昨日助けていただいたお掃除ロボットですが
ダブルミックス(doublemix)
第1話 昨日助けていただいたお掃除ロボットですが
俺は今年で大学2年生になった。
特にこれと言ったことはなく、何気ない日常を送っている。
新築アパートで独り暮らし。
もちろん彼女もいない。
「今日も大学疲れ……いや、楽だったな」
今日の講義は午前終わり。
バイトも休みなので、午後は家でのんびりしよう。
ガチャと音を立て、家のドアを開ける。
「あ!おかえりなさいませ!ご主人様♪」
「…………は?」
俺の家には、メイド服のような服を着た水色の髪の美女がいた。
***
―時をさかのぼること昨日の夕方―
「おーいらっしゃい」
「どもです」
俺は大学終わりに、近所の良くお世話になっている電気屋に来ていた。
「今日は何を買いに来たんだい?」
この人はこの店の店主のおじいさんだ。
俺が1人暮らしをする前からずっと1人で営業している。
「いや、特に理由があるわけではないんですけど」
今日は何か気になったものがあれば買うという予定で来た。
「お!ならこれ買ってかない?」
こういう客を待っていたのか、店の奥から段ボールを持ってきた。
「これは……?」
「お掃除ロボットだ」
自慢げにそう言った。
お掃除ロボット……よく見る円形のアレか。
自動で掃除してくれるっていう……
「でもこういうのって結構高いですよね」
「特別に5000円でいいよ」
「え!? そんなに安く?!」
「いやいや、この商品余っちゃっててね。もう少しで廃棄になるところだったから」
なるほど。
これなら店側としても、買う側からしても得ということか。
いや待てよ……もし不良品だったら?
いやでも今までもいろいろ助かったし……
「さあ、どうする?」
「……じゃあ」
***
「それで買ったお掃除ロボットが?」
「私です♪」
「そうはならねぇよ」
どうやったら買ったばかりのお掃除ロボットが人間になるんだよ。
動物とかが擬人化とかならまだ分かる……いや分からないけど。
とりあえず状況を整理するため、謎の美女をソファに座らせた。
「……1つずつ聞いていこう」
「まず名前を教えてほしい」
「名前……はないです」
「ないか。じゃあ何か目的とかはあるか?」
「ご主人様に助けてもらった恩を返すことです!」
「助けた?」
「そうです! あと少しで廃棄されそうだった私を買ってくれたじゃありませんか!」
「あーそういうこと」
鶴の恩返しならぬ、お掃除ロボットの恩返しか。
いやどゆこと。
「それで? お礼っていうのは具体的に何するの?」
「えーっと、身の回りの掃除とか、料理とかですかね」
まあメイド服っぽいのも着てるし、家事をする感じか。
「とりあえず間に合っているし、お引き取りいただいて……」
よくよく考えたら頭のおかしい変質者が勝手に家に侵入してきただけかもしれないし、怖いから帰ってもらおう。
「ええええ!! 自分で言うのもなんですけどこんな美女が住み込みで身の回りの家事をすると言ってるんですよ! 彼女いない歴=年齢のご主人様にとっては願ってもないことですよ!?」
「もうちょい言い方あったろ普通に傷つく」
「お願いしますぅ! いきなり人間になったから住む場所もないんですぅ! ご主人様が望むことならなんでもしていいから! お願い捨てないでぇ!」
焦った彼女は泣きだした。
「やめろお前! 俺が悪者みたいになってんじゃねぇか!」
「お願いしますぅぅぅ!!!」
「だー分かった分かった! 住んでいいから!」
「え? 本当に?」
コイツがお掃除ロボットだというのが本当だったら、買っちまった俺に責任があるしな。というかこのままだとずっとうるさいだろうし。
「とりあえず、何か分かるまでここに住んでいいから。もうそんな大声で泣くな。鼓膜が破れる」
「やったー! ご主人様は本当に優しい人ですね!」
「元お掃除ロボットとはいえ、人が住むんだからな。ちゃんとやることはやってもらうぞ」
「もちろんですご主人様!」
「あと俺の名前は
「分かりました! 翔様ですね」
「できれば様もやめてほしいけど、そこはおいおい直していくか」
「では改めまして! これからよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく……えーっと、なんて呼ぼうか」
「翔様に決めてほしいです」
「ん~……メイド服っぽいの着てるし、メイでどうだ?」
「メイ……とっても気に入りました!ありがとうございます!」
「そう? じゃあメイ、これからよろしく」
「はい! よろしくお願いします!」
《キャラ紹介》
・
大学2年生。1人暮らしをしており、かかる費用は親の仕送りとバイトで補っている。彼女はいない。
・メイ
織井翔に買われたお掃除ロボット。なぜか人間になってしまい、翔の家に住み込みでお礼をすることに(主に家事)。翔のことが大好き。水色の髪でメイド服のようなものを着ている。
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