COSMETIC HUNTER

Tsuyoshi

第1話赤髪の美容ハンター

 街のネオンが満天の星空の如く輝く大都会。テールランプは流れ星のように流れていく。

 高層ビル屋上の天空庭園には、男女のカップル達がベンチに座り身を寄せ合っている。


『人は、至福の時を知ってこそ幸せになれるのだ』


 夜の街並みでは、川の濁流のように行き交う人々が見える。繁華街でこれから一日の疲れを酒で流しに行く者や友人達と親睦を深めようとする者、ただ帰宅途中の者など様々だ。

 そんな人波の中に一際目立つ赤髪の青年がいた。黒尽くめのトレンチコートが似合う、長身で端整な顔立ち。名は神多(かんだ)千寿(せんじゅ)。彼の胸で楕円形のペンダントが、歩みに合わせて揺れている。


『でも、人は恋をすると、何かしらコンプレックスを感じたり、時に臆病になったりもする』


 腹の出た中年男性や化粧の濃い若い女性、頭髪の薄い若い男性達とすれ違いながら、


『それは、容姿や性格、年齢であったり・・・・・・置かれた境遇とか、そんな環境でもあったり。数えるだけ切りがない・・・・・・』


 千寿は暗く人通りのない裏路地へ入って行く。

 街灯にひっそりと照らされた一軒のBAR、『栄國(えいこく)の巣』。古めかしいアンティークな佇まいだが、上品さも漂っている。入口の前で黒いブーツが止まった。


「だから、俺はそんな内気な恋心に立ち止まるんだ」


 左の掌にアメジストのような電流がほとばしる。


「永遠の罪を背負って―――」


 雷を握り潰すように拳を固く締める。



 栄國の巣の扉を開く千寿。カランカラン・・・・・・と静かにベルが鳴る。中に入ると、店内は蛍光ランプでぽつりぽつりと照らされ、薄暗く趣ある空間が広がっていた。


「いらっしゃいませ」


 空席のカウンターで壮年熟期のマスターが無表情でグラスを磨いている。彼の背後の柵には高級酒のボトルがずらりと並び、大人の雰囲気を醸し出していた。


「あちらでお連れ様がお待ちですよ」


 白髪交じりのオールバックに口髭を生やしたマスターが奥のソファー席に手を向ける。

 千寿が店内を歩み静かにソファーに座ると黒の目刺し帽を被った青年が顔を上げた。

 千寿は「はじめまして」と胸元から名刺を出して男に差し出す。男は名刺を受け取り、


「・・・・・・しゅ、出張美容外科医、神多千寿、さん。噂で聞いた通り、本当に若いですね」


 と緊張した面持ちで端整な千寿の顔を見つめた。


「・・・・・・臼木(うすき)さん。私はあなたより年上ですよ?」

「えっ!? ぼ、僕より?」

「そんなに緊張しないで下さい」


 臼木が驚くのも無理はない。千寿の見た目は誰が見ても二十歳(はたち)ぐらいにしか見えないのだ。


「あ、はぁ・・・・・・そ、それで、あの・・・・・・」


 臼木はチラチラと周りを気にしながら帽子に手をかけて本題を切り出す。


「ほ、本当に僕の髪は、生えてくるのでしょうか?」


 帽子を取ると、頭頂部が禿げ上がった薄毛のカッパ頭が覗いた。


「・・・・・・ほう」


 と冷静に臼木の頭部を見つめる千寿。



 時を同じくして人気の無い商店街では、目元を隠す大きなサングラスをかけた少女が飲みかけのチューハイ缶を持ってフラフラとよろめきながら歩いていた。

 サングラスで素顔は見えないが、顔が真っ赤になっている事は窺える。


「あ~、何が都会はダメよぉ。こーんなに面白いとこなのにぃ……ひっく」


 彼女の名前は天満(てんま)千鶴(ちづる)。大人びた身なりをしているが彼女はまだ十八歳だ。

 おぼつかない足取りの千鶴は、フラついた勢いに負けて路地裏の隙間に転び込んだ。


「いったたたぁ・・・・・・んん?」


 こけた拍子にサングラスがずれ、彼女の目に栄國の巣の看板が映った。


「でへへへ・・・・・・」


 千鶴はずれたサングラスをかけ直し、ニタニタとだらしない笑みを浮かべた。



 栄國の巣では、臼木と千寿が話を続けていた。


「僕には三年付き合っている彼女がいます。慶子さんは可愛くて、年下の女性です。僕はこんな老け顔だし、今年で三十路(みそじ)・・・・・・どうしても、彼女と、慶子さんと結婚がしたいんです」


