第22話 三河一向一揆(1558〜1559) 修正版
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2024.6.5修正
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「刈谷の水野様より早馬が」
「内容は?」
「中三河で一向一揆が発生、東三河に向かっているとの事」
信行は取次役から手紙を受け取り目を通した。
「関所は既に封鎖済みか…。増援を直ぐに派遣すると伝えてくれ」
「承知致しました」
知らせを受けた信元は即座に関所を封鎖した。
通行を希望する者に対して荷物改めを条件に許可を出していた。
「勝家、利家を伴い刈谷に向かってくれ」
「承知致しました」
「現地では信元の指示に従うように。国境を越えるのは非常時のみだ」
「心得ました」
勝家は席を立つと足早に部屋から出て行った。
「尾張介様、我々は動かないのでしょうか?」
「今は様子見だね。ここで動けば我々が一枚噛んでいる事が知られてしまう」
「確かに」
「今川と松平が餌に食い付いてから準備を始めても遅くはないよ」
戦に詳しくない藤吉郎は一揆勢討伐を名目に三河へ攻め込むと思っていた。
まだその時期ではないと言われて首を傾げた。
「木下殿、三者が潰し合いをして動けなくなった時が好機です」
「悪党のような気がしますが…」
「それを言うなら一揆勢・松平・今川の三者も悪党になりませんか?」
「言われてみればそうですよね」
首を傾げる藤吉郎に光秀は助け船を出した。
一揆勢は国を荒らす悪党、松平は身内同士の争いで国を荒らす悪党、今川は松平から国を奪った悪党である。
「同じ悪党でも荒れた国を立て直す為に奪うのだから民から感謝されても恨まれる事はないよ」
*****
鳴海を拠点に諜報活動を行っている藤林正保が信行を訪ねた。
正保は頭領の百地三太夫に呼ばれて那古野に出向いていた。
「正保が居なくなるのは痛いな」
「御館様の指示で活動範囲を拡げるので人が足りなくなりまして」
信長は上洛を念頭に置いて美濃だけでなく、近江・伊勢・山城にも諜報の拠点を設けたいと三太夫に打診していた。
対応するには正保を異動させる必要がある為、三太夫は詫び状を書いて正保に預けた。
「それは仕方ないよ。何か良い方法は無いかな?」
「甲賀忍か服部党に協力を求めるのが無難でしょう」
「服部党?」
「元々は我々と同じく伊賀を拠点にしていました」
服部党は伊賀出身の忍集団である。
伊賀は土地が狭い上に北畠・六角・仁木の三氏が支配していたので家によっては生活が逼迫していた。
服部家もその中の一つだったので頭領の保長は一族郎党を率いて上洛して将軍足利義晴に仕えた。
しかし幕府が衰退期に入っていた事から進退の判断に迫られた。
その時に出会った松平清康に誘われて仕える事になり、三河に移り拠点を置いた。
「松平清康が暗殺されてからも三河に残って松平に仕えておりますが、今川の支配下になってからは役目を与えられなくなっているようです」
「信用されていないのか?」
「推測になりますが、松平に近い存在だと警戒されていると思われます」
「それなら元康を通じて誤解を解けば済むと思うが…」
「その辺りに問題があるかもしれません」
「服部党を取り込むのは案外簡単かもしれないな。甲賀は六角の影響が強そうだから現状手を組む事は出来ないね」
甲賀忍は伊賀忍を凌ぐ勢力である。
独自路線を貫く者も居るが、大半は六角と繋がりがあるので将来的な事を考えると手を組みにくい相手だった。
「それでは服部党に打診しても宜しいでしょうか?」
「話を進めてくれ。会いたいと言うなら三河に出向いても良いと伝えてくれ」
「お待ち下さい。大給や桃井など松平の分家筋が蜂起するのは時間の問題です。今の時点で三河に行かれるのは危険です」
「それは分かっているけど、この目で三河を見ておく良い機会だと思っている。それに服部党の要求に合わせる方が心証も良いだろう」
「分かりました」
信行の意向を受けた正保は服部党との交渉を行う為に三河へ向かった。
*****
【登場人物】
服部保長
→1500年生まれ、服部党頭領
松平清康(故人)
→1511年生まれ、元岡崎松平家当主
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