異世界地図を作ろう 〜めざせっ!Gooマップ 職業マッパーが挑む異世界踏破!〜

布袋三郎

1章 ダンジョンとマッパー

第1話 プロローグ

‐マッパー‐

主に卓上ゲーム(TRPG)などで迷路のようなダンジョンの様子を紙に記載し次の階層への階段やボス部屋などに迷わず進む地図を作成する役割を持ったプレーヤーの名称。ゲーム内ではボスを倒したとは一瞬でダンジョンを脱出出来てしまうので職業としてマッパーが活躍する事は無いが、冒険やダンジョンが現実の世界ではいなくてはならない存在ではあるが、職業としては存在していなかった。

この物語は、ある異世界人が異世界の色々な場所を仲間達と訪れ、自分だけの地図を作成する物語である。



いったいどの様に作ったのか全く想像もできない程きれいに積まれた石壁に囲まれた20畳ほどの広さで高さ3メートルのルームと呼ばれる部屋に一人の男が椅子に座っている。男は短髪の黒髪、黒目、黄色の肌の20代前半の日本人だ。男の周りには一人用のテント、テーブルが並べられておりここがダンジョンの中では無ければソロキャンプを楽しんでいる様にしか見えなかった。


「あー、暇だ。トラ男の奴いったい何処まで潜っているのやら。約束からもう3日が過ぎたぞ…いい加減飽きた…」

男は自分以外誰もいないルームの中を見回した後、正面の入り口の通路に視線を戻す。男が今いる場所は中規模ダンジョン以上に点在するセーフティルーム一つだ。

セーフティルームは読んで字のごとくダンジョン内において唯一モンスターが侵入も出現もしない安全地帯。


どのような仕組みで、どの様な意図でセーフティルームなどを作るのか、作られるのかは全く解明されていなかったがダンジョン攻略を行う冒険者達にとってダンジョン内で唯一安心して休むことが出来る場所だ。


「これは…下層で何かあったか?今日1日待って戻ってこなかったら全滅…と考えた方が良いかもな」

男は深いため息を付きながら”トラ男”と呼んだ友人冒険者パーティの最悪の事態を思い浮かべる。そして「マップ」と一言呟くと目の前にA3サイズを縦にした画面が現れた。


画面上にはこのダンジョンのマップが表示され、男がいるセーフティールームの場所に男がいる事を示す青い三角柱を逆さにしその上に球を乗せたアイコンが表示されている。男がアイコンに指で触ると表示されたマップが少し小さくなり、もう一つのマップが現れ今度はアイコンを中心に半径100mの状態が表示される。

新しく表れたマップにはダンジョンを表す通路や部屋に無数の赤い〇が表示された。


「うーん、まだこの階層に戻ってこれていないのか?…おっ1、2、…5。この纏まって移動しているのがトラ男(お)達か?あれ?何かに追われている?」


男が5つの赤い〇が移動してくるのを見つけ少し様子を見ていると、その後ろから3つの赤い〇が追いかけているのを見つけた。5つの赤い〇は通路途中の部屋には入らずの角を何度も曲がり、追いかけてくる存在を振り切ろうとしていたが出来ずにいた。


「おいおいおい、そっちは違う。逃げるのに必死で道を間違えたな…しょうがない迎えに行くか」

男は一人呟くと近くに立てかけていた杖を手に取り正面の通路に向かって走り始めた。


5人の冒険者達はダンジョンの通路をひた走っていた、本来ダンジョン内を走るのはモンスター達を呼び寄せてしまうので行わないのが定石だが今は緊急事態でありわき目も降らずただ走っていた。5人共一様に傷つき怪我を負っていない者はだれ一人もいなく、一人は足に怪我を負っているのか両脇を抱えられながら必死に逃げていた。


「もういい、ぼくをここでおいていけ。今のぼくでも数十秒くらいは時間稼ぎが出来る、その間にみんなは逃げるんだ」

両脇を抱えられながら走っている皮鎧を装備した細見の女性がパーティの仲間に言う。


「何を此処まで来ていて今更、ナタリーを置いていくなんて出来るかっ!」


「そうだ、しゃべる暇があったら足を動かせ、ダナンだって頑張ってはしっているんだぞ」


女性を抱えて走っている神官のローと虎の獣人 スクットが弱音を吐くナタリーに檄を飛ばす。


「そうだ、ここでナタリーを置いていけるのであればとっくに置いて行っている。最後まで諦めるな」


重い体でドスドスと大きな音を立てながら走るドワーフのダナンが振り向きもせずに返答をする。その横にはすでにしゃべることもできない程疲労の色の濃いキャシーがいつもは綺麗に整えている長い髪を振り乱して走っていた。


「そうだ、最後まで諦めるんじゃねぇ。セーフティルームまで行けばジョーがいる、そうすれば怪我も治せるしうまい飯と酒も飲める踏ん張れっ!」

スクットが少し変わり者のいつもめんどくさそうに笑うジョーを思い出し口の端に笑を浮かべながら叫ぶ。

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