 切実な眼差しを千寿に向ける。


「ええ・・・・・・」


 千寿も真剣な面持ちで静かに頷く。臼木は深刻そうな表情を浮かべ、両手で頭を抱える。


「でも、この頭を見るたびに・・・・・・プロポーズする勇気が出なくって」

「・・・・・・臼木さん。このことを彼女は気にしてるんですか?」


 臼木は首を横に振った。


「彼女は、知らないんです・・・・・・いつも、こうやって会っているから」


 臼木は背後からカツラを取り出して頭に被せてみせる。


「あ・・・・・・‼」


 臼木のビフォーアフターの姿に千寿は目を見開いて口が開いた。


「ずっとコンプレックスだったんです・・・・・・初めてできた彼女で嫌われたくなかった。僕には、こうするしか……」

「・・・・・・臼木さん、確かに現代はカツラ一つでも本物そっくりに精巧なものが有り触れています。でも、偽物はいずれバレるもの―――」


 暗い表情で話す臼木に千寿は真理を伝える。メッキはいつか剥がれる、と。

 その言葉に臼木は深く頭を下げる。


「そうですよね……だから、どんな容姿のコンプレックスも解決できるウデをもつと噂の、神多先生、あなたに頼んでいるんです! お願いします。私を助けて下さい」

「・・・・・・わかりました。私に任せて下さい。それでは、施術プランと料金の方ですが・・・・・・」


 千寿は自身のスマホを取り出し、育毛・増毛専門店のサイトを開き、料金や術後メンテナンスの期間を臼木に見せる。どれも五十万円を超える高額なプランが提示されていた。


「他社ではこのぐらいの費用がかかります。しかし、臼木さんには植毛と術後の永久メンテナンスの保障込みで、私なら三十万でお引き受けできます」

「ほ、本当ですか! ほ、本当にその値段で引き受けてくれるんですか!」


 必死な臼木はパアッと表情を明るくして、千寿に食い気味で前のめりになった。


「施術の前に一つ、私の質問に答えていただけますか? あなたは、この事実を隠し通す事で、本当の至福を得られますか?」


 千寿の核心をついた問い掛けに、臼木はハッとして表情が固まる。

 突然、入り口の扉がバタンと開く。乱暴に開けられた音に、千寿と臼木は入口に注目した。


「おいーっす! 飲んでますかぁ~」


 右手を突き出した千鶴が景気良い声を店内に響き渡らせた。そして、そのままフラフラとした足取りで店内に入って来て、彼女は中を見回す。


「あっれぇ・・・・・・ガーラガラ」


 そこにはマスターと千寿、臼木以外に人は居なかった。

 スン・・・・・・と急に静かになった千鶴はつまらなそうに、店の奥に向かってカウンターの前を歩いていく。そんな少女にマスターが一瞥して、


「お嬢さん、ここは未成年者出入り禁止ですよ」


 と、声を掛ける。千鶴はムッとした表情を浮かべ、カウンターに片肘をついてマスターを睨みつけた。サングラスで見えないが、その目は据わっている。


「はぁ~? これでも立派な二十歳なんだからね。童顔だからってナメんなぁ~」


 千鶴の酒臭い息に眉一つ動かさず、マスターは淡々とグラスを拭き続けていた。


「うんもぉ・・・・・・私、今、すっ、ごーく、レッドな気分なんだからぁ」


 千鶴は頬を膨らませて不貞腐れたような表情で、マスターに絡み続ける。


「レッド?」

「そ、ブルーな気分を通り越して、もう最悪のレッド!」


 ふと彼女の視界にソファーに座っている千寿の赤髪が映る。


「あんな感じに、マッカッカー、のね!」

 

