第4話 恋愛観
あれからどうしたかというと。
「斎藤さんは酒井くんと別れたくないみたいだからなかったことにしよう。バイバイ」
そう言って振り向きもせずに自分の席に戻って行った。
しかし、それで終わるわけがない。
「あんた! 一言も謝らずに最───! 」
斎藤さんの言葉は途切れる。
叫びながら振り回そうとした斎藤さんの腕を掴んで続けさせなかった。
「な!? あんたアイツの彼氏でしょ! 二股……」
「黙れよ」
俺の声に斎藤さんは固まった。
「ゆりは自分の悪いところは吐露した。おまえらはなんも悪くねぇのか? 話し合いも出来ねぇなら最初から付き合うな。勝手な憶測で俺らを語るな、虫唾が走る。”幼馴染”だ、覚えておけ。……ヒロ、始末は自分でつけろ。逃げんな」
腕を離し、震える2人と賑やかそうと構えていたクラスメイトを黙らせ、俺は自分の席に戻った。
「ヒュ〜♪ 結局怒ったじゃん」
ニヤニヤしながら斗真が寄りかかってくる。
「あれ以上頭の悪い会話を続行されたら腸煮えくり返りそうだっただけだよ、離れろ」
「ひゃー、学年一位は言うこと違うね」
「あの二人は───ヒロが恋愛感情より恐怖が打ち勝った時点で恋愛は破綻している。斎藤さんがゴネても近いうちに別れるしかないだろ」
生産性のない会話ほど無意味なものは無い。
俺はそんなことより、あっさり終わりを告げたゆりの考えが気になった。
あまりに受動的でありながら、事実何かが引っ掛かっていた。
「たっくんはさ、恋愛したことないのに説得力だけはすごいなぁ」
「褒めてないだろ」
「うん、褒めてない」
変わらない笑顔で言う。
「もし、私がたっくんと付き合いたいって言ったらどうする? 」
「だが断る」
「だよね」
「なんだよ、俺が付き合いたいって言ったらどうするんだよ」
「え、やだ」
「だろ? 」
お互い即答する。
分かりきっていた。
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