第12話 木下藤吉郎(1554) 修正版
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2024.5.23修正
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信長から頼まれていた事をする為に前田利家を呼び寄せた。
「お呼びですか?」
「忙しい時に済まないね」
「訓練は終わりましたよ。丁度暇をしてましたので」
「兄が利家の活躍を聞いてね。母衣衆に加えたいと言ってきたよ」
「御館様が直々に?」
「そうなんだよ」
「出来れば断りたいのですが」
「普通に考えればそうだよね。兄は癖が強いから」
「そういう意味じゃなくて戦場で槍を振るえなくなるのが嫌なんですよ。それに先陣を切れなくなるのも…」
「困るわけだね」
「母衣衆は御館様の護衛役なので名誉ある役目なのは分かりますが」
母衣衆は信長直属の護衛役兼連絡役である。
若手家臣が出世する足掛かりになると噂が流れている事から競争率が高くなっている。
但し戦働きが出来なくなるので利家のような者にとって有難迷惑になる場合もある。
「兄には母衣衆にしないでくれと断っておくよ」
「我儘を言ってすいません」
「構わないよ。だけど那古野には行ってもらいたい」
「何故です?」
「兄は近々蟹江を攻める。人手を出してくれと頼まれているんだよ」
尾張南西部にある蟹江城は土豪の服部友貞が治めており織田家とは協力関係にあった。
信長に代替わり後、津島湊の利益配分で揉めてしまい関係が悪化した。
友貞が荷駄を襲撃するなどの嫌がらせを始めたので信長は討伐命令を出して出陣の準備を始めていた。
「服部友貞という奴も馬鹿な事をするもんですね」
「時流を読めない哀れな男だと思う」
「分かりました。蟹江をサッサと落とせるように手伝ってきます」
「悪いけど頼むよ」
信行から預かった手紙を携えて利家は那古野に向かった。
*****
直虎が懐妊したので鳴海に腰を据えて内政に取り組んでいる信行は内藤勝介を伴って城下の視察を行っていた。
二人は頻繁に出歩いているので城下に住む民からは織田家の侍が暇潰しにほっつき歩いていると見られていた。
「商人で賑わってるね。楽市楽座令は上手く行ってるように見えるけど?」
「反発はありましたが概ね受け入れられております」
「関所廃止令と共に兄上肝煎りの施策だから成功させなければならないよ」
「心得ております。小売人へ嫌がらせをする奴については厳しく取り締まっております」
「その調子で頼むよ」
信長は尾張統一をほぼ達成したのを機に関所廃止と楽市楽座を導入した。
多くの商人を呼び込む事で商取引の活性化を図り、物価の安定と税収を増加させる狙いがあった。
反対する商人も居たが、津島と熱田を味方に付けている信長は強引に進めた。
「止めて下さい!」
「誰の許しを得て商いをしている?」
「織田家の領内は商い自由と聞いている。許可は要らないはずだ」
「鳴海では大店の許しが必要なのだ」
「そんな話、聞いた事がない」
「お前が知らないだけだ」
「それなら役人を呼んでもらいたい」
「馬鹿言うな。ここでは俺たちが役人の代わりなんだよ」
「そんな事、信用出来るか!」
前方で人が集まっており中から言い争う声が聞こえた。
信行が近づくと野武士風体の男数名が小売人の男女に難癖を付けていた。
「あの連中、聞き捨てならない事を言っているね」
「捕らえて口を割らせましょう」
「頼むよ」
勝介が手を上げると周辺の警戒に当たっていた兵士が集まって野武士を取り囲んだ。
野武士は抵抗したものの日頃から鍛えている兵士相手に敵う筈もなく全員捕らえられた。
「怪我は無いかい?」
「助けて頂いてありがとうございます」
「何事もなくて良かったよ」
「私は木下藤吉郎と申します。先程の連中からいきなり難癖を付けられまして」
「君の態度に感心したよ。刀を差している者が相手なら物怖じして及び腰になるのが普通だからね」
「失礼ですが、何処かのお武家様ですか?」
「そう言えば名乗っていなかったね。僕は織田信行という者だ」
「じょ、城主様ですか?」
「正確に言えば城代だけどね」
「城代様にお願いがあります!」
「僕に出来る事なら何なりと」
「家来にして頂きたいのです」
「何か事情がありそうだね。詳しい話は城で聞かせてもらうよ」
信行は藤吉郎と連れの女性を連れて城に戻ったが、連れの女性に見覚えがあったので記憶の糸を手繰っていた。
*****
【登場人物】
木下藤吉郎
→1537年生まれ、尾張の小商い
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