 千鶴が千寿の頭に掴みかかろうとするが、千寿はハッとして咄嗟に千鶴の手を避けた。


「あら?」


 そして千鶴の勢いのついた手が臼木の頭に命中する。

 その拍子にハラリと宙を舞うカツラ。一瞬、時が止まった。

 ファサッ・・・・・・とカツラが千鶴の頭に落ちた時、臼木は我に返って頭を押さえた。


「なぁーーーーっ⁉」

「きゃははははは・・・・・・おじさん、カツラだったんだ」

「な、なんなんだ、キミは!」


 千鶴の態度に臼木が顔を真っ赤にしながら激昂した。

 千鶴はカツラを手に取り、彼の頭にカツラを無造作に乗せて、


「そう怒らないの。誰にだって、隠したい物は一つや二つあるわよぉ・・・・・・ひっく」


 臼木はカツラを整えながらそそくさと身支度を整え、千寿に向き直す。


「先生、こ、この話はまた後日……」

「・・・・・・そうですね」

「え~、何ぃ? 私が相談に乗ってあげるのにぃ。この恋愛スペシャリストの―――」

「結構です!」


 少しも悪びれる様子のない千鶴を睨みつけ、臼木は扉をバタンと閉め店を出て行った。

 千鶴はキョトンとした表情で、


「・・・・・・怒っちった。全く、人がせっかく親切に、ねー」


 と振り返るが、そこに千寿の姿もなかった。



 酔っ払いや客引き達で賑わう繁華街を千寿は一人歩いていた。チラホラ見える『エステ』や『美容形成』、『永久脱毛』の看板。


『人が美を意識するのは、今も昔も変わらない。ただ現代は、美容整形によって造られた美が溢れている・・・・・・果たして、それは正しい美意識の在り方なのだろうか?』


 その時、腹の虫がグゥと鳴り、彼は腹を押さえた。


「ああ・・・・・・腹減った」

「ちょっとぉ、どいてよぉ~。嫌だって言ってるでしょ~!」


 聞き覚えのある声が聞こえてきて、千寿は声のする方に視線を向けた。


「ん?」


 視線の先には千鶴の姿があった。二人のホスト、吉田と池端に囲まれて立ち往生している。


「今夜だけ、ネッ。必ず、至福の時を味わえるからさ」


 吉田は両手を合わせて千鶴に入店を懇願しているようだ。


「ちょ、ちょっとぉ!」

「ほらほら・・・・・・ん?」


 怪訝そうな顔を浮かべる池端とは対照的に、吉田は驚いた顔で口をパクパクさせていた。


「か、神多、千寿・・・・・・」


 池端の背後にいたのは千寿だった。千寿は池端の背後から、彼らに静かに語り掛ける。


「ほう・・・・・・あんた達ホストは、こんなカタチで至福の時を語っているのか」


 千鶴の方も千寿を見て驚いていた。


「あ・・・・・・赤い髪の」


 苛立っていた池端は千寿の手を振り払い、彼を睨みつける。


「何だ、兄ちゃん? あん?」

「池端! やめろ」


 吉田が池端を制する。その表情はどこか強張っていた。


「この子、俺の知り合いなんだ」

「・・・・・・ほえ?」


 千鶴が素っ頓狂な声を出した。そんな千鶴をよそに、千寿はホスト達に目をやる。


「子供だから、あんた達の店はまだ早い」

「そ、そうでしたか・・・・・・ははは」


 吉田が苦笑いする。


「なっ、なにおぉ! 私は子供じゃ・・・・・・!!」


 反発する千鶴の首根っこを千寿が掴んで引っ張り、


「ほら、行くぞ、お嬢ちゃん」

「お、おおっつ……」


 ジタバタと手足をバタつかせる千鶴を脇に抱えて去って行く。

 そんな千寿の後ろ姿に池端は唾をペッと吐き出して睨み付ける。


「けっ、せっかくの金づるが。先輩、なんなんスか、あの男」


 千寿の後ろ姿に固唾を呑んで見つめる吉田。


「神多千寿。美容整形業界でその名前を知らないヤツはいない程の名医・・・・・・ゴッドハンドの持ち主だ。芸能業界から風俗業界、あらゆる美容に関する業界人達、それも上流階級の奴らがあいつの顧客だと噂だ。奴に睨まれるような事なんか俺達下っ端ができるわけねぇ・・・・・・」



 ホスト達の前から去った千寿と千鶴は大きな広場に来ていた。広場には噴水があり、噴水の中央からは時計が伸びている。


「あー、ウザかったぁ…・・・強引すぎだっつーの、あいつら。あ、もう降ろしていーよ」


 千寿の脇に抱えられた千鶴は清々した顔で機嫌よく、千寿に自分を降ろすように言う。

 すると千寿は無言で千鶴を噴水の中へ放り投げた。


「のわっ! 何すんのよぉ! いきなり!」


 千鶴は水中からザバッと顔を出して千寿に怒鳴りつける。

 しかし彼は千鶴を見下ろして冷静に言い放つ。


「俺の前で歳を誤魔化せると思ったか? お前、まだ十八ってとこだろ」

「ギクッ・・・・・・何、言ってるのよ。私は二十歳だって―――」


 図星を突かれ、千鶴は目を泳がせながらまだ誤魔化そうとする。


「成人は十八からになったんだっけ? だが、法律は守った方が良いぞ、お嬢ちゃん」


 千寿はずぶ濡れの千鶴からサングラスを取り外す。

 その際、千鶴の顔を見て千寿は驚愕の表情を浮かべた。


「なっ・・・・・・⁉」

「人の顔見て、そんな顔しないでよね」


 千鶴は口を尖らせたが、千寿にまじまじと顔を見つめられて顔を赤くした。


「な、何よ・・・・・・」

(うわぁ・・・・・・まつ毛なっがい。お人形みたい、この人)

