱える。

「どったの?」

「手作業で電球作るの、超ムズいんだよねぇ」

「へー」

「細かいとかいうレベルじゃないくらい難しいのよね、確か」

マグダレナが思い出すように言った。

「うん、難しいだけならまだいいよ。問題はどうやって真空を作るかだね」

アレクサンドラが唸る。

「いっそのことアーク灯にするとか」

「それってめっさ眩しかったんじゃなかったっけ?」

パトラが突っ込んだ。

「思ったんだけど、今後電気を使ってゆくなら細かい作業が得意な種族を確保した方がいいんじゃない?」

「あー、それね」

静が思いだそうとしていたが、

「…あれ、なんていう種族だっけ?」

「トムテじゃ」

スネグーラチカが言う。

「電子回路まで行くとドヴェルグの職工技術じゃ困難になる可能性があるからね」

パトラは難しい顔をしている。

電子回路になにかトラウマでもあるのだろうか。

「電球の製作の手伝いをしてもらったら?」

「うむ、そうじゃなぁ」

スネグーラチカは渋っていた。

珍しく煮え切らない態度だ。

「なんか面倒な事でも?」

ジャンヌが不思議そうに聞いた。

「細工はドヴェルグたちも自信を持っておってなぁ、トムテにライバル意識を持っとるんじゃよ」

「ふーん、じゃあ揉めちゃうわけだ」

静が言った。

「途中から、トムテの方が腕が良いからトムテに頼むわ、とか言ったら不満をもたれるじゃろ。最悪内戦になりかねん」

「なんか難しいね」

「それが組織ってもんよ」

クレアがしみじみと言った。

「ほんにのう」

スネグーラチカも同じようにしみじみとしている。

経営者、為政者の立場にしか分らない事なのだろうか。

「そうですかねぇ」

パトラは不満そうである。

自分の提案に皆が否定的なので面白くないのだ。

「法律制定の仕事が一段落したんで、空いた時間を使って町へ出て細工物なんかを調べてみたんですよ」

「あ、それ私も一緒に見て回りましたわ」

マグダレナが横から口を挟む。

もちろん護衛として、館の武官の一人に付き添ってもらっている。

「これを見て」

パトラはテーブルに何かを置いた。

細工物だ。

首飾りと髪飾りのようだった。

「首飾りはドヴェルグが作ったもの、髪飾りはトムテが作ったものです」

「うーむ」

スネグーラチカは唸った。

静は近寄って、実際に手に取ってみた。

どちらもよくできてる。

しかし、施されている装飾は髪飾りの方が凝っていて精緻である。

「なるほどね、どっちか選べって言われたら、髪飾りを選ぶね」

静は正直な感想を述べた。

「でしょー?」

パトラはそこでやっと機嫌が良くなったようだった。

「人間関係やコネクションは大事です。でも、客観的な視点も必要ですよ」

「確かに、そうじゃな」

スネグーラチカは迷っている様子だ。

どうやったら角が立たないのか考えているようでもある。

「クレア、こういう時はどうすんの?」

静はあれこれ悩むタイプではない。

なので、単刀直入に聞いてみた。

「うーん、両方とも自信があってウチに任せてくれ! って言ってるなら、入札ってのが適当だけど…」

クレアは答える。

「じゃあ、トムテにそう言わせたらいいんじゃね?」

「はあ?」

「もめ事増やすのかよ」

静の思いつきに、クレアとアレクサンドラが呆れた顔をする。

「いや、その思いつき、悪くないかもしれぬ」

スネグーラチカは言った。

「今の我々の取り組みは、いずれフロストランド全土に知られる。いや、既にある程度は噂になっとるじゃろう。

 変わり者の多いアールヴはともかく、トムテは興味を持つはずじゃ。

 遅かれ早かれ興味を持つなら、今すぐにでも構わんじゃろう」

「ん、なんか違うくね、それ?」

ヤンが首を傾げている。

「政治には時として先手を打つことも必要じゃ」

「そんなもんかねー」

「なーるほど、情報をリークしてやって向こうから横やりを挟ませるってことか」

クレアはうなずいた。

得心がいったのだろうか、先ほどとは180度掌を返している。

「ドヴェルグが怒らないかな?」

巴が心配そうな顔をしている。

「でも、今のままだと電気関係で詰むかもしれないのよ。やれることはやっておくべきよ」

パトラがここぞとばかりに言う。

「うむ、フロストランドの将来のためじゃ。多少の不満は我慢してもらう」

スネグーラチカは言った。

「パックに噂を流させる。というか、あやつらアールヴは噂好きでちょっと話しただけで国中に広めてしまいかねんからのう」

「うわー、なんか別の意味で嫌われそう」

静は苦笑した。



パトラの予想通り、スカジたちは電球の製作にかなり手間取っていた。

電球の部品、バルブ(球体部品)とフレヤー(チューブ状の部品)はガラス細工の職人が作れる。

第一の難関は配線だった。

二本の導線を同じくフレヤーに通してステムという部品にする。