「・・・・・・そのデコのニキビ、いつからだ?」

「えっ!?」


 不意に千寿から突拍子もない事を訊かれ、千鶴は額のニキビを咄嗟に手で押さえて隠す。


「ちょ、ちょっと、見ないでよぉ! 前髪で見えなくしてたのに・・・・・・」


 千寿はそっと彼女の額の手を外して、前髪を掻き分ける。


「額にできるニキビは、おもに思春期に多く第二次性徴によるホルモンバランスの乱れが原因とされるんだ」

「え、何・・・・・・?」


 突然、保健体育の時に聞いた事のあるワードが出てきて千鶴は困惑する。


「ニキビの原因となるアクネ菌は、前髪の毛先やシャンプー剤の洗い残しなどの不衛生さが刺激してさらに増殖して悪化するんだ」


 アクネ菌が額にウジャウジャ増殖するイメージ映像が千鶴の脳内で想像される。


「う、嘘ぉ・・・・・・!!」

「できるなら、こういう時は前髪を短く切った方がいい・・・・・・でも、俺なら―――」


 千寿は掌に念を込めて力を集中させる。すると千寿の掌は淡い紫光に包まれ、彼の掌の光が千鶴の額に触れていく。


「わっ! ・・・・・・あ、温かい」


 光は瞬く間に千鶴の額ニキビを消していった。そして千寿の掌の光もフッと消える。


「うっわぁ・・・・・・びっくりしたぁ。一気に酔いが醒めちゃった・・・・・・い、一体、何したのよ?」


 千鶴は脱力してその場に腰を抜かしてしまった。

 千寿は腹を押さえて満腹感を味わっている。そんな彼の様子に千鶴は首を傾げる。

それから先程光を当てられた額を手で押さえると、千鶴は驚いた顔を浮かべ、焦って鏡を取り出して覗き込んだ。


「うっそー!? キレイすっきりにニキビがなくなってる!」


 千鶴は瞳を輝かせて千寿の両手を持ち、ブンブンと大げさに振りながら、


「マジ感激ぃ~!! 大学受験のストレスででき始めてから、ずっと悩んでたのよぉ。大学には合格できたのにコイツだけはしつこく残ってさ~。ウッキャッキャ…・」


 途中、千鶴はハッと我に返り、


「あ、しまった……」


 慌てて千寿の手を放す。しかし千寿は千鶴を真剣な眼差しで見つめていた。


「・・・・・・奈津美、なのか? お前・・・・・・」

「な・つ・み? 私の名前は、ち・づ・る・よ?」


 首を傾げながら、千鶴は千寿に名前を告げる。


「・・・・・・千鶴?」

「うん」


 困惑する千寿はクルッと踵を返し、千鶴に背を向けて歩き出す。


「都会の夜は危険だぞ。早く帰りな」

「あ・・・・・・って、こんなビショビショな姿でどうやって帰るのよぉ!」


 千寿は一度も振り返らずに、大声で文句を言う千鶴の前から去って行った。


(確かに顔はそっくりだが・・・・・・性格が丸っきり違う、か・・・・・・)

「待って! あなた、お母さんの事を知ってるの!?」

「・・・・・・っ!!」


 千寿は思わず振り返った。


「天満千鶴! 奈津美は、私のお母さんだよ!」


 振り返った先に映る千鶴の笑顔。時計台の針が二十四時を刻む。



 アンティークな本棚や大きな鏡の化粧台。テーブル、ソファー、ベッドと、広々とした室内は洋風に装飾されている。ここは千寿の自室のようだ。

 千寿はソファーに深く座り、瞳を閉じて思いに耽(ふけ)っていた。

 浴室の方からは千鶴の鼻歌とシャワーの音が聞こえている。


「・・・・・・ふん」


 いつしか水の音は止み、パタパタとスリッパの音がこちらへ近づいていた。


「あー、サッパリした。お洒落なんだね~なんか貴族の部屋みたい!」


 ガウンを着た千鶴がサッパリした表情で現れた。タオルを被り、濡れ髪を拭いている千鶴を千寿が見上げる。


「どうして家出したんだ?」

「その話? 田舎にある地元の大学なんかより、都会の大学に行きたいって、ママに言ったのに反対されたからよ。でも、私の人生は私が決めるもんでしょ。だから必死に勉強して、都会の大学を受けて合格した。合格してしまえばこっちのもんよ。学費や生活費だってこの街でアルバイトでも何でもして稼いでやるわ。それだけよ」


 ツンとした態度で千鶴がぶっきらぼうに答えた。


「社会はそんなに甘くないぞ? まだ学生のうちは両親を説得させた方が良い」

「はぁ? ママは私の事、何も分かってないんだから。それに私、パパいないし・・・・・・」

「いない?」

「そ、私が小さい頃に亡くなったんだって……だから、私は全然知らない」


 鏡を覗き込む千鶴。そこには綺麗になった額の自分の顔が映る。


「ま、それより、あなたとママの関係、少し気になるし―――」


 額を見て笑顔になった千鶴は、鏡の中で目が合った千寿を見つめた。


「神多、千寿せんせい?」

「・・・・・・・・・・・・」


 千寿は千鶴から視線を逸らす。彼女が彼の視線を追うと、本棚にズラリと並ぶ分厚い医学書や古い書物に目が止まった。


「あっ、凄い・・・・・・これ、全部、医学書?」


 そう言って千鶴は書物に手を伸ばそうとするが、


「それに触るな!」


 千寿の鬼気迫る怒号に驚き、手を止めた。ドキドキしながら不貞腐れた表情で振り返る。


「な、何よ・・・・・・? そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない」

「そいつは医学書じゃない。そいつは・・・・・・」

「なんなのよ?」


 焦る様子を見透かされないように、千寿は冷静を装い言い直す。


「・・・・・・というより、中身は全て真っ白さ。見る価値もない駄本だ」

「ふーん・・・・・・あっ!」


 ズラリと並ぶ本を見つめていると、書物の中に『脂肪燃焼術』と書かれたラベルを目にし、千鶴は目を輝かせた。


「これなんか凄い興味ある!」


 彼女は腹周りの肉を摘まみ苦笑う。


「私、このへんがちょーっと、気になるのよね。プニプニ・・・・・・」

「触・る・な」


 千寿は苛立った様子で、再度彼女に釘を差し、南京錠と鎖で本棚をガチガチに封鎖する。


「ぶう・・・・・・そこまでしなくても。どこから持って来たのよ、それ」


 むくれた千鶴は諦めて本棚から離れ、


「分かったわよ、私、もう寝るから。ベッド貸してちょうらいな」


 わざと舌足らずに話した。


「適当に使え・・・・・・」

「はーい、適当に使わせてもらいまぁす」

 

 千鶴は鼻歌鳴らしながらベッドへ飛び込む。それからすぐにいびきをかき始めた。


(奈津美に似合わず厚かましい子だ・・・・・・)


 千寿は「ふう・・・・・・」と溜め息を吐いた。



『真っ白でぼやけた空間に黒髪の千寿が立っていた。誰かと話しているようだ。


「南アジアの古代遺跡で古い医学書が見つかったらしいんだ。その医学書の中には、どんな病も治す不思議な力を宿したものがあるらしい」


 千寿は振り返り、微笑む。


「必ず戻って来るよ・・・・・・奈津美―――」


 胸元のペンダントのフタを開けると中には奈津美の写真が。

 古代遺跡の深部の祭壇。その上に千手観音像が神々しく輝いていた。

 そこに千寿と医学研究員、考古学者達が古い医学書を山積みにした台車を引いて現れる。

 千寿は千手観音像の懐に備えられている千美禁書を見上げた。

 神々しい千手観音像に惹き寄せられる瞳・・・・・・気が付けば千寿は千美禁書に手を伸ばしていた。彼の瞳が欲望で混沌と、濁った色に染まり始める。

 千美禁書を掴んだ千寿は書を開く。書物はページをパラパラと捲られて―――。

 突如、眩い閃光を放ち出す。千寿は思わず顔を背け、光から庇うように手を顔の前にかざす。


「なっ・・・・・・!!」


 放たれた光は灼熱の炎と化して、千寿を一瞬で包み込んだ。


「ぐわぁーーーーーーーーーーーっ!!」


 神罰の業火が千寿を焼き尽くす。みるみるうちに真っ赤に染まっていく千寿の黒髪―――。』



 日差しが千寿の顔を照らしていた。いつの間にか朝になっていたようだった。

千寿は薄っすらと瞼を開き、左手を顔にかざして見つめる。


(あの日から、俺の人生は狂った・・・・・・俺はもう、人間じゃなくなっていたんだ)  


 夢により思い起こされた千寿の過去。瞼を閉じた彼は真っ暗な空間の中で、


(愛する人と同じ時を歩む事は許されず、生きる糧を患者の毒素で満たさなければならない身体なんて・・・・・・こんな身体で恋人の元へ帰れるはずがなかった・・・・・・)


 絶望が千寿の心に広がる。ふいにベッドで寝息を立てている千鶴に視線を移す。


「・・・・・・全く、どういう神経してるんだ」


 彼女は無防備に大の字になっていた。千寿は呆れつつ身支度を始めた。


「さて、と・・・・・・」


 玄関のドアに千寿が手をかけようとしていた時、


「ねぇ~、朝ごはん、食べないのぉ・・・・・・?」


 欠伸まじりの千鶴が起きてきて千寿に声を掛ける。

 千寿が振り向くと、ボサボサ頭を掻き毟(むし)る千鶴が眠そうに立っていた。


「見たところ、冷蔵庫もなんも、食べ物すらないみたいだし。いつも外食? 身体に悪いよ~」

「・・・・・・このドア、オートロックだから。好きな時に出て行来な」


 千寿は千鶴の言葉を無視し、ドアを開ける。


「あっ! 無視するなぁ~」


 とぼやくが、パタンと閉まる扉。ぶぅーと頬を膨らませる千鶴。



 地下街にある喫茶店に千寿は訪れていた。店内にはバスケットに焼き菓子やパンの数々が棚にずらりと並んでいる。窓側の席はどれも客で飽和していた。

 奥の席に千寿とカツラを被った臼木の姿があった。そこでは千寿が髪の断面図が描かれたタブレットの画像を開き、臼木に見せていた。髪の断面図は内側からメデュラ、コルテックス、キューティクルと記されている。