空気を抜くためのガラス排気管を通し、導線にフィラメントを固定する。

フィラメントは銅線を巻いてコイルにしたものを使用。

ステムをバルブへ嵌め込んでゆく。

ここまでの工程で、何度か空気が漏れないよう加熱して各部品をくっつけてゆく。

空気が漏れたら役に立たない。

皆、頑張っていたが、肝心の導線の設置がズレたり、ガラスの加熱による加工で望みと違う変形をしたりであった。

しかも、これをクリアしても電球内の空気を抜くという難関が待っている。

「……」

スカジは無言でテーブルに突っ伏していた。

その周りだけ沈んだオーラが漂っている。

「ま、まあ、あんまり根詰めないでよ」

静はそんな事しか言えなかった。

「ムリだ」

スカジは力なくつぶやいた。

「ダメだこれ、やってもやってもどっか綻んでいく…悪夢だ…」

「う、うん、まあお菓子でも食べよ?」

「そんな気力ない…」

スカジは顔だけ静の方を向いて言った。

「……トムテ」

「え?」

「トムテしか、こんなキ○ガイ作業できねー」

「あー、それって確か靴フェチの種族だっけ?」

「うん」

スカジは突っ伏したままでうなずく。

(変な所で器用だなぁ)

静は思ったが、口にはしない。

「アイツらに助け求めんのは悔しいけど、この取り組み完成させるにはアイツらの力借りねぇとムリ…」

「ふ、ふーん」

静は心配している様子を見せていたが、内心はガッツポーズ。

(やりぃ! なんかする前にスカジさんがメゲたw)

「うわ、どうしたスカジ?」

そこへニョルズがやってきて、驚く。

「あー、ニョルズか」

「シズカ殿、これはどうしたんですか?」

「試作がうまくいってないんだよ」

静は肩をすくめた。

「そうだ、ニョルズさん、手合わせでもしてあげたら? 気晴らしになるかもだし」

「いや、それがしは…」

「ああ、それもいいかもな!」

スカジがガバッと身を起こす。

脳筋だ。

「いや、スカジ、オレは別に…」

ニョルズは言い淀んでいる。

「なんだよ、怖じ気づいたのか?」

「そうじゃない、そうじゃないが、どっちが強いかなんてのは意味が無いと気付いたんだ」

「相変わらず小難しいなぁ」

「だが、腕っ節の強さだけでは語れないだろ、こういう方面の話は」

「…あー、なんかニョルズ、変わった?」

スカジは面食らったような顔で、静を見る。

「んー、まー、ウチの門人だからねぇ」

静はニマニマしていた。

「我が石火神雷流は精神修行にもなるのだ」

「ブドーっていったっけ?」

「でも、面白そうだからやってみれば?」

「はあ、シズカ殿が言うなら」

ニョルズは渋々ながら承諾した。


「ふんっ!」

スカジは攻め込んだ。

が、ニョルズは上手く距離を外してかわしてしまった。

以前は力で対抗しようとして前に出てきていた。

力で向かってくるなら、筋力に秀でているスカジの方に分がある。

それがスカジの動きに合わせるようにして押し引きしている。

まるで、布かなにかを相手にしているようだ。

スカジは内心、焦りを感じていた。

ハンマーを構え直してニョルズの様子を伺う。

ニョルズは手斧と盾を構えたまま、ほとんど動かない。

だが、スカジが動いた途端、敏感に察して体勢が変わるのだ。

(舐めているのか?)

スカジは思ったが、どうやらそういう訳でもないようだ。

前進してこようという闘気が感じられない。

侮っているようでもない。

言うなれば、自然の中にある木々や石のような雰囲気である。

(なんだこれ?)

スカジは徐々に攻めあぐねるようになった。

拮抗したといえる。

そこへニョルズがすっと間を詰めてくる。

「こなくそ!」

スカジは叫んでハンマーを打ち込む。

同時にニョルズも手斧を叩き込んだ。

相打ちである。

「……」

「……相打ちだな」

スカジが黙っていると、ニョルズは言った。

「そうだな」

スカジは、はーっと息を吐いてハンマーを収める。

ニョルズも手斧を腰のベルトへ戻した。

「いつの間にか腕を上げたな」

「トモエ殿とシズカ殿のお陰だ」

ニョルズは少しも誇るところがない。

「でも、腕上げたからってお前と付き合うとかそういう事はないからな…」

スカジは悔しそうに言うが、

「分ってる。今、手合わせしたのは気晴らしを手伝っただけだ」

ニョルズはうなずいた。

「もちろん、オレの気持ちは変わらんが、どっちが上だとかはもういいんだ」

「ふーん、どういう心境の変化かね」

「オレはちゃんとお前の心を掴みたい」

「え?」

スカジは驚いたようだった。

なんだか不意を突かれた感じである。

(なんか変な感じだな…)

スカジはちょっとだけ、自分の気持ちが変化したような気がした。

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