 千寿は断面図のコルテックス部位を指す。


「ここはコルテックスといった、髪の色や太さ、強さを決定づける毛皮質です」

「は、はい・・・・・・」

「ここが健康になることによって、今生えている髪や新しく生えてくる髪一本一本が太く、コシが強くなり薄さを目立たなくします。まずは、頭皮の健康からです」

「じゃあ、それですぐに僕の髪は・・・・・・」

「それより、臼木さん。昨夜の質問は考えて頂けましたか?」


 彼は唐突に臼木に昨夜の話の続きを切り出す。


「え?」

「本当に、彼女に打ち明けないままでいいのですか?」


 臼木は俯いて唇を噛み締める。彼は自身の膝を強く掴む。


「・・・・・・はい。慶子さんには、知られたくないんです。だって、もし知られたら・・・・・・」

「そう、ですか」


 千寿は臼木から視線を逸らした。

 一方、千鶴も地下街に来ていた。お洒落な靴屋や洋服店がきらびやかに建ち並び、千鶴は瞳をキラキラと輝かせながら辺りをキョロキョロと見回していた。


「うっひょ~、どこもオッシャレ~。・・・・・・んん?」


 喫茶店のウィンドに千寿と臼木の姿が見え、千鶴はにんまりとした笑顔を浮かべた。


「えへ・・・・・・赤い髪、見~つけた」


 再び喫茶店内にて。臼木は懐から小さな箱を取り出て開ける。

 中にはダイヤの指輪が覗かせ、眩くキラキラと光を反射していた。


「彼女への婚約指輪です・・・・・・これを見るたびに気持ちが焦ってしまうんです」


 千寿はダイヤの指輪を見つめて呟く。


「宝石はその輝きが美しい程、人の心を惑わせてしまう・・・・・・」

「ひぃっ!」

「ん? ・・・・・・うっ」


 突然の臼木の引き攣(つ)った悲鳴に釣られ、彼の視線の先の窓に千寿も視線を向ける。そこにはガラスにべったりと張り付いて、夢中で指輪を見つめている千鶴の姿があった。


「きょお~~~、その指輪、超ヤバくなぁい!?」

「・・・・・・あ、あんな風に、ですか?」


 千鶴に指を差す臼木と、千鶴の様子に頭を抱える千寿。

 それから千鶴は二人と相席になり、注文したエビカツサンドを手にして大きな口を開けてそれを無邪気に頬張った。


「ん~~~、うみゃい!」


 千寿は頬杖をついて、千鶴に呆れ顔で見つめている。

 臼木はまたカツラを落とされないように、頭を押さえて千鶴を警戒していた。

 そんなマイペースな千鶴はエビカツサンドを咀嚼(そしゃく)しながら臼木に話し掛ける。


「んで、おじさんは彼女にプロポーズして、人生の特大ホームランを打ちたいってわけね?」

「お、お嬢ちゃん。特大ホームランって。そ、それに僕はまだおじさんって歳じゃ・・・・・・」

(こいつ・・・・・・どこまで首突っ込む気だ)


 そんな呆れ顔の千寿をよそに、千鶴はツルツルの額を臼木に見せびらかした。


「見てみて~、私のおデコちゃん。先生に一瞬でキレイさっぱり治してもらったんだよ~。だから、おじさんの髪の毛も一瞬よぉ~」

「い、一瞬で・・・・・・?」


 臼木は眉をひそめて千寿を見る。


「・・・・・・まだ酔ってるんですよ、この子は」

「でもぉ、おじさん。私は、おじさんのやり方には反対かな」


 千鶴の言葉に、千寿と臼木が彼女を見つめる。千鶴は人差し指を口元に添えて続けた。


「だって、もしプロポーズが成功しても、おじさん、ずーっと隠し事背負って・・・・・・彼女と向き合っていくんだよ?」

「・・・・・・!?」


 臼木はハッとした。自分よりずっと年下の少女に大切な事に気付かされるとは。


「誰だって、隠し事されるのは嫌だと思うんだけどなぁ・・・・・・」


 千寿と臼木は黙ったまま千鶴を見つめていた。



 喫茶店をトボトボと後にする臼木の背中を見つめ、


「ねぇ、どうして、あのおじさんにはすぐに『あのチカラ』を使わないの?」


 千鶴は隣にいる千寿の顔を見上げる。


「・・・・・・さあな」


 千鶴に視線を向けることなく、千寿は臼木の背中を眺めながら彼女の問いに答える。


「ふーん・・・・・・じゃあさ、私のはニキビ撃退を切に願う思いが届いたわけだ!」

「調子に乗るな」

「素直に私が可愛かったからって、白状すればいいのにぃ~もう。あ!」


 何を思いついたのか、千鶴は呆れる千寿の前に立ち塞がるようにバッと立って構えた。


「でもさ! 恋を実らせるには時間制限があるんだよ? お互いの想いが強い時に勝負を賭けなきゃ!」

「勝負?」

「この際、仕方ないじゃん。知らない方が幸せだって事もあるんだし!」


 首を傾げる千寿にクルっとと背を向けて走り出す千鶴。

 唖然と彼女の背を見つめる千寿は嫌な予感がしていた。


「お、おい! ・・・・・・あいつ、まさか!」


 溜め息をつきながら俯いて歩く臼木。


「おっじさ~~~ん!」


 背後から聞こえる声に振り返る。そこには手を振りながら走って来る千鶴がいた。彼女は人込みをスイスイと縫うように走り抜けて臼木の前に辿り着く。


「いつまでも、悩んでたらダメだよぉ! 男なら、潔く告白しなきゃ!」

「い、潔く告白する?」


 困惑する臼木の手を千鶴が掴む。


「ほらぁ、互いの想いは足を止めた分だけ遠くへ行っちゃうんだから。愛は飛び掴むものだよ!」

「と、飛び掴むって……愛はそんなものじゃ……て、お、おーい!」


 千鶴は臼木の手を引っ張り、地下街を走り抜けて行く。



 地下街にある雑貨店の一つ。棚に並ぶアクセサリーや香水、タヌキやカッパの可愛いぬいぐるみが沢山立ち並んでいる。店内は若い女性達が溢れていた。

 レジの前で客に商品を入れた袋を笑顔で手渡す、物腰柔らかく大人しげな女性店員がいた。彼女は加藤慶子。臼木の意中の人だ。


「ありがとうございました」


 商品を受け取った客にお辞儀をしていると、彼女の耳にドタバタと騒がしい足音が聞こえ、


「え? ・・・・・・と、友則さん・・・・・・!?」


 慶子が足音のする方に目を向けると、臼木が息を切らして入り口前に立っていた。


「け、慶子さん・・・・・・」

「ほらっ、しっかり!」

「で、でも、こんなところで」


 千鶴に背中を押されるも、臼木は恥ずかしそうに千鶴の方を見る。


「なーに言ってるのよ! もう、おじさん、本当に男なの!?」

「えっ・・・・・・それは、もちろんだとも」


 千鶴と臼木のやり取りしているところに、千寿がやっと追いついた。


「あいつ、ムチャクチャしやがって」


 千寿、千鶴、それに店内の客が見つめる中、臼木は慶子を前にしてガチガチに緊張していた。


「け、慶子さん! ぼ、僕は・・・・・・そ、その・・・・・・」

「・・・・・・友則さん?」


 緊張する臼木に対して、慶子はキョトンとした表情だったが、なんとなく彼から伝わる緊張感で、徐々に自身も緊張していく。そんな彼の様子を見て、頭を抱える千鶴。


(あっちゃあ・・・・・・ガッチガチに緊張しちゃってるわ。ほらぁ、しっかりしなさいよ、今はフサフサ頭でしょ!)


 臼木は固唾をゴクリと呑む。深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「・・・・・・すみません、突然に。じ、実は、僕は慶子さんにずっと話したかった事があるんです」

「話したい、事?」

(そう、慎重に。そこで指輪を・・・・・・)


 臼木は両手をそっとカツラに添え、ソレを取り外して見せる。


「えっ……!!」


 千鶴と慶子が衝撃を受ける。周囲もザワザワとどよめき始めた。


(えぇ~!! おじさぁん、そっちじゃないよぉー!!)


 臼木は慶子に禿(は)げ上がった頭頂部を見せるように頭を下げた。


「ごめんなさい! 僕は、あなたに嫌われたくないあまりに、本当の自分を隠し続けて、ずっと偽って来たんです」


 慶子は口元を手で隠し、黙ったまま彼の頭頂部を見つめ続けている。そして頭を下げ続ける臼木に、慶子が口を開いた。


「ごめんなさい、友則さん。私・・・・・・」


 慶子の謝罪に、空気を察した臼木の目には涙が滲み始めた。


「う、うう・・・・・・」


 千鶴はバツが悪そうに身体をソワソワとさせて臼木に声をかけようとする。


「え、えっとぉ、おじさん? あっ・・・・・・」


 その時、慶子が臼木の肩を持って、頭を上げるように彼を起こす。オドオドと震える臼木。


「顔を上げて、友則さん」

「・・・・・・け、慶子さん?」


 慶子は臼木の手を両手で優しく包み、困惑する臼木に本心を伝える。


「好きになった人が、たまたまカッパ頭だったって、だけじゃない・・・・・・」


 温かく微笑む。彼女の言葉に臼木の目から大粒の涙が溢れ、零れ落ちる。


「う、ううっ・・・・・・慶子さん」


 互いに手を包み合う臼木と慶子。二人を見守っていた店内の客達から祝福の拍手が沸いた。


「へぐっ・・・・・・良かったねぇ、おじさん」


 千鶴はもらい泣きをして、服の袖で涙を拭う。そんな千鶴を尻目に、千寿は無言のまま背を向けてその場を去って行った。



 千寿は自宅に戻っていた。性懲りもなくついてきた千鶴が両手を上に背を伸ばす。


「ふぁ~、一時はどうなるかと思ったわ。ま、チャンスを掴むには隠し事をせず正直になるのが一番ね! 良かった、良かった」


 終わり良ければ全て良しと言わんばかりに安堵する千鶴の後ろで、千寿は不機嫌な表情を浮かべていた。


「何が良かった、だ・・・・・・てか、お前の帰る場所はっ!」

「好きな時に出て行けって言ったじゃん。ま、これからもあの二人は上手くいくって」


 あっけらかんと答える千鶴に、千寿はやれやれといった様子で首を振る。


「第一、もう私には関係ないもーん。それに、私には都会あーんど大学デビュー前にまだやる事が残ってるんだから」


 そう言って千鶴は千寿に脂肪燃焼術の本を背中越しに見せる。


「お前、その本!」


 驚いた千寿は本棚を見るが、南京錠と鎖が見事に外されていた。


「ケヘ、この本でスーパーモデル並みのスタイルを手に入れちゃうんだから。白紙なんて嘘、きっと、すんごい効果的で楽チン魔法が書いてあるんだわ」


 頭にピースサインをかざしてポーズする千鶴に、


「やめろ! それを開くな!」


 千寿は慌てて手を伸ばす。千鶴は澄ました顔で、千寿にクルっと背を向けて本を開く。


「自分だけそんな魔法みたいな力持っててズルいのよねー。独り占めは良くないわぁ・・・・・・ほいっとぉ。あ、本当に真っ白・・・・・・ん!?」


 突如、本が光を放った。何の前触れもなしに放たれた強い光に千鶴は思わす目を閉じる。


「う、うわぁっ!!」


 千鶴は眩い光に包まれた。それと同時にボンッと煙が辺りに広がり千寿も堪らず瞼を瞑る。


「くっ・・・・・・」


 千寿が薄く目を開ける。徐々に煙が晴れていく。薄れる煙から覗く太い手足、ぬいぐるみと見紛うような大きな頭に、はち切れんばかりに肉が詰まり飛び出る腹。

 千寿はギョッとした眼差しで千鶴を見つめる。


「・・・・・・うぐっ」

「・・・・・・ぽへ?」


 そこには三頭身のまん丸に太った千鶴が振り返り、千寿の驚く顔を見つめていた。彼女は千寿の視線を追って、自身の腹を見る。風船のような腹をプニプニ摘まみ、


「あ、あたしのくびれ・・・・・・て、ええーーー!! なんなのよ、これはぁ!」


 同時に鏡に映った自分の姿を見て愕然とする。


「ちょ、ちょっとぉ~、どうなってんのよ! コレ・・・・・・」

「そいつは自らが肥満体となって、脂肪燃焼方法を『身をもって』研究するための本だ・・・・・・だから、白紙なんだ」

「そんなの聞いてないわよぉ! あ、ほらぁ、先生の力でパアッと・・・・・・」


 千鶴は千寿にしがみ付いて、自分の体をどうにかしてくれと涙目で縋(すが)る。


「本の呪いを喰らった人間には無理だ」

「そ、そんなぁ~」


 千鶴はショックのあまりゴロンと転がり、そのままダウンした。


「こんな姿でどうやって大学通えばいいのよ~‼ 入学式は⁉ 学生証だってまだ作ってないのにぃ~。こんな姿で証明写真撮れっていうのぉ~~~!!」

「大学側も、これじゃあ本人と見分けるのも難しいかもな・・・・・・」

「んもぉ~~~~~~、ありえなーい!!」


 やれやれと溜め息をつく千寿の足元で、肉マン顔を両手でサンドして絶叫する千鶴であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

COSMETIC HUNTER Tsuyoshi @Tsuyoshi-k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